ポートレートコラム
大芝義信
Photo/Write : Tetsuya Hara
彼と初めて出会ったのはいつだろうか?おそらく6〜7年前だと思う。私のFacebookのメッセージボックスに、彼から「写真を撮ってほしい」という依頼が届いた。その願いに応えた瞬間が、私と彼の物語の始まりだった。当時、私は彼の存在を知らなかった。そして私たちの関係がこんなにも長く続くとは、そのときの私には想像できなかった。初対面の時、彼の物腰の柔らかさと、時折見せる美しい笑顔が、印象的だった。しかし彼はビジネス界で活気に満ち、大いなる野心を秘めた男だった。彼は私の撮った写真を気に入り、それ以降、2〜3年おきに彼のプロフィール写真を撮り続けることになる。 最近の出来事として、あるインタビュー取材が終わり、彼とともにタクシーに乗って代々木上原駅へ向かった。タクシーの運転手が、駅前の交差点で車を停め、私たちに降車を促した。その場所は人通りも多く、極めて危険な場所だった。私は怒りを抑えきれず「こんなところで降りるのですか?」と声を荒げた。しかし、彼は静かに微笑んで「ありがとうございます。」と言って、タクシーから降りた。 私の怒りは収まらなかった。彼に同調を求めるように「こんな危険な場所で降ろすなんてひどいですよね。」と言った。しかし、彼は穏やかな口調で「タクシーの運転手さんにも事情があって、あの場所で降ろすしかなかったんですよ。」と言った。彼は冷静さを保ち状況を理解し、私の怒りを鎮めるような態度をとった。その瞬間、私は自分を恥じ入らせられた。彼は確実に成長を遂げている。彼と会うたびにその変化を感じ取ることができる。彼は未来に向かって進化し続ける存在であり、きっと来るだろう、彼の次のプロフィール写真を撮る機会がとても待ち遠しい。この先、彼にどんな変化が待っているのだろうか。また私を驚かしてほしい。私たちの物語は続くのだ…。