不登校の小学生Youtuberが話題になった昨今ですが、「起業」という選択肢が広く浸透し、職業の一つとして色々な方が起業を選択するようになってきています。

ランサーズの統計では、フリーランスの人口は2015年から2018年で約22%増え、1,119万人。労働人口比率では17%と約6人に一人が独立したフリーランスとなっています。


また、フリーランサーのうち増加傾向にあるのは、副業、複業系の事業者が増えてきているようです。

このように日本では、「起業」は身近な選択肢の一つになってきているともいえますが、こうした起業をとりまく「教育」においては現状はどういった状態なのでしょうか?「起業家」を「教育」することで、質の高い起業家を増やし、起業での成功者を増やすことはできるのか、という観点で様々な起業教育の現状をご紹介したいと思います。

子供の起業家教育の現状は?

まず、教育という観点でやはりきになるのが「子ども」の起業教育ですよね。
ユーチューバーが子どもの、将来なりたい職業にランクインするなど、子ども自身の起業に対する意欲も上がって来ているように思いますが、その実情について見ていきましょう。

学校で行われている起業家教育は?

実は、日本の中学生の3分の1以上が「起業家教育」を受けています。経済産業省の2015年の調査では、小学校の10%、中学校の33%がすでに起業家教育に取り組んでいるという調査結果がでているのです。

実際どういう授業が行われているかというと、多いのは企業が自社の新商品やサービスの開発を中高生に体験させるようなものです。授業の内容としては、新商品の開発や製品化を擬似的に体験することなどを行い、時には実際に商品として販売されることもあるようです。ここでは主に商品開発の「プロセス」や「ノウハウ」などを学ぶというのが行われているようです。

一方で課題もあるようです。すなわち、起業家精神の中心となる「主体性」をはぐくむことという点については、まだまだこれからな側面があるようです。教師が主体となって作成するカリキュラムでは、どうしてもある程度「答えがわかっている」内容をカリキュラムにしてしまいます。一方で、起業では「答えがわからない状態でどう動くべきなのか?」という点が重要。こういう教師が答えや、想定した流れがわからない状態の中で、子ども自身が課題を発見して、行動していく、というところまではまだ至っていないというのが、現状のようです。

小学生~高校生の起業家は?

こうした子ども向けの起業家教育の現状ですが、こうした中でも既に注目すべき子どもの起業家の事例も出てきているようです。それではいくつか子どもの起業家の事例を紹介させていただきます。

900円の借金から始まった小学1年生の起業


先日、話題になったこちらの記事。

https://note.mu/sato_nezi
小学1年生が、欲しいものを買うために、親から900円の借金をして、コーヒー屋を開いて、お金を稼いでいくというもの。
素晴らしいのは、コーヒー屋をやったら?という提案を、親がしたわけではなく、

●フィーを得るためには、いろんな方法がある。小1がお小遣い以外に父ちゃんたちから、お金をもらうには「ターゲット(父母)の困りごと」を解決してあげればいい。
●そのために、父ちゃんや母ちゃんを観察したり、直接聞いてみたりするといい。どこにビジネスチャンスがあるか、アンテナを貼るといい。

という、ようにビジネスアイデアを考えるヒントのみを与え、何をするかは自分自身で考え、導き出したものであります。
そして、美味しいハンドドリップのコーヒーであれば、お父さんもお母さんも飲みたい、というニーズを発見した彼はコーヒー店を家で開いたのですが、ここで一つ問題が。

それは、美味しいコーヒーの豆を仕入れようとすると、手持ちのお年玉1000円では足りないのです。そこで、彼はお父さんから900円の借金をして豆を購入することに。

コーヒーを入れる練習をしたり、ちゃんと出納帳をつけたり、メニューを増やしてアップセル・クロスセルを図ったりと、プロの経営者顔負けのやり方には驚嘆しました。

きっと彼は、将来すごい起業家になるでしょう。

不登校からコーヒーの焙煎士として起業した岩野響さん

同じく最近の事例ですが、今度は中学生の時に、不登校になりそのままコーヒーの焙煎士となって、群馬県で自ら焙煎したコーヒーショップを開店。現在は、オンラインでのコーヒー豆の販売をメインに展開しており、D&DEPARTMENTや東急ハンズなどでも販売中です。

https://www.e-aidem.com/ch/jimocoro/entry/dango06

親子企業という形で、「小中高生のための職業探究ウェブメディア」を立ち上げた12歳の起業家


現役中学生である加藤路瑛さんは、小中高生のための職業探究ウェブメディア「TANQ-JOB」を2018年に立ち上げました。TANQ-JOBでは、小中高生向けの起業情報や様々な職業情報、起業家のインタビュー記事などを届け、子どもたちが年齢を理由に「今」を諦めることなく、起業や目標に向かって挑戦しやすい社会を目指す、というコンセプトのもと運営されています。「TANQ-JOB」はライター、エンジニア、デザイナーも全て小中高生で構成し、報酬も支払うというもの。既に、CAMPFIREで行ったクラウドファンディングでは100万円以上の資金を獲得し、これからの事業の行き先がきになるところです。

子どもの起業傾向にも変化が!?より多様な起業へ

さて、こうした子どもの起業傾向で長期的にみて、一つ大きな変化が起こってきているように思います。それは、これまで注目されてきた中高生の起業家とは違う形での起業がでてきていることです。従来、中高性の起業家として注目されていたのは、
椎木里佳のような学校の中心にいるネットワークを活かしたマーケティング型サービスで起業
山内奏人のような天才プログラマー型の起業
のように特別な才能を持った中高生による起業、というものでした。これが、今回紹介したようなものでは、特別な才能がなくても、自分の好きなこと、興味があることを形にしたい、という想い等を軸としたより多様性のある起業、言い換えれば誰でも起業できる可能性を示したものであるということです。

これは「起業」という環境を取り巻くステージが子どもたちの間でも次のステージに来たのでは、ということを感じさせるものですよね。今後、ますます子どもの中からどういう起業家がでてくるか、楽しみですね!

Vol.2 グローバルな起業家教育の現状へ続く