ポートレートコラム
保険外交員 兼 ビジネス系YouTuber
宋世羅
Photo/Write : Tetsuya Hara
私はその部屋の窓を開けた。真夏の風が部屋に吹き込み、蝉は競うように声を上げていた。彼はYouTubeでたくさんの動画に出演しているにも関わらず、カメラのレンズの前では居心地が悪そうだった。私は彼をファインダー越しに観た。まるで冷たく光るナイフのようだった。そう伝えると「よく言われます」と彼は言った。私は背中にうっすらと汗を感じた。いくつか質問をした後「人生、挫折しかない」と言う彼に「レンズの奥に今までで一番、挫折した時の自分がいると思って見てください。なんて声をかけますか?」と指示を出した。「余裕やな。」生ぬるい風がフワッと舞った。「そのまま、その挫折した自分を見てください」彼の真っ直ぐな瞳が夏の日差しに照らされてキラキラと輝いていた。その瞬間、彼の発信する言葉が多くの人に届く理由がわかった。彼が纏う空気は鋭く、緊張感を漂わせているが、その奥のある種の弱さや痛みが、彼の言葉、ひとつひとつに強い説得力を持たせているのだ。「レンズの奥に宋さんを応援してくれる方やファンのがいると思って見てください。」「余裕やな」彼はレンズに向かって言った。声は大きくなかったが、人の柔らかい場所に響く声だ。彼は慈愛に満ちた深い表情をしていた。「いい顔してますね」私は彼に言った。彼は少しだけ笑った。夏が終わり、そして次の季節がやってくる。