インタビューが終わり、フォトシューティングの時間だ。私は彼に髪型や服装のチェックしてもらった後、部屋の電気を消した。部屋は暗く、ハロゲンランプの黄色い光源一灯のみになった。カシャ、カシャ…私は彼を丁寧に撮り始めた。彼は撮られることに慣れているようだった。しかし私は気づいた。それは表向きに見せている彼だった。私は彼をゆっくりと解くようにシャッターを押した。カシャ、カシャ…私は自分がどんな指示や質問をしたのかは記憶にない…。彼の琴線に何が触れたのかは分からない。ただ、彼の目から一筋の涙が静かに流れた。とても美しい涙であった…。インタビュー中、彼は自分の半生を関西出身者らしくユーモアを交えて語った。野球しか知らなかった少年が描くサクセスストーリーは聞いていてとても痛快だった。私もカメラを抱えながら、彼の語る物語に関心し、そして声を出して笑った。だが、彼の話を聞いていると常に前を向き、目的に向かってとことんコミットする生き方は、誰にでもできるものではない。言うのは簡単だが、それができれば苦労しないだろうと私は思った。彼が特別な人間で、私が彼のようなサクセスストーリーを描くのは到底不可能な話しだと思った。部屋の隅でフォトシューティングの準備をしながら私が小さなため息をつくと彼は言った「一番大事なことは、人から愛されること、どんなに優れていても愛されていないと大きい仕事はできない」「そして目的を持って気持ちを強く持つこと」ひねくれていた私に彼の言葉は力強く届いた…。彼は黄色い灯りに照らされながら、少し恥ずかしそうに、涙を拭き、気を取り直してカメラのレンズを真っ直ぐ覗いた。それは少年のように透き通った瞳だった…さらに私は瞳を覗く…そこには彼の口から語られなかった物語があった。私は彼の一筋の涙が一本の川となりたくさん川が流れ込む大きな海へと繋がるイメージを持った。撮影後、彼と交わした握手はとても力強く熱いものだった。今度は私が涙しそうになった。