私は彼の目を見据えながら言った。「実は半田さんの出演していたTV番組を観たことがありません。そして半田さんのことをインターネットで一度も検索もしませんでした…」彼は一瞬、驚いた表情をしたが、すぐさま、クシャッとしたとてもチャーミングな笑顔を浮かべた。続けて私は言った「これから撮る写真は半田さんの人生の中で記憶にも記録にも残る写真を撮ります…」彼は「お願いします。」と一言だけ言った。そしてほんの少しだけ興奮した様子だった。彼自身を表すことのできる場所で撮りたいという私の要望に対して彼は事務所を大きくするためにこれから改築する場所へと連れていってくれた。その場所はまだ解体した直後で廃材が乱雑に積み上げられていた「普段は絶対に人にみせるような場所じゃないんですけどね…」彼は誰に言うともなく言った…。後日の話になるが、私は彼をインターネットで検索した。彼は”ミスターパーフェクト”と呼ばれているようだった。家柄もよく上品、頭脳明晰で芸術的感性にも優れている。ルックスもいい。それだけではない。彼は常に友達や仲間のことを一番に考え、周りからも慕われている。確かに”パーフェクト”だ。私はそんな彼に似つかわしくない乱雑な空間で撮影を始めた。彼は思ったよりも写真を撮られることに慣れてないようだった。この空間に立っていると彼はとてもナイーブに見えた。少し不安げにレンズを覗く彼の目は”パーフェクト”でもなんでもなかった。何度も何度も挫折を繰り返し、その度に自分と向き合いながら常に成長を目指す戦う人間の目だった。この解体されたばかりの空間のように未完成な人間なのだ。彼の周りを一番に考え、友達や仲間のために動く面、孤独に向き合いながらストイックに自分自身を掘り下げる面、もしかするとTV番組や巷で呼ばれている”半さん”が前者、後者が”半田悠人”なのかもしれない。この先、多くの人を包み込むような素晴らしい空間を彼が設計することをイメージするのは容易だった。この写真はふたつの顔を持つ”今”の彼を記録した写真になったと思う