ポートレートコラム
黄皓
Photo/Write : Tetsuya Hara
撮りたい写真が撮れた。完璧だ。私は彼の屈託のないこの笑顔を撮りたかったのだ。この写真はインタビューとフォトシューティングが終了し、スタッフと談笑していた時にシャッターを切ったものだ。私はこのタイミングだけに集中していた…。彼の事を知っている人は多いと思う。彼は婚活サバイバル番組「バチェロレッテ・ジャパン」に参加し、“イケメン”としてだけでなく、自信満々な立ち振る舞いでも注目され、中国と日本に複数の会社をもつ経営者だ。誰もが羨むような完璧な男だ。憧れる人も多いだろう。しかし、私には彼が危うく、不完全に見えた。彼自身も言っていたが、「常に自分がどう見えているか」を意識していた。完璧な自分に囚われていた。フォトシューティンの時も自分がどう撮られているか理解しているようだった。隙がなかった。そんな彼に私は「五年後の自分をイメージしてください」と指示を出した。未来の自分のイメージを描いてもらい、そのイメージと同化したところを撮影する、私の独自のスタイルだ。彼は一呼吸置いて彼は言った「五年後の自分は全く思い浮かばない」彼は続けた「先の事をイメージしない。今、あることの積み重ねだけを考えている」私は指示を変えた。「何年後かはわかりません、人の目を気にしない、心が開放された自分をイメージしてください。」彼は迷わず「白いYシャツを着て、短パンを履いてヨットを操縦している」笑いながら言った。続けて「自信に満ち溢れて自由に生きている」力強く言った。彼は子供の頃から現在に至るまで、感じた苦しみや、悲しみ。憤りから逃げなかった。そのひとつひとつとしっかりと向き合い、常に自分自身を超えていった。「大丈夫だよ。ここに来れるから」未来をイメージしない彼は、今、本来の自分に辿り着いたのだ。とても清々しい表情で彼はレンズを覗いた。撮影も終わり、彼はリラックスしていた。私は彼に言った「”イケメン”すぎて。最高でした!」彼は「そんな事ないですよ」と大きく口を開いて笑った。その笑顔は、本当に”イケメン”だった。カシャ。私も大きく笑った。