今回のインタビュー会場となった原宿のとあるオフィスにフラっと彼は現れた。「随分と若いな…」それが私の第一印象だった。よれたTシャツに細身の黒いパンツ、リュックを背負い、頭には寝癖がついていた。4つの会社の代表をやってるとは思えない。実際の年齢は29歳だが、まるで大学生のようだった。インタビューが始まった。質問に対し理路整然と語る彼は先程までの印象とは異なり、自信に満ちていた。迷いのない言葉の端々には聡明さを感じた。彼をより深く掘り下げるために、インタビュアーが生い立ちについて質問をした。彼は少し困ったように天井を見上げ、一呼吸おいた後に「子供の頃はあまり思い出せない。下手したら一週間前の事も思い出せないです笑」とおどけた。しかし彼の表情は至って真面目だった。フォトセッションの時間となり、私は彼にレンズを向けた。ファインダーから覗く、彼は傷つきやすい少年のようにみえた。しかし、その瞳は強い意志と大きなエネルギーに満ちていた。彼はレンズの奥を覗いた。彼は大学受験前に体調を崩し、第一志望の大学に落ちている。大きな挫折を感じただろう。しかし彼はそれを数ヶ月で断ち切った。後ろは振り返らない。目の前だけを見る。考える事をやめない。そして行動した。「問題が解決できないときは、解こうとしている問題が大きすぎるか、間違っているかのどちらか。目指したいところと現状の差を見極めて、解決できるサイズに因数分解を繰り返すことで、大体の問題は解決できる」私は彼が若く見える理由がわかった気がする。彼は草臥れた多くの大人のように思い出話や、愚痴、不平不満を言わない。その透明でキラキラと輝く少年のような瞳で目の前だけを見続けている。