フォトグラファーのピックアップコラム
現代美術家
杉田陽平
彼は「言葉」が多い。私はインタビューがあったその日の夜。彼に「コラムを楽しみにしててください」と連絡した。これがそのコラムだ。だからこそ、私ははっきりと言う。彼は「言葉」が多い。インタビューが終わり小さな会議室で彼と私のフォトシューティングが始まった。「絵は好きですか?」という私の問いに対して彼は「もう通り越しているんです。大嫌い大嫌い大嫌い大好きで」と答えた。雑音が聴こえる。「シーー」私はここで、おしゃべりをやめないライターと担当者にこの部屋から出てもらうようにお願いした。この空間に私と彼だけになった。「まわりの目が劇的に変わりましたね。番組配信後は、SNSのフォロワーが何十倍にもなっています。僕が作る作品も3年待ちの状態です。光栄ですね」彼はインタビューの冒頭でそう語っていた。私は”杉ちゃん”は撮らない。本来の”杉田陽平”を撮る。そのために一脚の空の椅子を置き、そこに、話したい相手がいる、と想定して、対話するエンプティチェアという技法を使った。彼には挫折した時の自分と5年後の自分と対話してもらうことにした。彼に挫折した時の自分に声をかけてもらった。「言葉」が多い。しかし挫折した時の彼は今の彼をみてもなにも話さなかった。キョトンとなんともいえない表情をしていた。続いて、5年後の自分と対話してもらおうしたが、彼は5年後の自分がイメージできなかった。では3年後。3年後 の自分もイメージできない。彼は自分の未来がイメージできないようだ。もう一度、5年後の自分を「言葉」ではなく”絵”でイメージしてもらった。5年後の彼も今の彼をみて何も言わなかった。5年後の彼は上品な白い服を着て、神妙な顔で今の彼を真剣に見つめていた。彼の「言葉」が消えた。私は聞いた「自分のことは好きですか?」「9割は嫌いです」「その好きな一割はなんですか?」「なんていうのかな。信じてる。自分以外の人を信じ切ってるんです。それはすごいいいなって」「では、自分の事を信じている人をイメージしてください。」カシャ。この一枚だ。彼に多くの「言葉」はいらない。私達は彼の創る作品がみたいのだ。今の彼の状況が今後、彼をどこまで連れて行くのだろう。皆楽しみにしている。
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