フォトグラファーのピックアップコラム
SEIMEI株式会社
Founder & CEO

津崎桂一

午後の柔らかい光の中、撮影は進んだ。彼は写真に撮られることに慣れているようだった。全身の写真を撮るときファインダーから覗く彼の均衡のとれた姿はキラキラと輝きその美しさはどこからみても完璧だった…。私とインタビュアーが待ち合わせの場所にいると約束の時間ピッタリに彼がやってきた。笑顔で挨拶をする彼は見上げるほどの長身で手足が長くファッションモデルか俳優のようだった。挨拶も早々に私たちは彼の後ろについてビルに入った。受付の女性と彼がなにかのやりとりをしていた。その姿はまるで映画のワンシーンのようだった。彼と一緒にいると私もその映画の中の登場人物になったような気分がした。インタビューが始まった。彼の声は耳当たりがよく穏やかな口調で話した。仕草は上品で笑うと顔がクシャっとなり目尻にとてもチャーミングな皺ができた。テーブルに置かれる長い指は美術品のようだった。それだけではない。彼から語られる様々なエピソードはとても愉快で興味深いものだった。高身長、高学歴、ルックスもよくユーモアもある。まさに完璧な男ではないか…私は思わずため息をつき、同じ男として嫉妬した。しかしインタビューを聞いていると彼の口から何度も「自分にしかできないこと」というセリフが繰り返されることに私は気が付いた。そのセリフを口にするとき彼はほんの少しだが口調を強くした。完璧にみえる彼も幾度も挫折をしその度に歯を食いしばって立ち上がり自省を繰り返しながら弱点を知り「自分にしかできないこと」を愚直に追い求めているのだ。そして、彼はそれを遂に見つけて実行しようといしているのだ。完璧にみせるその姿勢や強さや努力こそが彼の本当の魅力なんだと感じた。なんだ結局、完璧ではないか…。ファインダーの中で、はにかむ彼をみて嫉妬していた自分を恥じた。

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