フォトグラファーのピックアップコラム
建築インテリアデザイナー

福垣慶吾

嫉妬した。私もプロのフォトグラファーとして19年ほど活動している。もちろん自分の事をクリエイターと呼ぶ事は恐れ多いが、その端くれだと自分では思っている。だが彼の経歴、ビジョン、残してきたプロジェクト(作品)の全てが私のいる世界とは異なった広がりを持っているように感じた。にも関わらずだ。とにかく謙虚で彼からは傲慢さが微塵も感じられない。彼のような”本物”に一歩でも近くためにはどうしたらいいのだろう…。重力に縛られるように私は沈んだ。その瞬間。彼の淡々と語りながらも想いが込もった言葉が私の耳に届いた。「今後、世界は平和になっていくだろうという前提でビジョンをもっています。」「はっ!」とした。ほんの少し宙に浮くような感覚があった。そうだ。私も人間同士というレベルではこれから先、世界が平和になっていくと考えているのだ。それを彼の発言で思い出した。意味のない比較で彼に嫉妬している自分がとても恥ずかしくなった。彼は自分のエゴを捨て、全ての人が幸せになるように自分の持てる力を使っているのだ。そしてフォトセッションの時間、私が構えたカメラのレンズをスッと見つめる彼がいた。シャッターを切った。「カシャ」その音はスッと宙に舞ってやさしく消えていった。

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