ポートレートコラム
ファッションデザイナー
橋本淳
Photo/Write : Tetsuya Hara
私は彼にレンズを向ける。ファインダーから覗く彼の身のこなしはなんとも言えない色気が漂った。 私は彼を表す言葉を探す。みつかった。「粋」だ。この文章を書くにあたってインターネットで改めて、その意味を調べてみた。<気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること。また、そのさま>まさにぴったりな言葉だ。そして、彼からだけでなく彼から生まれる服からも「粋」の精神が感じられ、彼の生きることに対する態度を静かに語る。「これが一流のファッションデザイナーなのだ」とシャッターを切りながら、私は妙に納得した。「かっこいい」口から自然と漏れた。彼は穏やかな笑みを浮かべながらレンズを見つめる。彼から感じる「粋」は“色気”だけではなく幾度となく訪れる困難に立ち向かうための”情熱”とそれらを乗り越えた経験からくる”余裕”で形成されている。彼がファッションを通じて、もたらす影響は、多くの人にとってインスピレーションとなり、生き方に対する考え方を変え、そして支えてきた。私はシャッターを切る度に彼に魅了された。彼のような人物に出会えるのはまさにフォトグラファーの特権だ。無駄にすることはできない。この出会いを自分自身の生き方に活かし、私なりの「粋」を自らの写真で表現したいと強く思った。