有名企業、数十社への投資、育成を行う彼はインタビュアーの質問に対し、一度だけ軽く頷き、理路整然と答えた。口調はとても優しく、使われる言葉は誰でも理解できるものだった。その話ぶりはとても美しく私はカメラを構えながら聞き入った。
インタビューは幼少期に水泳と野球をやっていた話になった。個人競技の水泳、団体競技の野球を経験したことが今にも役に立っているらしい。どちらも本格的にやっていたらしく
私は彼がスポーツも万能であることに驚いた。「文武両道とはこういうことを言うのだな…」とぼんやり考えていると彼は私をさらに驚かすような発言をした。
「野球をやっていてよかったのはどんなに実力があっても勝てたり勝てなかったりすることがわかったこと。どう転がるかは開けてみないとわからない…運によるものや他の人によるものが多分にある。自分にできることは極限まで頑張るけどあとは天に任せればいい。」
その後もインタビューが進み、彼が社会人として重大な決断をした時の話では
「僕は運やタイミングを大切にしてる。全てはご縁なんで(中略)自分でこうしたい!と思うと5年後10年後にはなんとなくそっち方向に自然と向かうじゃないですか。よくわからない力に導かれるというか笑」
”論理的思考”と”運命論”と言われるような相容れないものが彼の中では見事に融合しているのだ。それだけではない”文”と”武”、”個人”と”団体”、”冷静”と”情熱”、”挑戦”と”応戦”、”ミクロの視点”と”マクロの視点”など相反するものが彼の中では自然に共存しているのだ。私は強く感銘を受けた。目の前が広がる感覚があった。彼は私が目指している”場所”にいるのだ。フォトシューティングの時間だ。私はカメラを構えた。ファインダーから覗く彼はそこに”在る”状態だった。音楽家などの芸術家を撮ってるような感覚だった。
なかなかできることではない。彼にはウィークポイントはないのか…?撮影が終盤に差し掛かったとき、私は彼のウィークポイントに気づき思わずニヤリと笑った。
彼はシャイなのだ…。ウィークポイントというよりはそのチャーミングな一面に私はますます好感をもった。