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医師が伝える「エビデンスでわかる共同養育」 単独親権と親子断絶の国・ニッポンで見えた家族の現実

連れ去られ夫

Photo/Write 大川 賢太郎

親が別れても、子どもは「片方の親」を失わなくていい 「別れても、親であることは終わらない」──その当たり前を、今の日本に伝えたい 「ある日、わが子が突然目の前から消えた・・・。」 まるでサスペンスドラマの冒頭のような、にわかには信じがたいこの出来事が、ある日、私に降りかかります・・・。 はじめまして、著者の連れ去られ夫と申します。 現在、医師として病院に勤務しており、また同時に”共同親権の重要性を訴える活動家”でもあります。 私は男性でありますが、元パートナーである妻から、過去に日常的にDV(家庭内暴力)を度々受けていました。 心身ともに限界を迎え、ついには離婚を決意。 しかし、その話し合いの最中、妻は私に何も告げることなく、突然、我が子を連れて家を出ていったのです。 いわゆる子どもの「連れ去り」です。 それ以来、私は我が子に一度も会うことができていません。 家庭裁判所に訴えても、なぜか私に不利な状況が作られており、裁判後、警察に行っても無駄でした。 日本は今、法務省の調査(※)でも、離婚後に「まったく会えていない」あるいは「年に数回しか会えていない」子どもが、実に15万人にものぼると推計されています。 毎年、これだけの数の子どもたちが、大好きだったはずのパパやママのどちらかと、事実上「死別」しているのと同じ状況に追いやられているのです。 (※出典:法務省「父母の離婚後の子の養育の状況に係る実態調査」) なぜこうも簡単に、当たり前に、親子の絆が引き裂かれてしまうのでしょうか? 実は、現在の日本の法律が、離婚後は父母のどちらか一方しか子どもの親権を持てない「単独親権」を原則としている、世界でも非常に稀な国だからです。 そして、この制度の下では、「離婚時に先に子どもを連れて家を出た親」が親権争いで圧倒的に有利になるという、「連れ去った者勝ち」の運用がまかり通ってしまっているのです。 親同士が憎み合い、子を奪い合う。 その果てに待っているのは、疲弊した親と、人生の最も大切な時期に片方の親から引き離された、心に深い傷を負った子どもたちです。 この本は、単なる私の体験談や、特定の誰かを糾弾するための本ではありません。 2026年にも施行される民法改正を前に、「共同親権」の導入が大きな議論となっています。 しかし、メディアで語られる議論の多くは、「DV加害者から逃げられない」といった感情論や、「親の権利」の奪い合いばかり。 しかし、本当にそれだけでいいのでしょうか? 議論の真ん中にいるべき「子ども」の視点が、すっぽりと抜け落ちてはいないでしょうか? 私はこの本を執筆するにあたり、個人の体験や感情はいったん脇に置き、国内外の膨大な数の学術論文や公的な統計データを徹底的に読み込みました。 そこには、私たちが知らされてこなかった驚くべき事実が溢れていました。 例えば、こんなエビデンスがあります。 ──────────────────────────── 「共同親権を導入すると、DV加害者から逃げられなくなる」という主張があります。 しかし、スペインで「共同親権(父母の均等養育)」を原則とする法改正が行われた州では、その後の親密なパートナー間の暴力(IPV)が、法改正のなかった州と比較して約45%も激減したという研究報告があります。 (出典:F. Fernández-Kranz & M. Halla, 2021 “Bargaining under Threats: The Effect of Joint Custody Laws on Intimate Partner Violence”) ──────────────────────────── これは、父親が「離婚=子どもを失う」という絶望から暴力に訴えるインセンティブ(動機)がなくなり、むしろ「非暴力的であること」が共同親権を得るための条件となった結果だと分析されています。 共同親権が暴力を「助長する」のではなく、「抑止する」という、日本の議論とはまったく逆の結果が出ているのです。 本書では、こうした客観的なエビデンスをできるだけ分かりやすく解説しながら、「共同親権にまつわる大きな誤解」を一つひとつ解き明かしていきます。 そして、離婚後も両方の親が子育てに関わる「共同養育」こそが、日本の子どもたちを幸せにする唯一の道であることを証明していきましょう。 今、離婚を考えている方、すでに離婚を経験された方、そしてすべての子どもの未来を願う大人たちに、この本を捧げます。 【目次】 はじめに 第1章:なぜ日本では、離婚で“親子”が引き裂かれるのか? 第2章:「パパは悪い人なんだよ?」 ー 子どもの心に植え付けられる歪んだ忠誠心 第3章:残された親たちの終わらない苦しみ 第4章:これが世界の新常識 ー 「共同養育」が子どもを幸せにする客観的データ 第5章:DVから逃げられない?共同親権にまつわる「5つの大きな誤解」とは? 第6章:「会えない子にお金は払えない」 ー 養育費不払いの“不都合な真実” 第7章:なぜ「連れ去った者勝ち」が許されるのか? ー 機能不全に陥る日本の司法 第8章:すべては子どもたちの笑顔のために ー 私たちが目指すべき新しい家族の形 おわりに 【著者媒体】 X https://x.com/tsuresari04 note https://note.com/tsuresari04

Author

連れ去られ夫

共同養育の重要性を訴える活動家、医師、一人の父親でもある。

自身の離婚時、元パートナーからDVを受けた末に、我が子を一方的に連れ去られ、以来会うことのできないという壮絶な経験を持つ。

この絶望的な体験をきっかけに、日本の単独親権制度が抱える構造的な問題と、それが子どもたちに与える深刻なダメージを痛感する。

個人の感情論に留まることなく、国内外の数多くの学術論文や公的な統計データを徹底的にリサーチし、「子どもの最善の利益」を客観的なエビデンスに基づいて追求することを信条としている。

2026年にも施行される民法改正を前に、離婚後も親子が断絶されることのない社会の実現を目指し、SNSやnoteなどを通じて、精力的に情報発信を続けている。