俳優業とアートスタートアップのCEO。二つのキャリアの先に見据える世界とは?

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氏名 坂東工
肩書 株式会社MORIYA 代表取締役 俳優 兼 アーティスト
出生 1977年
略歴 ハリウッド映画『硫黄島からの手紙』に主要キャストとして出演、『バチェラー・ジャパン』の司会、NHK大河ドラマの衣装デザイン、レザー・アーティスト、画家などとしても活動中。

バチェラー・ジャパンの司会者として知られる坂東工(ばんどうたくみ)さん。実はアートのスタートアップ企業のCEOというもう一つの顔を持っています。今、新規事業としてiiwii(イーウィー)という新たなアートのプラットフォームを満を持してこの2019年6月にスタートされました。俳優として多忙を極める坂東さんが、その中でも人生を賭して成し遂げたいアートへの思いや、パラレルキャリアの在り方について語って頂きました。

—【聞き手:渡辺、以下:わ】坂東さん、はじめまして!それにしてもすごい作品の数ですね(今回の取材は坂東さんのご自宅でさせて頂いております)

【話し手:坂東工(敬称略)、以下:ば】ええ、今ちょうどiiwiiのオープンに合わせてNYで行う展覧会用の作品を作っているところで。僕以外の作品も続々集まってきてるので、ほんと家中が作品だらけになっています。

オンライン美術館iiwiiの全貌とは?

わ)それでは早速お話に出たiiwiiについてお話を聞かせてください。

ば)はい。iiwiiは、It is what it isの略で、英語のスラングで「しょうがない」とか「なるようになる」とかの意味で、作品を作り終わった後で、これはこういう風になりたかったのか、と感じたときに浮かんだネーミングです。iiwiiは、いわばオンライン上の美術館。そこに来れば、他では出会えないような素晴らしいアーティストの作品に出会える場であるとともに、アーティストがその場を通じてもっと適切なキャリアを作っていくことができるような場にしたいと思っています。

わ)なるほど。素晴らしい試みですね!坂東さんからみて、今の日本のアートシーンの問題点はなんだと思いますか?

ば)まず問題なのが、日本のアート業界の閉鎖性ですね。例えばアーティストにとって自由に表現できる場が著しく制限されているという状況は世界と比較してもあると思います。例えば、公募団体のような権威化された団体が日本では力を持っており、それが表現を自由さを制限してるようにも感じます。また、既存のギャラリーは場所代や販売時のコミッションが2重に加算され、アーティストに還元されるお金が著しく制限されてもいます。そういった状況の結果、アートが作る側、見る側両方に取って単なる趣味の世界の中にあり、日本の多くのアーティストはアートだけで生活を維持していくことが難しい状況になっているという印象です。

わ)坂東さんのそもそものアートの出会いはなんだったのでしょうか?

ば)それがかなり不思議な偶然の縁だったのですが、中目黒にあったジオデシックというギャラリーにフラっと立ち寄った時に、ギャラリーの方に急に声をかけていただいたんですよ。ちょうどその時自分で作ったレザーの小物を持っていたんですが、その小物がギャラリーの方がどうやら気になったようで、声かけていただいんだんですよね。

「うちで個展しませんか?」

といきなり笑。で、「いいですよー」といったら、なんかトントン拍子で個展も決まっちゃいまして。そしたら、そこの企画している西武渋谷さんの美術スペースでも販売がされて、それはかなり売れたんですよ。そしたら、その期間始まってすぐに、東北大震災が来て。なので、作品は売れたんだけど、お客さんが全然来てない、っていうのが僕の個展デビューの体験だったんですよ。その時感じたのが「作品は売れてよかったけど、お客さんの顔が全然見えないのは、なんか寂しい」ということだったんですよね。 やはり作家にとって、実際に作品を買ってもらった人との触れ合いの中で自分も刺激を受ける部分があるんじゃないかなと。それが、iiwiiの原体験になっている部分ですね。

わ)iiwiiの具体的なサービスの内容はどういうものですか?

ば)iiwiiの特徴は主には次の4つです。

・私自身がキュレーションしたアーティストのみが登録されていること
・ブロックチェーン技術を導入して、アーティストに継続的に金銭が還元される仕組みが導入されていること
・作品を3D/AR技術を駆使して、実際の部屋の中においてみることができること
・アーティスト単位ではなく、作品単位で管理されるマーケットプレイスであること

まず、だれでも参加できるわけではなくキュレーションを入れているのは、作品の質を担保したいのと、サービスのユーザビリティーを考えた結果ですね。通常、Webで作品を見たりする場合、作家名などで検索するインターフェースがあるのですが、今回はそういった機能はあえて入れませんでした。作品に出会う体験をもっと違うものにしたいという意図があったので。なので、作家が無尽蔵に増えすぎると、こういう体験を作りにくいというのもあり、キュレーションした作家だけにしているのもあります。

日本のアート界の閉鎖性を打破し、全世界に向けて人とアートを結ぶコネクションを創作する」この志のもとでiiwiiを立ち上げました。 現状のアートマーケットでは、有名なアーティストやギャラリーの業界的な影響力や、大物アートコレクターが買ったといった話題性などで価値が決まっていくことが多いと思いますが、それとは別の既得権に縛られない軸と基盤を作ることが必要です。

これを実現させるために適している技術が”ブロックチェーン”でした。 ブロックチェーン技術では、二次利用や再販時の取引金額からもアーティストに 継続的に金銭が還元される仕組みを導入して行こうと思っています。iiwii のシステムでは、ブロックチェーンの技術を活用することで ・過去の取引履歴を表示
  ・価格の推移を表示
  ・現在所有しているオーナーの照会
  ・顧客向けのクローズドオークション
  ・投資家がアートに投資をできるシステム
が実現します。

これによって、作品の真性・正当な価値の証明が可能になり、アーティストにも購入者にもメリットを生み出します。例えば、 作品の譲渡や転売、2次オークションなどで作品が次のオー ナーの手に渡る際にも、iiwiiを経由すればそのシステムによりトランザクションを追加して管理することができるようになります。これにより、その作品には公正かつ安全な情報の蓄積がなされ、作品の価値や由来が保証されるため、作品自体の真性が担保されることとなり結果として正当な価値も証明されることになります。

つまり、購入者の立場では、無断で複製されたものや、不当な価格での取引といった好ましくない状況を回避して購入で きることになり、アーティストの立場では、2次流通が発生するたびに iiwii が価格の遷移と金銭取引のトランザクションを管理す ることができるため、その売上の一部を正当にアー ティストへ還元されることも可能になるという利点があります。

そして、アーティスト単位ではなく作品単位というのは、アーティストの活動を制限する専属契約的なものは入れたくないという意図からです。従来のコマーシャルギャラリーでの契約では、アーティストを専属契約してそこのギャラリーを通してのみ作品を発表できるようにするものが多かったのですが、これには弊害もあると思っています。iiwiiとしては、専属契約をしているギャラリーと同様のレベルでは作家に対して様々なサポートをしていきたいと思っているので、そこへの投資を回収するための方法として、作品単位では専属契約になっているマーケットプレイスなのです。もちろん、アーティストが望めば作家としての専属契約も可能ではあるのですが。 iiwiiでは作品の最初の販売時に手数料をいただくモデルです。そして、iiwiiを通じてセカンダリーでも販売された際にはiiwiiとアーティストの双方にも手数料が入るようになっているため、作品単位でも長期的に投資が回収される仕組みになっています。

iiwiiに参加する天才アーティスト達

わ)iiwiiではどういうアーティストが参加していますか?

ば)初期は10人からスタートしています。もともと自分が知っているアーティストもいるのですが、今回新たに参加してくれることになったアーティストもいます。 例えば、こちらの作品を作っているのは、人形作家の奥田拓郎さんです。彼は、業界トップレベルの制作会社で働いていた凄腕のWebクリエイターでもあり、iiwiiのWEBの制作もお願いしています。実は彼のドールとAhn Sinjaeのポートレートをコラボレーションするところからiiwiiは始まったんです。彼のドールの魔力とSinjaeの絵の突き刺さるような眼差しが合わさったらどうなるかを、私自身が見たかったのです。それがあれよあれよと仲間が集まってきた感じですね。彼もウェブクリエーターとしてだけでなく、アーティストとしてやっていきたい気持ちがありましたので、今回社員として、そして初めての専属アーティストとして迎えることになりました。

ペインターのkhayah(カヤ)さんの作品とかはほんとヤバイ感じです。以前、海外で展示をした際も即完売した作品なんですが、なんか作品に狂気が溢れてるんですよね笑。彼女はSNSで見つけてコンタクトをとったんですが、ほんとまだまだ世の中には発掘されていない天才がいるなーと感じました。彼女の絵が届いて皆で見たのですが、みんなコメントができず”黙る”と言う最高のコメントでした(笑)

他にも、骨の造形に美を見出した写真家や、世界でも屈指の技術とセンスを持ったアクリル作家、色々なものをバラバラにしないと気が済まないジュエリーアーティストなど、本当にクレイジーな人達が集まってくれました。

iiwiiのNYでのデビュー展覧会の詳細

わ)今回サービスリリース後の7月には、参加アーティストによるNYによる合同展を企画しているとのことですが、NYの展覧会の詳細について教えてください。

ば)7月25日から28日の4日間、NYの最近のアートシーンの中心になってきているトライベッカにあるOneArtSpaceというギャラリーで展示を行います。このギャラリーは、キングコングの西野さんが絵本の「えんとつ町のブペル」の個展やった場所でして、最高の条件で借りることができました。展示では、全10アーティストの作品やプロダクトが展示されるほかライブパフォーマンスなどもやりたいと思っています。 NYは僕にとってホームとも言える場所。20代の頃にNYで俳優を志し、NYでいろんなアーティストと一緒にパフォーマンスなどを行ってきました。そんなNYはやはり様々なグルーブが入り混じり、新たな表現が日々生まれていってる場所な感じがします。そんな場所にiiwiiのアーティストたちを披露した時、どんな反応があるのか今から楽しみな感じがしています。 NYで達成したいと思っているのは次の5つのことですね。すでに取材の申し込みもきているので、きっとすごいことがおこる期待感しかありませんね笑

俳優業とCEOとしての2つの顔

わ)ありがとうございます。今ちょうどiiwiiの立ち上げとNYの展覧会の準備でかなり忙しいとは思うのですが、俳優業とスタートアップのCEOってやっていけるんでしょうか笑?まさに今注目されているパラレルキャリアだと思うのですが、忙しさ的に死にません笑?

ば)そうですね(笑)今までもパラレルキャリアというのはずっとやってきたことなんですよね。先日まで3ヶ月くらいの長い撮影をしていましたが、もちろん撮影も100%の状態で臨み、そこからは頭を切り替えてiiwiiの立ち上げ作業をしたり、ウェブの内容を指示したり、また、僕自身も作品を作っているのでそのマインドに入れ替えたと、一人何役もやってる感じです。。以前はこうしたマルチタスクがうまくできない時もありましたが、パンクすることがなく撮影を終了したり、ローンチできたのは、今は仲間がいるということが大きいと思います。全て一人で抱えてやるよりも、仲間に頼るということができるようになったのが大きいです。睡眠時間は…今は言ってられないですね(笑)

わ)それは、すごいですね。そのなかでも俳優か起業家どちらかに絞ろうって感じはないんでしょうか?

ば)そうですね。僕はいつも「あなたは何者?」という質問を受けるのですが、正直にいうと自分でもわかりません(笑)。ただ表現手段が変わるだけで、僕自身は一貫して今思うこと、感ることを表現しているだけだと思っています。俳優業をしてるからこそ、このスタートアップもやれている部分もありますし、また起業したからこそ俳優としてのキャリアにも流し込める経験や厚みが出て行くのだと思っています。何事も体験主義なのです。 アートのビジネスは、ビジネスが急激に成長するというものではないため、じっくり丁寧に作っていく必要があるものです。なので、事業を急拡大するようなやり方ではやれない部分があるんですよね。俳優、アーティスト、起業家として活動して行く中で、金銭面でもバランスを保ちながら大きな渦を作っていけるように心がけています。

わ)iiwiiはそういう点ではかなり長期的なビジネスになっていきそうですね。iiwiiの中長期的な展望はどう考えてらっしゃいますか?

ば)まず短期的には、NYの展覧会終了後にアーティストを20名まで増やし、年内には日本以外のアーティストも含めて30名くらいを目標にしたいと思っています。iiwiiで他にやってみたいこととしては、アーティスト同士のコラボレーションをどんどん増やしていきたいですね。また、ビジネスシーンにもアートを提案して行く活動も行なっていきます。 例えば、アーティストのアイデアを取り入れた家具などのプロダクトを作っていったり、空間そのものを作って滞在できるようにしたりとか、アーティスト個人ではできないようなプロジェクトをできるプラットフォームにしていきたいと思っています。

わ)今回、NYの展覧会の資金をCampfireのクラウドファンディングで集めていますがクラウドファンディングの詳細を教えてください。

ば)Campfireのクラウドファンディングは、2019年7月24日までの間開催しております。今回は、展覧会の場所代や作品の輸送費、展示の設営費などに当てる予定です。僕がいた頃と比較すると、物価もだいぶ上がってしまい場所代もかなり高くなってしまってますね。滞在中は、2週間ベーグルで過ごす予定です笑。

わ)坂東さんのオススメのリターンはありますか?

ば)今回iiwiiをはじめ、参加アーティストのことを知っていただくために様々なリターンを用意したのですが、KhayahさんやHideyuki Katoの原画はかなり貴重なものになります。高いと感じるかもしれませんが、その価値以上のものは保証できますね。グッズもここでしか手に入らないものばかりですので、支援というより、iiwiiや作家活動に参加するお気持ちで楽しんでいただければと思います。

わ)素晴らしい、リターンですね!現時点でもクラウドファンディングで大分集まってきてるようで、これからも楽しみですね!本日は、インタビューありがとうございました。



“坂東工がアートに変革を起こす美術館“iiwii”を立上げ!NYで初展示を開催!”


【実施中のクラウドファンディング】https://camp-fire.jp/projects/view/156674



Company
企業 株式会社MORIYA
URL https://moriya-art.com/
サービスサイトURL https://iiwii.art



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