令和の虎、神回。完全無欠のビジネスプランで魅せた「スマートお守り」の石川加奈子。その⽣き⽅を深掘り、覚悟の決め⽅、勝負強さを学ぶ。

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氏名 石川加奈子
肩書 株式会社grigry 代表取締役&CEO
略歴 ⼤学卒業後、内閣官房内閣情報調査室にて情報収集・分析業務に従事。2013年に渡⽶後、International Institute of Global Resilience(IIGR)にてリサーチ業務に加え、新規プロジェクト開発やイベント等のマネジメントに携わる。2015年に帰国後、コンサルタントとして独⽴し、ベンチャービジネスを⽀援。2019年春にMBAを取得、同年7⽉株式会社grigryを設⽴。

2000年代前半に⼀代ブームを起こした「¥マネーの⻁」。事業を推進するために資⾦を必要としている志願者が、(⻁と呼ばれる)5⼈の投資家の前で事業計画をプレゼン。希望⾦額に達した場合、出資を得られるという番組だ。2018年より「¥マネーの⻁」に出演していた起業家の岩井良明⽒が主宰・司会を務める形で「令和の⻁」として復活。「令和の⻁CHANNEL」の名で、YouTubeで配信している。

2021年5⽉、神回と称されるほど⻁や視聴者を魅了した志願者が現れた。今回インタビューを受けてくれた、株式会社grigry代表取締役&CEO 石川加奈子だ。⽯川⽒は、株式会社grigryでセキュリティ機能を備えた次世代型お守りガジェット「スマートお守り」を開発しており、その開発資⾦の⾜しに、「令和の⻁CHANNEL」へ志願した。⽯川⽒に、プロダクト開発・起業に⾄った経緯、勝負強さの秘訣、その⼈⽣観をお聞きした。

※ 本インタビューは緊急事態宣言が発出される以前に、感染症対策を行なった上で実施しています。また、取材後2週間が経過した時点で、関係者に新型コロナウィルスに関する症状はありません。

令和の⻁CHANNELを終えて

—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】『ザ・キーパーソン』は、ジャンルや年齢を問わず活躍されている⽅にインタビューし、時代のキーパーソンから学ぶことをコンセプトにしたメディアです。今回は、株式会社grigryの代表取締役&CEOで、「スマートお守り」を開発されている⽯川さんにお話をお聞きします。

⽯川さんは令和の⻁CHANNELで5⽉28⽇から3⽇間に渡り配信された回で⾒事に資⾦調達を達成されましたね。完全オールおめでとうございます。今、「スマートお守り」は、どのようなステージにあるのか、改めてご説明いただけますか?

—【話し手:石川氏、以下:石川】ありがとうございます。まさに今、⻁や投資家の⽅々からいただいた資⾦を元⼿にプロダクト開発を本格化させているところです。今回令和の⻁CHANNELで⻁の皆様に加え、その他エンジェル投資家の⽅々からもご出資いただき、6⽉中旬に資⾦調達をクローズしました。今後は、プロダクト開発を進めるのと同時に、プロモーション活動にも⼒を⼊れていきます。また、今秋には量産費⽤を賄うため再度資⾦調達を⾏う予定です。

—【松嶋】また資⾦調達を⾏うのですね!資⾦調達の⾯では、最近クラウドファンディングが盛り上がっていますよね。クラウドファンディングも視野に⼊っているのでしょうか?

—【石川】そうですね。クラウドファンディングも適切なタイミングで⾏いたいと思っています。ただ、量産のための資⾦を確保するためにクラウドファンディングを利⽤するかどうかはまだ悩んでいます。

使う⼈の気持ちに寄り添った、⾒守りサービス

—【松嶋】次は、プロダクトについて⾊々とお聞きしたいと思います。GPSでの⾒守りサービスなど、既存のソリューションと「スマートお守り」との差異は、どんなところでしょうか?

—【石川】既存のGPS⾒守りサービスは、主に⼩学⽣のお⼦さんを持つ親御さんを対象にしたものになります。お⼦さんのランドセルなどにGPS端末を⼊れておくことで、お⼦さんの居場所を知りたいときに親御さんがスマートフォンからお⼦さんの位置を確認することができるというものです。ただ、そういった既存の⾒守りGPSでは、中学⽣や⾼校⽣、⼤学⽣、そして⼤⼈を⾒守ることが難しいのです。成⻑して⾃⽴⼼が芽⽣えてくると、⾃分の居場所を親や他の誰かがいつでも確認できるということを⼼地良くは思わなくなってきます。松嶋さんもご⾃⾝の居場所がいつでも誰かに⾃由にチェックされるとしたら、それが親や親しい⼈であっても、ちょっと居⼼地が悪くないですか?(笑)

その点、「スマートお守り」の主体はデバイスを持っているユーザーです。予期せず突然具合が悪くなったり、突然⼈に襲われたり。そんな「もしもの時」に簡単な操作で「スマートお守り」を起動させることによって、事前に登録していた緊急連絡先(⾒守者)にSOSが届きます。⾒守者は普段、デバイスを持っているユーザーがどこにいるのかチェックすることはできません。本当に何かあったときだけ、困っているときや助けを求めているときにだけSOSが届くように設計しています。既存の⼦ども向けGPS⾒守りサービスは、居場所は常に分りますが、危ないときや助けを求めているときに知らせてくれるわけではありませんから、そこも解決したいと思いました。

—【松嶋】本当に危ないときにだけアラートが出て、その時だけ居場所がわかるという点が新しいサービスなのですね。中学⽣以上がターゲットということでしょうか?

—【石川】そうですね。「こういう商品があったら持たせたいな」と思っていただける⽅は誰かというと、恐らくお嬢さんを私⽴中学校や⾼校に通わせている親御さんだと考えています。その理由は、やはり私⽴中学校⼊学や⾼校⼊学のタイミングでお⼦さんの⽣活スタイル、特に⾏動範囲がグッと広がるからです。例えば、これまで地元の⼩学校に通っていた時期は家から徒歩数⼗分圏内が⾏動範囲であったのに対し、中学・⾼校に進学することで電⾞やバス通学をされる⽅も増えてきます。今までは地域の⽬で⾒守っていられたものが、親や地域の⽬が届かなくなる。⼼配が増えるタイミングだと思います。

—【松嶋】まず私⽴中学⽣や⾼校⽣が対象とのことですが、共学の⽅や公⽴の⽅も対象ですよね?

—【石川】はい、もちろん共学や公⽴に通われている⽅も対象です。性暴⼒の観点から⾔いますと、被害者は⼥性だけではありませんし、むしろ男性が被害者となる場合はより表に出てこなかったりするので、「スマートお守り」を気に⼊っていただけるなら男性にもぜひ持っていただきたいとは思っています。

—【松嶋】神社に「スマートお守り」があったら、おじいちゃんおばあちゃんも孫に買ってくれそうですね。

—【石川】そうですよね!私もそう思っていまして、いずれ神社仏閣さんともコラボレーションできればと思っています。

プロダクトの背景には、ネガティブストレスから⼈々を解放したい想いがある。

—【松嶋】次に「スマートお守り」を開発するに⾄った経緯をお聞きかせください。株式会社grigryは⼈々を「ネガティブストレス」から解放することをミッションに掲げられていますよね?「スマートお守り」にはどのようにその思いが反映されているのでしょうか?

—【石川】おっしゃる通り、弊社は、「より⾃由に、⾃分らしく、⼈⽣を楽しめるセカイ」を実現するため、⼈々を「ネガティブストレス(負のストレス)」から解放することをミッションに掲げ、皆さんのネガティブストレスに対する『防御⼒アップ』と『回復⼒アップ』をサポートしています。

ネガティブストレスの原因は⼈それぞれ、様々あると思いますが、私は深刻なネガティブストレスの原因となりうる「性暴⼒」に特に焦点を当てようと思いました。性暴⼒の被害は、PTSDや⾃殺企図などを引き起こし、⻑期にわたって社会⽣活・対⼈関係に深刻な影響を及ぼし得る重⼤なものです。実は私⾃⾝、⾼校⽣や⼤学⽣、20代の頃に性暴⼒の被害に遭った経験がありまして、この20年間「あの時どうすればよかったのか」「もしもの時にどうすればいいのか」ということをずっと考え続けてきました。

そして2019年のある⽇に閃いたのです! 「ああ、こういうプロダクトがあれば、あの時の私も救えたかもしれないし、これから先同じような悲しい⽬に遭う⼈を助けることができるかもしれない、誰かの笑顔を守れるかもしれない」と。そこでそのアイデアをカタチにするために起業し、この事業をスタートさせました。

ただし、実は起業時に思い描いていたものは「スマートお守り」ではありませんでした。それは、いつものストレスからも、もしもの⾝の危険からも飼い主を守ってくれる可愛いお守りペットロボット「cocoron(ココロン)」でした。私はそれを作りたかったのです。

—【松嶋】その「cocoron」は、どんなコンセプトのプロダクトだったのでしょうか?

—【石川】「cocoron」は「もしもの時」のセキュリティ機能のみならず「いつもの」ストレスケア機能も備わったペットロボットです。

防犯ブザーや催涙スプレーなど、現在も⾊々と防犯グッズはあります。ただ、中学⽣以上の⼤⼈の⼥性でそれらを⽇常的に持ち歩いている⼈はほとんどいないのです。例えば、⾼校⽣以上で防犯ブザーをすぐに使えるように常時鞄の外側に携帯している⼈は1%未満とのこと。さらに、実際に被害に遭った時に防犯グッズや護⾝グッズを活⽤した⼈はゼロという調査結果もあります。つまり、現在多くの⼈は、突然襲われた時に、⾃分の⾝を守る効果的な⼿段をほとんど持っていません。そして、⼤切な⼈が危険な⽬に遭っていても、今はそれを知る術もほとんどないため、守ってあげることもできません。そこで私は、いざという時に⾃分の⾝を守れる効果的な⼿段を増やし、さらに守りたい⼈を守れる仕組みを作ることで、性暴⼒による深刻なトラウマを抱えないよう未然に防ぎたいと強く思うようになりました。

そもそもなぜ中学⽣以上の⼥性は防犯グッズを持ち歩かないのか、⼤きな理由の1つに、「いわゆる防犯グッズは、滅多に使わないものだから毎⽇持ち歩くのは⾯倒くさい」という⼼理があるのではと考えました。そこで考えついたのが、ペットロボットでした。毎⽇持ち歩いてもらうために、歩いた距離に応じて、お守りペットロボットが成⻑する、持ち主のストレス度合いやケア状況によって、お守りペットロボットの性格も変わっていくという育成機能を持たせようと考えました。ストレスをケアすると、お守りペットロボットが穏やかに育ちます。さらに、「cocoron」にはアロマテラピーによって⽇々のストレスをケアするという機能もつける予定でした。育成機能といつものストレスをケアする機能によって「毎⽇持ち歩く」というモチベーションを⾼めようという発想です。

元々はそういうものを作りたくて、2020年に応募したビジネスコンテストも「cocoron」で応募しました。グランプリをいただいた⼥性起業チャレンジ制度、⽇本経済新聞社主催の「スタ☆アトピッチJapan」、そして東京都の⼥性ベンチャー促進事業「APT Women」も「スマートお守り」ではなく「cocoron」で応募しました。

—【松嶋】 なぜ「cocoron」から「スマートお守り」に変わったのでしょうか?

—【石川】「cocoron」は今でも諦めてはいません。ただ、「cocoron」を作るためには、⾒守り・セキュリティ機能に加えて、ロボット機能も開発しないといけません。となると、その分コストもかかりますし、開発期間も⻑くなります。また、今はペットロボットそのものもまだ普及していないので、今持っていないものを持たせるということもハードルが⾼いです。それらの課題をどうしたら乗り越えられるかをずっと考えていました。

そして、昨年9⽉のある朝、シャワー浴びていたら急に「お守りだ!」と閃きました。急いでお⾵呂から出て、⾃分のお財布にお守りが⼊っていたことを確認しました。思い返すと、学⽣時代も鞄の中にお守りを⼊れていました。その後、若い⼥の⼦の知り合い20⼈ぐらいに確認したところ、9割以上がお守りを持ったことがあり、7割は今も持っていました。

なぜ多くの⼈がお守りを持つのか。「守ってもらえそう」「願いが叶いそう」「なんとなく⼒をくれそう」と、ポジティブな気持ちで持ち歩いていると思いますが、でもいざ何かがあったときに、お守りは守ってくれないじゃないですか。だから、お守りとテクノロジーを掛け合わせて、もしもの時に本当に守ってくれるお守りを作ってみようと。 それでまずは「スマートお守り」だと、ピボットしたのです。「スマートお守り」は、ロボット機能は必要なく、⾒守り・セキュリティ機能だけを開発すればいいので、頭を悩ませていた課題もクリアしました。お守り袋の中にある内符を「スマートお守り」の中に格納できるようにし、従来のお守りの役割も担えることにしました。

—【松嶋】みんなに持ってもらうことにフォーカスした結果、ペットロボットからお守りに⾏き着いたのですね。

—【石川】はい、そうです。「スマートお守り」がうまくいったら、いずれは「cocoron」もカタチにできればと思っています。時流としてもご家庭にパーソナルロボットが⼊ってきていますので、近いうちに、もっとパーソナルロボットが⾝近になっている世界が来ると思っています。

ターニングポイントは、1冊の本と1⼈の⼥性との出会い

—【松嶋】次に⽯川さんが歩まれたキャリアについてもお聞きしたいと思います。⽯川さんは⼤学卒業後、多様なご経験を積まれてきました。いつから起業しようと思われたのでしょうか?

—【石川】直接的に「起業」ではないですが、もっと⼈々の⼒になりたいと思い始めるきっかけとなった出来事があったのは、34歳の時です。ドン・ミゲルルイス著作の「四つの約束」という本に出会って、⼤きな気付きを得ることができました。⼤袈裟ではなく、私の⼈⽣を180度ひっくり返してくれました。

「四つの約束」には、「⼈間の思い込み」について書かれています。私たち⼈間は「思い込みが強いこと」「その思い込みを事実と認識すること」、そして「⼈間は⾃分の世界の中でしかものを⾒ていないこと」「ある⼈が発した⾔葉はその⼈の中の出来事でしかなく、他⼈の世界や価値観には影響を与えないこと」という考え⽅です。

それまでの私は、⼈の⽬を気にし、⼈にどう思われるかばかり考えていました。誰かの評価に、⼀喜⼀憂していました。でも、その⾔葉は私の価値には直接影響しないのだと。それを⾃分事としてどう受け⽌めるか次第だなと。悪い評価と思うから傷つくのであり、⾃分の改善ポイントだと思えばポジティブに受け⽌められる。そういうことなのだと。

さらに、「思い込み」についても、はっとさせられました。⼤学卒業後、普通に就職していた時代は、仕事での活躍やプライベートでの充実など、“世の中の⼀般的な幸せ”=“私の幸せ”と思い込んでいたのですが、それも⼩さいころから擦りこまれ、それに疑問を思うことが無く育ってきたなと気づかされました。⼀つ⼀つを⾃分⾃⾝で考えること、⾃分の価値観こそ⼤事なのだということ。幸せは外から与えられるものではなく、⾃分の価値観が⾃分の中に醸成され、それが満たされていくということこそ幸せなのではと、考えるようになりました。「⾃由に、⾃分らしく、楽しく⽣きたい」。⼈にどう思われようと、⼀回きりの⼈⽣を、⾃由に⾃分らしく⽣きたい。それが私のモットーになりました。数年前に『アナと雪の⼥王(原題:Frozen)』で「Let it go」という曲が流⾏りましたね。“ありのままでいたい”、まさにあれです(笑)

このように、思考⼀つで⼈は瞬時に幸せになれるという体験をしたことで、私は⼈⽣が⼤きく変わりましたが、意外と私と同じように古い価値観や鎖に囚われて不⾃由を感じている⼈がけっこう多いようです。“もしかすると、私のこれまでの苦い経験や気付きを⼈のために役⽴てることができるかもしれない”そんな⾵に思うようになりました。

—【松嶋】⾃分の常識にとらわれて、なかなかありのままの姿や本当に求めているものや幸せの感じ⽅を忘れてしまいますよね。その⽯川さんの気付きから実際に起業を決意されたのはいつ頃でしょうか。

—【石川】起業を決意したのは、2019年の春頃です。私は働きながらMBAに通っていたのですが、「パワーと影響⼒」というクラスで、講師の「天命に関する解釈」を伺った時ですね。講師⽈く「天命とは、利⼰と利他が交わるところ」とのこと。その⾔葉を聞いて、雷に打たれた気がしました。これまで天命とは、⼈のために尽くすこと(利他)かなと思っていたのですが、⾃分のため(利⼰)でもいいのだと気付かされました。そして、私にとっての天命とはなんだろうと考えたときに閃いたのが、今⽇これまでお話してきたプロダクトをカタチにし、⼀⼈でも多くの⼈がより⾃由に⾃分らしく⼈⽣を楽しみ、笑顔に溢れた毎⽇を過ごせるようにお⼿伝いをすることでした。

プロダクトを世に⽣み出すことによって、⼀⼈でも性暴⼒という悲しい⽬に遭う⼈を減らすこと、より楽しく毎⽇を送れる⼈を増やすこと、これが私にとっての利他です。そして利⼰は、⾃分が過去に経験した性暴⼒被害を捉え直して、昇華させることです。本当は、消し去りたい過去ですが、過去は変えられません。でも捉え⽅は変えられます。その経験があったからこそ、私はこの20年間、あの時どうすればよかったのか、また何かあったらどうすればいいのかを、ずっと考えてきました。あの経験をした私だからこそこのアイデアを思いつけたし、それをカタチにできれば、多くの⼈のためにもなり、それで過去の⾃分も救えると思ったのです。

—【松嶋】なるほど。ご⾃⾝の経験や気付きが今の会社のビジョンにもつながっているのですね。起業される前と後では、⽇々感じることが違いますか?

—【石川】全然違いますね。毎⽇⽣きている実感があります。未来の確実性はないので、⽣活していくという⾯での不安はあります。ものすごく。不安に押しつぶされそうになる時も正直あります。でも、⾃分にできることで世界に価値を提供することが、私の⽣きる⽬的の⼀つなので、今、⽣きている実感はとてもあります。

—【松嶋】今、やりたいことを本気でできているからこそ、⽣きている感を感じられるのですね。仮に成功してお⾦がたくさん⼊ってきたとしても、それが⾃分の本気じゃなければ、⽣きている感は感じられないですよね。

—【石川】そうですね。何をもって成功とするかだと思いますが、私は⼀⼈でも誰かを笑顔にできれば私の中では成功です。報酬は、世の中に価値を提供できたことの対価だと思っているので、より多くの⼈をハッピーにできれば⼊ってくるものだと思っています。

そして、私はその対価をまた次に繋げていきたいと思っています。これまでご⽀援いただいた投資家の⽅々のように、今度は私がチャンスを求めている⼈に恩をつないでいきたいです。今はサポートしていただいている⽴場ですけど、サポートできる⽴場になりたいですし、サポートした⼈たちが⽣きる⽬的を達成されて、その⼈たちが次の⼈に繋いでいく。そういう恩の循環の⼀つのパスになることが、⼈⽣の⼤きな⽬標でもあります。

—【松嶋】既にお話しいただいたところもありますが、個⼈としての⽯川さんは、今後どんな⼈間になりたいと考えていらっしゃいますか?

—【石川】幸運なことに、今の私にはこんな⼈になりたい!という明確な⽬標があります。久能祐⼦先⽣という⽅です。こうして今私が⾃由に⾃分らしく⼈⽣を送れているのは、先ほどお話しした1冊の本と、ロールモデルとなる久能先⽣との出会いです。久能先⽣は、本当に素晴らしい⽅で⼼から尊敬しています。ビジネスの⾯でも⽇本とアメリカの両国で創薬事業をスタートさせ2つの新薬を世に出され、病に苦しむ多くの⽅々を救ってきました。その後はS&R Foundationを作り、アーティストや起業家をご⽀援されています。そのS&R Foundationの⼀部⾨に私がアメリカに居た当時働いていたIIGR社があり、そこで久能先⽣と出会いました。

久能先⽣は、実現されてきたことが素晴らしいのはもちろん、佇まい、所作に⾄るまで、本当にエレガントで⼈として素敵なのです。「⾃分がここまで成功できたのは⾊々な⽅のサポートがあったから」といつも謙虚に感謝されていて、次世代の⼈たちを⽀援することで恩返しをしていらっしゃるのです。私はそんな久能先⽣を明確な⽬標像として追いかけています。

迷っても⼤丈夫。いつか点が繋がって、扉が開く。

—【松嶋】最後に、読者の⽅に向けて、ビジネスパーソンの⽣き⽅としてお伝えいただけることがあれば、お話いただきたいです。

—【石川】そうですね、2つほど。ひとつは「迷い鰹」。戻り鰹は有名ですが、希少ですが「迷い鰹」というものもあるらしいのです。⼤海の中で迷ってしまって、荒波にもまれて、⾝が⼤きく、引き締まり、とても美味しいらしいです。若いうちからやりたいことが明確でそれに向かって努⼒されている⽅は素晴らしいと思いますが、私は何を⽬指せばよいか定まらず、その場その場で迷い考え、回り道をしてきました。でもこれってまさに「迷い鰹」だなと、なんなら「むしろ私は迷い鰹になろう!」と思ったのです。迷った分だけ強くたくましくなれるならば、迷うことはよいことだと。読者の⽅で、⾃分の⽣き⽅に迷っている⽅がいらっしゃれば、私はむしろどんどん迷って、試⾏錯誤してもいいのではと伝えたいです。 「私は迷い鰹だ、だから美味しくなるのだ」とそう⾃分に⾔い聞かせています。

もう⼀つは「チャンスの扉」です。「チャンスの扉」とは、こちら側には取っ⼿がなく、向こう側から開けてもらうしかなく、さらに待っているだけでは扉は開かず、こちら側の準備が整った時に開くのだ、という話を聞きました。私の場合は、いろいろ迷い、⾃分の道が⾒え始め、努⼒をして⾃分のレベルが上がり、最後に「覚悟を決めた」時に扉が開いた気がします。 恐らく「こちら側の準備が整った時」の条件とは、⼈によって違うのだと思います。それぞれの「チャンスの扉」が開く条件探しに向けて、あれこれ悩み、試⾏錯誤してみるのも良いのではと思います。これは1つ⽬の話にも繋がりますね。

令和の⻁CHANNELは、まさにこの「チャンスの扉」でした。「スマートお守り」のプロダクト化には資⾦が必要で、VCを対象に資⾦調達活動を⾏っていましたが、なかなか厳しい状況でした。VCとしての投資にはプロト品が必要だと⾔われたのですが、そのプロト品の開発に資⾦が必要だったからです。 そんな中、令和の⻁CHANNELの出演機会をいただきました。でも、実は出演するかどうか最後まで葛藤がありました。⼈前にでること、そしてNothing(出資を受けられない)になったら恥ずかしいという気持ちが結構あったのです。最終的には、「⾃分が気にしているほど、⼈は他⼈のことを気にしていない。Nothingになっても⾃分が気にしなければいい」、⻁⽳に⼊らずんば⻁⼦を得ず(⻁だけに 笑)の精神で、出演の「覚悟」を決めました。

そうしたら、停滞していた世界が⼀気に動き出しました。プロトタイプ制作の話も、融資の話も進み、何より令和の⻁CHANNELでオールを勝ち取ることができました。そして⻁の皆様のみならず、それまでご相談させていただいていたエンジェル投資家の⽅々からも出資をいただけることになりました。さらに、このように取材をいただいたり、番組の視聴者からもメッセージをいただいたり、私たちの活動に⼒を貸して下さる仲間も増えました。プロモーションの⾯でも、私⽴学校や塾とのネットワークがある会社様と代理店契約を結び、⼀緒にプロモーション活動を⾏っていただけることになりました。それ以外にも、本当に様々な形で「スマートお守り」の輪が広がりました。⼼から感謝しています。まさに、私にとっての「チャンスの扉」が開いたのは、あの「覚悟を決めた」時だったと思います。

—【松嶋】それも迷った経験があったからこそ、覚悟を決められる状態になったのでしょうね。迷って泳いでいること⾃体にもすごく意味があるのでしょうね。

—【石川】そうですね。今は無意味に思えたり、やりたくない仕事をやって、これが何に繋がるのだろうと思うことがあったりするかもしれません。でも、その答えはその時に⾒つからなくても、最終的に点と点が線で繋がることも多いです。さらに、いろいろな出来事もポジティブに受け⽌めれば、意味のあるものにできる。究極的には、意味のない出来事などないと思っています。⼼配する必要はありません。⼤切なことは、今を精⼀杯⽣きること。⾃分を信じて、⼼の声に⽿を傾け、ハートに正直に⽣きることだと思っています。

—【松嶋】それがある程度溜まってくると、扉が向こうから開くので、あとは⼊っていけばいいのですね。

—【石川】そうです。そのときに恐れないことですね。もう扉が開いたら、エイヤーって⼊っていくことをお勧めします。私の場合は、保⾝を取っているときはまだ不⼗分。不退転の気持ちで「覚悟を決める」ことが、私のチャンスの扉が開くきっかけなのだと。 たぶん⼈によって“きっかけ”が違うと思いますので、迷いながらそれを探して欲しいです。


【撮影協力(場所提供)】フランクアート株式会社様 /【写真=MIWAKATOH】
Company
企業 株式会社grigry
URL https://www.grigry.com/



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