メルカリへの3億円投資を成功させたXTech Ventures手嶋浩己が明かす、スタートアップの成否を分ける“アートとサイエンス”
Interviewee
XTech Ventures 代表パートナー
手嶋浩己
Hiroyuki Teshima
1976年生まれ。1999年一橋大学商学部卒業後、博報堂に入社し、戦略プランナーとして6年間勤務。2006年インタースパイア(現ユナイテッド)入社、取締役に就任。その後、2度の経営統合を行い、2012年ユナイテッド取締役に就任、新規事業立ち上げや創業期メルカリへの投資実行等を担当。2018年同社を退任した後、Gunosy社外取締役を経て、LayerX(レイヤーX)取締役に就任(現任)。平行してXTech Venturesを創業し、代表パートナーに就任(現任)。
メルカリやベースフードをはじめ、数々の有力なスタートアップ企業を初期から支えてきたXTech Ventures・手嶋浩己氏。
博報堂でキャリアを積み、自らも事業家として会社の上場を経験。さらに、メルカリの創業期に当時所属していた会社から3億円を投資し、数百億円規模の大きいリターンを創出した伝説的な実績を持ちます。
本稿では、なぜ巨額のリスクを伴う投資の世界で勝ち続けられるのか。市場をどう見極め、どのように投資判断を下すのか。事業家と投資家、両面の視点を兼ね備える手嶋氏の思考に迫ります。
日本を代表するVCの「視点」―ヒットするビジネスとしないビジネス
—【聞き手:岡崎美玖、以下:岡崎】手嶋さんといえば上場企業におけるグループ経営や新規事業立ち上げ、数々のスタートアップを成功に導いてこられたことでも名高いですが、手嶋さんが代表を務めるXTech Venturesの事業について、改めてご紹介いただけますでしょうか。
—【話し手:手嶋浩己氏、以下:手嶋】私たちはベンチャー企業への投資を主軸とした、いわゆるベンチャーキャピタル(VC)事業を行っています。
多様な会社や金融機関から資金をお預かりしてファンドをつくり、将来性のあるスタートアップの株式を買わせていただきます。そして、その会社が成長した後に株式を売却し、得られた利益を出資者の方々に分配して一部を私たちの成功報酬としていただきます。その成長の過程で、投資先の企業価値向上のためにさまざまな貢献をしていく…といった仕事です。
ー【岡崎】投資先を拝見していると、次世代フリマサービス「株式会社ピックユー」など非常にユニークで幅広いと感じます。投資先を選定される上で、何か特定の基準や注力されている領域などはあるのでしょうか。
ー【手嶋】VCには、例えば「ドローンファンド」のように投資領域を特定の領域に絞って専門性を高めていく“専門特化ファンド”という形態があります。そうすることで専門知識が蓄積されますし、起業家から見ても「ドローンなら、あのVCだ」と認知されやすいメリットがあります。
それに対して、私たちはどちらかというと「自分たちが理解できる範囲であれば、何でもやります」というスタンスです。BtoC向けのビジネスにも多く投資している傾向はありますが、領域をあえて絞ってはいません。
ー【岡崎】「理解できる範囲」というのは、常に学習して広げていくイメージでしょうか。
ー【手嶋】そうですね。起業家の方から「こんなことをやろうと思っています」と提案を受けたときに「そんなビジネスがあるのか」と、そこから学習のきっかけをいただくことも非常に多いです。
ですが、基本的には常に自分たちも学習し続けなければ、起業家と対等な議論ができません。起業家の方は、自社の株をできるだけ高く評価してもらうために、ある種の営業トークを携えて私たちの元へやってきます。それは構造上当たり前のことで、全く悪いことだとは思いませんが、その営業トークを真に受けるのか、こちらも一定の知識を持って議論ができるのかで、結果は大きく変わってきます。
議論ができれば、セールスは受け止めつつも、こちらからも意見を返すことで、適切な合意点を見出せます。しかし、言いなりになってしまうとただイエスかノーかを判断するだけになってしまいますよね。そうならないためにも、学習は不可欠だと思っています。逆に、自分たちが全く分からず、ゼロから学ばなければならないような非常に専門的な領域の場合はお断りすることもあります。
ー【岡崎】これまで数多くの事業を見てこられた中で、ヒットしたビジネスとしなかったビジネスの違いはどこにあると感じられますか?
ー【手嶋】結局は「顧客に受け入れられたか」ということだと思うのですが、要因は大きく2つあると考えています。1つは、極めて現実的な話ですが「顧客ニーズがあったかどうか」。もう1つは、顧客ニーズがある程度あったと仮定した上での「経営の仕方や事業の運営の仕方」です。
前者に関しては、正直なところ“やってみないと分からない”というのが本音です。ですが、同じプロダクトでも出し方や見せ方が少し悪いだけで、顧客に刺さっていないケースはあり得ます。そういった繊細な部分に気づけるかどうかが重要です。
後者に関しては、完全に起業家の資質や性格に左右されると感じています。事業を大きくしようと思うと一人でできることには限界があります。必要な時に必要な人を巻き込めるか、頼んででもチームに引き入れられるか、背中を見せて社内の士気を高められるか。そういった、ある種の人間的魅力や人望も含まれます。
ですので、前者の「顧客ニーズを捉える」というのはアートに近く、後者の「経営や運営の部分」は多少サイエンスの要素があると言えるかもしれません。もちろん、無理をしてその人らしくないことをやろうとしても続きませんが、時には今までの自分を豹変させなければならない局面もあります。

「この会社が潰れるのは惜しい」ベースフード投資の裏側
ー【岡崎】これまでの投資先で、特に印象深かった会社や代表の方はいらっしゃいますか?
ー【手嶋】例えば「ベースフード株式会社」です。私たちが投資したのは2019年ですが、当時彼らが作っていたのはパンではなく、麺だけでした。正直、何がテクノロジーなのかよく分からず、見方によってはテクノロジーをベースとしたスタートアップなのかどうかすら怪しい会社でした(笑)。社内で投資を検討する際も「現時点ではまだ完成度の低い麺を作っている会社ですよね。なぜ投資するのですか?」という議論になるわけです。
ー【岡崎】その状況で、なぜ投資を決断できたのでしょうか?
ー【手嶋】創業者の橋本舜さんがすごいなと感じていたんです。彼はDeNAの出身なのですが、当時のDeNAは優秀な人が多く集まってくるけれど、皆ハードワークでコンビニ弁当ばかり食べていて、よく風邪をひいていた…と。「これはおかしい」と感じた彼は「完全栄養食を作る」と決意したそうです。今でこそ「完全栄養食」という言葉がありますが、あの概念は彼が作ったようなものです。
彼は文系出身にもかかわらず、栄養学や化学を独学で研究し、自宅で粉の配合を試すところから始めて“麺”を作り、最初から「食品会社は麺の会社、パンの会社、お菓子の会社と縦割りで、なぜかそれを横串で展開する会社がない。そこを作れたら相当大きくなるはずだ」と語っていました。
ですが、資金調達には相当苦戦していて、私たちも一度は条件面で投資をお断りしているのです。
ー【岡崎】なんと!一度断ったにも関わらず、最終的に投資を決断した、と…!そこにはどのような想いがあったのでしょうか。
ー【手嶋】「この会社が潰れるのは惜しい」と強く思ったんです。彼がやろうとしていることの意義や、マーケットの可能性は感じていました。なので、一度お断りした際に「もし本当に困ったら、この条件であればやるから言ってくれ」と伝えておいたのです。そうしたら、本当に「このままだと資金がショートするのでお願いします」と連絡が来まして。
契約を進めている最中に、日清食品が類似市場に参入するというニュースも出てきて、一瞬「終わったか」と思いました(笑)。
ですが、私自身も素人ではないので大企業の参入はむしろ「マーケットが存在する」という証明になると考えました。マーケットさえあれば、競争のやりようはありますし、大企業がスタートアップに必ず勝つとは限りません。日清が参入すれば、大量の広告宣伝費を投下して市場が広がるだろう、と腹を括りました。結果的に、コロナ禍で彼らのビジネスは大きく伸び、販路も拡大していきました。そうしたストーリーも含めて、非常に思い出深い投資案件ですね。
ー【岡崎】それはまさに腹を括った瞬間ですね…!
ー【手嶋】自分が関わり始めると、もう文句は言えませんから。腹を決めるまでには時間がかかりましたし、自分の中で「この条件なら」という予防線を張っていた部分もあります。ですが、最終的には覚悟を決めた、という感じでした。
もちろん、投資して何もしなくても勝手に成長してくれるのが一番楽ではありますが(笑)、そんな案件ばかりではありませんから。起業家はその1万倍の勇気を振り絞ってやっているのだと思います。
ー【岡崎】VCとして経営相談を受けられることも多いかと思いますが、経営者の方々とはどのような関係性を築くことを意識されていますか?
ー【手嶋】VCという職業は「レピュテーション(評判)」が非常に重要なので「嫌われたくない」という圧力が常に働いています。その結果、起業家に対して何も言わなかったり「応援しています」としか言わない人ができあがりがちです。その方が楽ですからね。
しかし、私は「これは言っておいた方がいいな」と感じた時は、たとえ関係がこじれるリスクがあったとしても、伝えるべきだと考えています。究極、それで悪い評判が立つのなら、それは仕方がないと思っています。そうした厳しいことも言える関係を築くために、平常時からある程度の距離感を縮め、腹を割って話せる人間関係を構築することを意識しています。
ー【岡崎】そのような関係性は、具体的にどのようにして築いていくのでしょうか。
ー【手嶋】最初は「汗をかく」ことでしょうか。例えば、最初の段階で自分の信用を多少削ってでもその会社にとってプラスになることをしてあげる、といった小さな信頼の積み重ねが重要だと思います。
また、投資家が複数いる場合は「私が嫌われ役をやるのであなたは優しい役割でいてください」といった役割分担をすることもあります。リードインベスター(主幹投資家)になることが多いので、それは自分の仕事だと考えています。

キャリアの原点は「博報堂」。イベントを手掛けるために入社するも配属先はまさかの“内勤”
ー【岡崎】少し時間を遡らせていただき、手嶋さんのルーツについてもお伺いできればと思います。学生時代はどのように過ごされていたのですか?
ー【手嶋】振り返ると、かなり偏っていましたね(笑)。
高校生の頃、深夜番組で学生プロレスの中継をやっているのを見るのが好きでした。当時はまだ総合格闘技が確立されておらず、プロレスとの境界が曖昧な時代で、プロレスラーに憧れはあっても自分のような体の小さい人間はなれないなと思っていたのですが「学生でできるのか」と衝撃を受けて。学生プロレスがある大学に絞って受験したくらいです(笑)。
ー【岡崎】なんと、そこまでの熱量で…!それで一橋大学へ進学されるのですね。
ー【手嶋】ええ。一橋大学は学生プロレス界では有名だったので、受かった瞬間に入門しました。ただ、一橋の学生でプロレスをやるような人間は学年に1人か2人しかいなくて(笑)。他大学の学生も集まるインカレサークルで、4年間プロレスに没頭していました。
地方の村祭りに行き、トラックの荷台で試合をし、その村のヒーローになって帰ってくる…といった活動をずっとしていましたね。
ー【岡崎】その経験が、新卒で博報堂に入社された動機にも繋がっているのでしょうか。
ー【手嶋】就職活動を始めた当初は、特にやりたいこともなく銀行員にでもなるのかな、と漠然と考えていましたが、ある時、「イベントができるらしい」と広告代理店という業界を知りまして。
学生プロレスで、企画して、集客して、お客さんを楽しませて帰すという一連の流れをずっとやっていたので、イベントなら得意だと思って受けに行きました。自分の大学生活でやってきたことをひたすら話して内定を頂くことができたのですが、入社後に配属されたのはイベントとは全く関係のないマーケティング部門の内勤の仕事でした(笑)。
当時はインターネットも未発達で、情報を収集・整理することに価値があった時代です。働き始めて当時社内にあった図書館みたいなところに参考図書などを漁りに行くと、いわゆる「窓際族」と呼ばれる方がいて、その姿を目の当たりにして強烈に「こうだけは絶対になりたくない」と思いました。その人たちも最初からなりたくてなったわけでない、気づいたらその状態になっていることがありうる、ということに怖くなりました。なので、今の自分はとにかく目の前の仕事に一生懸命取り組もうと思ったのです。
一生懸命やると、面白いもので成果が出て社内でも評価されるようになりましたが、一方で数年経ってどこか代理店の仕事に飽きている自分がいました。クライアントのお金を預かり成果を出す仕事は楽しかったですが、もっと社会に直接的なインパクトを与えられるような、自分の事業として何かをやりたい、という気持ちが強くなっていきました。
ー【岡崎】そこからキャリアの転換を考え始められたのですね。
ー【手嶋】決定的なきっかけは、同じ部署の同僚だったエニグモの創業者たちが「俺、起業するんだ」と言って会社を辞めていったことです。それまで自分とは無関係だと思っていた起業という世界が地続きになった瞬間で、その後の話になりますが、身近な同僚が本当に上場まで成し遂げました。
同じ時期に、堀江貴文さんが近鉄バファローズの買収に名乗りを上げたりもしていました。私と3つくらいしか歳が変わらない人が、プロ野球球団を買おうとしているといった出来事が重なり「リスクはあるかもしれないけれど、自分もそっち側に行った方が人生は楽しいんじゃないかと」思い、博報堂を辞める決断をしました。

3億円が数百億円に。事業家から投資家へのキャリア転換
ー【岡崎】博報堂を退社された後、インタースパイア(後のユナイテッド)の創業に参画されます。
ー【手嶋】はい。当時、サイバーエージェントの副社長だった方が新しい会社を立ち上げるという話を聞き、創業メンバーとしてジョインしました。当時はまだ「スタートアップ」という言葉も一般的ではなく、人口も少なかったので、面白いというか変わった人たちが多く集まっていましたね。
ー【岡崎】そこから事業家としてご活躍されて会社も上場を果たし、手嶋さんのキャリアを語る上で欠かせないメルカリへの初期投資ですが、これはどのような経緯だったのでしょうか。
ー【手嶋】当時、友人だったメルカリ創業者である山田進太郎さんが世界一周から帰ってきて「フリマアプリを作りたい」と話していました。私は当時、投資家ではありませんでしたが、自分の会社(ユナイテッド)で新規事業としてスマートフォンアプリをいくつか立ち上げ、数千万ダウンロードされるものも出てきていた経験から、明らかに従来のオークションサイトはUI/UXが古く「スマホっぽくない」と感じていたんです。
例えば落札まで3日も待ったり、決済が面倒であったりするのは、LINEのようにリアルタイムなコミュニケーションが当たり前のスマホ時代にはそぐわない。もっと気軽に出品・購入できるフリマアプリの方が時代に合っているし、大勝ちする可能性があるなと思いながらも、この領域はネットワーク効果が強く働くので、勝てるのは一社だけだろう、とも思っていました。
そんな中、山田さんが本気でやると言うのであれば、勝ち筋はゼロではないかもしれない、と考えました。彼から資金調達の相談を受け、ユナイテッドとして3億円を出資し、20%弱の株式を取得する提案をしたんです。結果としてここ20年の日本のスタートアップ投資史上で、最も成功した投資案件の一つになりました。
ー【岡崎】3億円が、5年後には数百億円に…!会社にとっても手嶋さんご自身にとっても、とてつもないインパクトだったかと思います。ご自身が事業をさらに大きく展開するという選択肢もあったかと思いますが、最終的に会社を辞め、独立してVCを立ち上げる道を選ばれたのはなぜだったのでしょうか。
ー【手嶋】おっしゃる通り、会社には約数百億円の利益がもたらされ、会社の純資産が大きく増えるインパクトでした。最初は、会社の経営が全く変わるほどの資金をどう使おうかと真剣に考えました。大型のM&Aなども検討しましたし、それを自分が責任者としてやり遂げるには、また10年から15年の時間が必要になるだろう、と。そうなると自分も50歳を過ぎ、エネルギーも残っていないかもしれない。
一方で、もし今この大きい成果を出したタイミングで会社を辞めるなら、誰も文句は言わないだろう、とも思いました。結果も出したし、10年以上頑張ってきた。逆に、中途半端に新しいプロジェクトを始めてから辞めるのは、無責任で後ろ指をさされるだろうな、と考えて、ユナイテッドを辞めるという決断をしました。
ー【岡崎】その後のキャリアは、その時点では決めていなかったのですか?
ー【手嶋】具体的には決めていませんでした。ですが、自分のことは客観的に分析していました。事業家として、ゼロから小さい利益を生む事業を作ることはできますが、自己評価では事業家としては50点くらいだな、と思ったのです。山田進太郎さんのように企業文化や社会のルールそのものを変えていくようなスケールの事業はなかなか作り出すことは難しいなと思ったのです。
一方で、投資家としては、明らかに他者と差別化できる強みがあると感じていました。事業家としての経験があるからこそ、起業家の気持ちが分かるし、距離感の取り方も心得ている。こちらの方が自分には向いているかもしれないと考え、それまで片手間でやっていた投資を本業にしてみようと決意したのが、XTech Venturesの始まりです。
メルカリが上場して大きな話題になっていた時期であったこともあり、資金も集めやすく、多くの人が「手嶋がやるなら」と出資してくれました。

KEYPERSONの素顔に迫る20問
Q1.出身地は?
神奈川県小田原市です。
Q2.趣味は?
格闘技を観ることと、自分でブラジリアン柔術をやることです。観るのは高校生からですが、やるようになったのはここ3年くらいです。
Q3.特技は?
話を回すことです。博報堂時代や大学生の時に学生プロレスで実況をやらなくてはならず、訓練されました。
現在は培ったファシリテーション力を活かして、スタートアップ向けPodcast「スタートアップオフレコ対談」も発信しています。
Q4.カラオケの十八番は?
コロナ以降、全く行っていませんが…歌うとしたら、世代的にもMr.Childrenなどでしょうか。
Q5.よく見るYouTubeは?
色々見ますが、格闘家の「青木真也チャンネル」はよく見ます。あとは「ReHacQ」や、最近ですと東大卒無職の人がやっている「たむらかえ2」というチャンネルも見ます。
Q6.座右の銘は?
知っていることをやろう、ということで「知行合一」です。
Q7.幸せを感じる瞬間は?
家族で一番最後にお風呂に入って、10時頃に上がって「あと1時間で寝るぞ」という時です。
あとは、毎朝のルーティンでもある犬の散歩をしている時でしょうか。
Q8.今の仕事以外を選ぶとしたら?
建築家です。見るのも好きなので、面白そうだなと思います。
Q9.好きな漫画は?
最近Podcastで知って読んだのですが、同じ一橋大学出身の鳥トマト先生が描いた『東京最低最悪最高』が面白かったです。
Q10.好きなミュージシャンは?
80~90年代のハードロックが好きで、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどです。
Q11.今一番会いたい人は?
アメリカの格闘技団体UFCの代表、ダナ・ホワイトです。ゼロから今の3兆円企業を作り上げた手腕について聞いてみたいです。
Q12.どんな人と一緒に仕事をしたいですか?
前向きな人です。
Q13.社会人になって一番心に残っている言葉は?
博報堂時代で同じ部署の同僚だったエニグモ創業者たちが言った「起業する」でしょうか。
Q14.休日の過ごし方は?
毎週土曜日の朝はブラジリアン柔術の練習に行っています。あとは「UMITO」というシェア別荘を最近購入したので、月1回くらい行きはじめる予定です。
Q15.日本以外で好きな国は?
オランダです。これまでに2回行っていて、町並みが素敵なのと、文化も尖っているところも面白いですよね。
Q16.仕事の中で一番燃える瞬間は?
投資先の会社が急成長し始めた瞬間です。そこからどうアクセルを踏むかが非常に大事なので、興奮しますね。
Q17.息抜き方法は?
予定を詰め込みすぎないこと自体が息抜きになっています。
昔は予定を詰め込むタイプでしたが、予定を詰め込むことが目的になってしまうことに気付き、今は「気乗りしないことはやらない」と決めて敢えて余白を作るようにしています。
「誰もが楽しめる楽しいことなんてない」という確信を得てからは楽になりました。
Q18.好きなサービスやアプリは?
ABEMAとU-NEXTをよく使います。
Q19.学んでいることや学んでみたいことは?
やはり、生成AIです。色々なサービスに触れるようにしています。
Q20.最後に一言
起業しようと思った際にはぜひご連絡ください!

本質を捉える“要約力”の重要性と練習法
ー【岡崎】手嶋さんはPodcastなどでもファシリテーターとしてご活躍されていますが、言葉の選び方や表現が非常に巧みだと感じます。物事の本質を捉え、短い言葉で要約する能力はどのように身につけられたのですか?
ー【手嶋】もともと得意な方だったのかもしれませんが、強いて言うなら、博報堂時代に広告制作やコンセプトワークの仕事を2年ほど経験させられたのが大きかったです。本当はイベントがやりたかったので全く望んでいなかったのですが(笑)、そこでコピーライティングの訓練を受けて「言いたいことは、要はこういうことなんじゃないですか?」とひたすら考え、言語化する作業を繰り返しました。
自分でゼロから何かを思いつく天才肌ではありませんが、天才が思いついたアイデアの横で「それって、要はこういうことですよね?」と整理してあげる方が、自分には向いていたんです。これは、スタートアップのビジョン作りなどにも通じるスキルだと思います。
ー【岡崎】その要約力は、現代のビジネスパーソンにとっても非常に重要なスキルですね。
ー【手嶋】そう思います。その意味では、X(旧Twitter)は最高のトレーニングツールになりますよ。今アカウントに課金をすることで長文でのポストが可能になりましたが、敢えて言いたいことを140字以内でまとめる訓練をひたすら続けるのです。
長文が書ける人より、短く本質を突ける人の方が価値がある場面は多いです。面倒くさがり、という性格も影響しているかもしれません(笑)。

VC業界の課題と挑戦…起業家に伝えたいこと
ー【岡崎】今後の事業展望についてもお伺いしたいです。
ー【手嶋】VCという事業は、正直なところ、他社と大きく差別化するのは難しいビジネスです。現在、3号ファンドの組成を進めていますが、それなりの金額を集めてきているので「きちんと結果を出す」ことに集中しなければならないと感じています。
ー【岡崎】「結果」というのは、具体的にはどういったことでしょうか。
ー【手嶋】まずは、金融商品としてきちんとリターンを出すことです。これは日本だけでなく世界的な課題でもあるのですが「VCは本当にリターンを出せているのか?」という問題が指摘されています。VCは「このスタートアップは世界を変える」とロマンを語ってお金を集めますが、結果として、例えば米国の代表的な株価指数であるS&P500などに10年間投資していた方が儲かった、というのでは話になりません。より高いリスクを取っている以上、それを上回るリターンを出さなければ、事業として継続できませんから。
その最低限のラインは、我々も含め、業界全体で超えていかなければならないと考えています。VCはとても儲かっているというイメージがあるかもしれませんが、実際はそんなに簡単な仕事ではないのです。
ー【岡崎】VCとして、今注目している業界としてはズバリどの分野にあると考えていらっしゃいますか。
ー【手嶋】生成AIが世の中を一変させるテクノロジーであることは間違いありません。ですが、だからといって日本の特定のスタートアップに大きなチャンスがあるかというと、状況は非常に難しいです。生成AIを核とした事業は、プラットフォーマーである巨大IT企業が一瞬で機能を陳腐化させてしまうリスクがあるからです。
また、競争は完全にグローバルですよね。我々も議事録ツールは米国の会社のものを試していますし、世界中のユーザーが「世界で一番良いもの」を使おうとしています。日本でコーディングを自動化するAIサービスを今から始めたとしても恐らくもう遅い…そういった意味では、この領域でゼロから立ち上げるのは相当難易度が高いと感じています。
ー【岡崎】ありがとうございます。この記事を読んでいる起業家や、これから起業を目指す若手ビジネスパーソンに向けて、メッセージをいただけますでしょうか。
ー【手嶋】起業家にとって大事なのは、2つの能力です。1つ目は「雑でもいいから、身の丈を超えた目標を設定すること」で、2つ目は「一度設定した目標を実現するために、地道かつ緻密に方法を考えること」です。
多くの人がやってしまう間違いは、この逆です。目標設定を緻密なロジックで積み上げようとして、結果的に低い目標しか立てられず、その後の実行計画(ロードマップ)作りが雑になってしまうことが多いのです。
雑な目標設定には勇気がいります。「なぜできるのか」と聞かれても「やると決めたからやるんです」としか言えない時もあります。ですがそれでいいのです。勇気を持って目標を立てて、あとは日々の努力の中で、実現するための解像度を必死に上げていく。この2つが揃うことが非常に重要だと思っています。

ー【岡崎】では最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
ー【手嶋】今の日本で、事業に失敗して食いっぱぐれることは、よほどのことがない限りありません。つまり、何か新しい挑戦をすることのリスクはそれほど高くないのです。
人生の中で「これをやりたい」「やってみよう」と思えること自体が、非常に貴重なことだと思います。その情熱は、いつかなくなるかもしれませんし、挑戦に最適な旬の時期も過ぎてしまうかもしれません。
だからこそ、もし何かやりたいことがあるならばすぐにやってみた方がいいです。そして、やり始めたら、一定期間は脇目も振らずに集中して頑張り抜くことで結果に繋がるはずです。
【クレジット】
取材・構成・ライティング/岡崎美玖 撮影/村田征斗 企画/大芝義信
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メルカリへの3億円投資を成功させたXTech Ventures手嶋浩己が明かす、スタートアップの成否を分ける“アートとサイエンス”