ポートレートコラム
株式会社ウエディングパーク
代表取締役社長
日紫喜誠吾
Photo/Write : Tetsuya Hara
私と彼は偶然にも同郷であり、生まれ年も同じであった。当然、親近感のようなものが生まれる。彼のカレンダーにはスケジュールがギッシリと詰まっており、インタビュー後のフォトシューティングに許される時間は5分弱であった。我々はオフィスの広々としたベランダに出た。気持ちの良い風と共にビルが立ち並ぶ、都会の空が目の前に広がった。私は改めて彼を見た、仕立てのいいスーツを身に纏ったその佇まいはとてもエレガントであった。それに比べ、私はブカブカのTシャツとパンツ。そしてナイキのスニーカーだった。私は彼にレンズを向けた。普通、誰しもレンズを向けられると少しは怯むのだが、彼は真っ直ぐにレンズを見据えた。逃げない男なのだ。多くの困難に対しても正面から向き合い、常に結果を出し続けてきたのだ。私はふと思いつき、故郷を思い浮かべながら空をみてもらった。彼と私が少年時代を過ごした自然が多く残るあの町だ。彼の顔から幾分緊張が抜け、遠くを見つめる瞳は美しく透き通り、とてもいい表情をしていた。故郷と繋がるこの都会の空に彼は、なにをみたのだろうか…? 私は彼に「故郷に戻るつもりはないですか?」と聞いてみた。彼は「故郷はとても大切だが戻る気はない」と答えた。故郷を飛び出し「 がむしゃら 」に挑戦していく彼は多くの仲間に慕われ、そして支えられ、これから先も常に前へ前へと進んでいくのだろう。私は彼と同郷なことに喜びと誇りに感じた…。 帰り道、私は表参道を歩きながら、いいスーツを新調することにしようと思った…