「P2Cブランド」の教科書
本間英俊
あとがきのあとがき。 P2Cブランドの成功の背景には、時代の変化とともに進化する戦略があります。その中心に「トラスト(T)+トラスト(T)×ストーリー(S)」という考え方が位置していると考えます。ここでの「トラスト」は、インフルエンサーや人の信用、そして製品の物質的信用や機能的信用を意味しています。しかし、これらの「トラスト」同士が単独で存在するだけでは不十分です。ストーリーがなければ、2つのTを繋ぐ橋が欠けてしまい、結果として心に響かない広告になってしまいます。現代は新商品をただ有名人が告知するだけのマス広告では、人の心は動かなくなりつつあります。それに対して、ストーリーを通じて消費者の心に訴えかけ、深い信頼関係を築き上げることが、P2Cブランド戦略の核心となっています。一人にスマホ一台が当たり前の現代では、SNSアプリを通じ、ディレクターやブランドがいつでも直接お客様とつながることができるようになりました。インフルエンサーやブランド、製品の物語や価値観を直接伝え、共感を得ることができなければ、ファッションブランドは価値を感じて貰えなくなりました。ただ、ここで特に強調したいのは「インフルエンサーもブランドも「ありのまま」の姿を表現して、その姿に共感するファンを作る」という考え方です。この「ありのまま」が好まれるのは、まさに現代の特徴であり、過去はラグジュアリーや作られた装飾された世界を作ることで、ファッションブランドは価値を高めてきました。しかし、現代の消費者は真実性や透明性を求めており、その中での「ありのまま」の姿が評価され、信頼を築く要素となっています。新しい時代の中で、私たち一人一人が自らの「物語」を大切にし、それを伝える力を磨き続けることの重要性を強調したいと思います。それが、真のエンゲージメントを生む、そして新しい価値を創造する源泉となっていきます。だからこそ、この先もさらにP2Cブランドが必要になってくると感じています。スマホ越しに直接的なコミュニケーションを通じて、お客様との深い信頼関係を築き上げ、共感を得ることが、これからのファッションブランド戦略の鍵となるでしょう。 本間英俊
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著者 本間英俊
肩書 有限会社ディーエスエスアール
略歴 ACC クリエイティブアワード2017クリエイティブイノベーション部門金賞受賞。SNS総フォロワー270万人以上を誇り、実業家のROLAND氏と共同で株式会社MINIMUSを設立。モータージャーナリスト界で日本一のフォロワー数を持つ五味康隆氏とデザイナー橋本淳と協業し「88HachiHachi」を設立。23歳でアパレルデザイン会社ディーエスエスアールを設立し、2021年からは自社にてインフルエンサーを起点としたレディスP2Cブランド「PRIVEVE」をスタート。さらに2022年より複数のインフルエンサーブランドをひとつのプラットフォームで展開する「PUFF Designs」をローンチ。その豊富な経験と知識を活かし、「P2Cブランド」の教科書を執筆。