「保険業界のエムスリー」へ成長フェーズに突入したSEIMEI社。津崎桂一が見つめる未来とは

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氏名 津崎桂一
肩書 SEIMEI株式会社 Founder & CEO
出生 1983年
開成中学・高校から東大法学部というエリートコースを進むも、大学受験後に「燃え尽き症候群」に。飲食事業やメディア事業で数多くの失敗を経験する一方で、保険営業パーソンとしては成功を収め、InsurTech Startup起業家 兼 現役MDRT・TOT会員として活躍。SEIMEI社では保険プラットフォーム「ソリシター君」を開発運営する。

「エムスリー保険版」へ。成長フェーズに突入したSEIMEI社で津崎桂一が描く未来とは

保険プラットフォーム「ソリシター君」は、18,000人の保険営業パーソンに利用されているサービスで、2022年にはついに保険会社1社目の導入が決定。現在も順調にユーザー数を増やしている。

「ソリシター君」を開発しているのは、津崎桂一氏が代表を務めるSEIMEI株式会社だ。同社は、向こう数年間の戦略に関して大きな決断をしたという。

THE KEYPERSONでは、4度目のインタビューとして、同社が下した決断の詳細とその理由、描く未来について伺った。

“投資家目線”、“攻めの思考”を身につけた2023年

—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】本日はTHE KEYPERSONで4度目のインタビューとなります。前回のインタビューである2021年12月時点と現在で、変わったところがあればお話いただけますか。

—【話し手:津崎氏、以下:津崎】一昨年は、JAFCOから3億円の投資を受けたことを発表したばかりでしたね。

2年前と比較して、保険代理店募集人ユーザーが9,000人ほどだったところから、現在は18,000人にまで増えています。数字の絶対値だけを見ると少ないと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、特定業界向けのサービスですので、ホリゾンタルサービスに例えるなら数十倍に換算してもいいかと思います。

また、保険会社の導入が始まったのは大きな違いですね。具体的には、2022年よりはなさく生命様、なないろ生命様、他1社(非公開)の3社に導入頂きました。各社即決で決めて下さいましたし、良好なお取引ができています。

—【松嶋】会社の規模としても大きくなったのではないですか。

—【津崎】そうですね。10名ほどだったメンバーが、私含めて23名にまで増えました。

JAFCOさんには引き続きサポート頂いています。とはいえ、経営への関与を受けることはありませんし、信頼頂いていると感じています。

—【松嶋】津崎さん自身の成長もあったのだろうなと感じました。

—【津崎】ありがとうございます。自覚できている成長としては、少しながら“投資家の目線”で物事を考えられるようになった点でしょうか。保険業界内での立ち位置を客観的に見られるようになったと思います。

以前は心のどこかで「導入してくれる保険会社が本当に現れるのだろうか」と不安な気持ちもありました。しかし、現在はそんな不安はなく、経営者として「限られたリソースを今は何に投資するべきか」といった判断をする際に、攻めの思考ができるようになりましたね。

「3年間基本機能無料」決断の裏側

—【松嶋】投資家の目線で話ができるようになった理由は、何だったのでしょうか。

—【津崎】何よりも保険会社に導入頂けたからだと思います。保険業界は典型的な村社会ですので、大手保険会社が導入したサービスには、皆が追随する傾向があります。最大手グループ保険会社に導入頂いたおかげで、他保険会社から「一度ご提案を聞きたいです」とご連絡頂くことが増えました。潮目が変わりましたね。

保険代理店と保険会社の双方がユーザーとなる当社サービスにおいて、これまでは保険代理店の声を聞くことしかできませんでしたが、今は保険会社にも確かなヒアリングができています。

—【松嶋】保険会社ユーザーの声を聞くことで、新たな発見もあったのでは。

—【津崎】そうですね。というのも、私はグループの別会社で保険代理店も経営していますので、保険代理店のニーズは当事者として理解できます。しかし、保険会社を経営したことはなく、保険会社ユーザーの皆様のニーズを理解できているのかというと、2年前は全くできていませんでした。

現在は毎週必ずどこかしらの保険会社に対して私自身がユーザーヒアリングを行っていて、改めて保険業界への理解が深まっています。ヒアリング結果を元に意思決定したのが、保険会社に対しても「3年間基本機能無償提供」する施策です。

—【松嶋】それは思いきった決定ですね。

—【津崎】ソリシター君は、業務改善系の各種機能を保険代理店ユーザーに無償で提供し、保険会社ユーザーから広告料等を頂くビジネスモデルです。

しかし、保険会社からすると投資効果がよくわからないものを導入するのは難しいですよね。また、保険会社の予算組タイミングは年に1回しかありません。「今年の予算では厳しいから来年度の導入を検討しよう」と思って頂けたとしても、確実に予算稟議を通せる実証期間を設ける必要があり、長期間無償の機能もあった方が良いという考えに至りました。

—【松嶋】売上がない状態が最低3年は続くということでしょうか?

基本機能に関してはそうですね。しかし、追加機能でのマネタイズは色々と考えています。保険産業にはビジネス機会が無数にあると思っています。

—【松嶋】お話を聞いていると、会社の今後について2年前よりも具体的なビジョンが見えるようになっていて、かつ津崎さん自身のプロダクトに対する考えにも変化があったのではないかと思いました。

—【津崎】保険会社へのヒアリングを経て、思考がアップデートされたという感覚はありますね。開発するべき機能やそれに伴う事業計画の精度は上がりました。

プロダクトに関しても、以前までは保険代理店目線での発想が多かったように思います。保険会社に対しては「効果的に広告が打てますよ」という曖昧なメッセージしか発信できていませんでした。

保険会社が抱える課題も数多く見えてきた今は、ソリシター君を保険業務プロセス全てを包括するプラットフォームにしたいと考えています。

巨大保険マーケットにおいて、目指すは「wefox日本版」&「エムスリー保険版」

—【松嶋】前回は「保険業界のエムスリー」を目指すとお話しされていましたね。今もその考えは変わらないのでしょうか。

—【津崎】大きくは変わっていませんが、別の視点も意識するようになりました。具体的には、ドイツのwefoxという会社をベンチマークとしています。2015年にドイツで創業して以来、驚異的なスピードで成長していて、InsurTechとしては世界一の企業評価額45億ドルを記録しているユニコーン企業です。

ドイツには、InsurTechスタートアップ企業が150社ほど存在しています。ちなみに、日本の保険マーケット規模は世界で3位、ドイツは7位です。wefoxはフランスやイタリアなどでもビジネスを展開していますので、それらを合算すると日本よりも対象の保険市場規模は大きいでしょう。しかし、日本のマーケットよりも小さい国から生まれたInsurTech企業がそこまで急成長していることを考えると、日本のInsurTechスタートアップには非常に大きな可能性があると思いませんか?

—【松嶋】確かに。日本では突出して成功しているInsurTech企業はまだ出てきていませんしね。

—【津崎】はい、だからこそ、チャンスは今だと考えています。

保険会社⇄保険代理店間は、構造が複雑で課題も多いです。例えば保険会社と保険代理店とのコミュニケーションツールですね。「LINEワークスのようなビジネスチャットツールを使えば良いのでは?」と思うかもしれませんが、そう簡単にはいきません。

保険会社が自社と代理店契約している保険代理店とやり取りするためのチャットツールを開発することは簡単です。しかし、乗合保険代理店からすると、各保険会社とのやり取りでそれぞれ異なるチャットツールを使用するのは大きな負担となります。また、保険会社同士は競合関係にあり、保険会社Aが保険会社Bも利用できるチャットツールを作ることはありません。

このような“業界の歪み”にこそ、ビジネスチャンスがあります。私達は保険代理店と保険会社の双方をユーザーに据えていて、かつ保険業界に対する深い知見があります。この例であれば、ソリシター君にチャット機能を追加するだけで、両者の非効率を改善できるはずです。

—【松嶋】保険会社からすると、広告を最適化するだけでなく、業務改善系SaaSとしても利用できるようになると。

—【津崎】はい。他にもいくつも追加機能を予定しています。先述したような「保険業務プロセスの全てを包括するプラットフォーム」になるためには、これらの機能を開発し、そしてユーザーに浸透させる必要があります。

—【松嶋】3年の間に開発することが重要なんですね。

—【津崎】保険会社に対して3年間基本機能を無償提供するにあたっては二つの理由があります。1点は、単純に保険会社の導入ハードルが下がるということ。無償であれば予算稟議も不要ですからね。

もう1点は、保険会社ソリシターに、保険代理店に対してソリシター君を拡販頂く営業協力体制の構築です。保険代理店ユーザーの開拓については、当社では最近やっと1人目の営業職として羽根川を雇ったくらいで、全く注力していませんでした。販管費をかけずとも保険代理店ユーザー数は少しずつ増えていましたからね。ちなみに、現在は364社の保険代理店に導入頂いています。

ですが、法人生命保険代理店だけで国内に32,848社あることを考えると、現状のペースでは国内全ての保険代理店ユーザーを獲得するのは絶対に不可能です。

—【松嶋】どれだけ優秀な人を雇ったとしても難しいですよね。

—【津崎】そうですね、それに営業職2,000人を雇えるPayPayのような企業ならいざ知らず、当社が営業職を100人雇うパワープレイは全く現実的ではありません。どうすべきか考えた時に「保険会社ユーザーにご協力頂ければ良いのではないか」と考えたのです。

サービス利用料を頂いておきながら「当社サービスを、御社と契約している保険代理店にも宣伝して下さい」とは言えませんが、無償提供であれば問題ないですよね。

基本機能無償の代わりに「ソリシター君の保険代理店への拡販にご協力頂けませんか、ご紹介頂いた保険代理店様には、御社だけの特別広告枠もご用意します」と。

ソリシター君の導入保険代理店数が増えれば増えるほど、保険会社も保険代理店とのあらゆるコミュニケーションコストを下げられるので快く応じて下さるのでは、といった仮説を立てています。

—【松嶋】結果として、その方がみんなハッピーになりますしね。

—【津崎】当社サービスの成功は、最終的には一般消費者の保険料を下げたり、保障内容を充実させたりすることを可能にするはずです。

—【松嶋】前回もおっしゃっていたように、まさに「関わる人全てにとってWIN-WINのサービス」なんですね。

—【津崎】はい。ソリシター君は、現在は保険代理店向け、保険会社向けのtoBサービスですが、将来的にはtoCサービスにも拡張していきたいと考えています。先ほど紹介したwefoxは一般消費者向けにもサービスを多数展開していて、だからこそユニコーン企業に成長しているんです。

私達は、ソリシター君をスケールさせることで「wefox日本版」「エムスリー保険版」のような成長を実現します。

2024年は確かな成長フェーズに突入

—【松嶋】第三者としては、今後のサービス展開が非常に楽しみです。

—【津崎】ありがとうございます。ただ、マイナス事案が発生したのも事実で、実は昨年10月にメルマガの誤送信によって、某保険代理店募集人様の個人情報を他のユーザーに流出してしまったことがありました。

気づいた直後は頭が真っ白になりました……。すぐにお詫びのメルマガを保険代理店管理ユーザーに送信し、私が該当保険代理店様本社オフィスに謝罪に伺ったところ、「これからも頑張って下さい。期待しています」と温かいお言葉をかけて頂きました。

—【松嶋】起こしてしまったことは取り戻せませんが、それは嬉しい出来事ですね。

—【津崎】非常に嬉しかったです。解約になっても当然だと思っていましたから。

驚いたのは、この件が原因の解約が他保険代理店ユーザーにおいても1社も出なかったことです。それほどユーザーの皆様にはソリシター君に期待して頂いているのだなと実感しました。自分達のサービスの、業務インフラとしての責任を改めて認識しました。

—【松嶋】次の資金調達の目的には、セキュリティー面の強化も含まれているのでしょうか。

—【津崎】そうですね。先ほどお話ししたように一般消費者向けにもサービスを展開するのであれば、今よりも遥かにレベルの高いセキュリティーが求められるでしょう。全ユーザーに安心してご利用頂けるよう、今後はセキュリティーにも投資して、堅牢なセキュリティーを実現します。

—【松嶋】SEIMEI社には、とても優秀な人材が次々に集まっていると聞きました。

—【津崎】ありがたいことに、特別な求人募集をかけなくても、優秀なメンバーが「絶対に大成功するサービスだと思っているので、ぜひ一緒にやりたいです」と言って参画してくれています。ビジネスサイドの当社ボードメンバーは、全員が年収換算2,000万円〜5,000万円を個々で稼ぎ出せるレベルのプレイヤーです。

私も個人として保険営業に専念すればそれなりに稼ぐ自信がありますが、その道は選択せずにソリシター君に全リソースを投下してきました。現時点で累積のマイナスは数億円、そして自分自身の人生も5年以上を費やしてきましたから、私がこの事業に賭ける覚悟は周りに証明できているのかなと。

メンバーも楽しそうに仕事をしていて、Wantedlyの当社メンバーインタビューも希望に溢れた記事ばかりで嬉しいです。

—【松嶋】ソリシター君が魅力的だからというのも、人が集まる理由の一つなのだろうと思いました。

—【津崎】そうですね。プラットフォーム事業なのでやはり時間はかかりますが、メンバーは皆、ソリシター君が必ず成功すると信じてくれています。

現在も積極的に採用していますので、もしご興味のある方がいらっしゃいましたら、各求人媒体やコーポレートサイトから応募頂けると嬉しいです。もちろん、私のSNSにDM頂く形でも構いません。

開発にアクセルを踏むフェーズとなりますし、エンジニアで「活躍の場に飢えている」と感じている方には、最適な環境だと思います。自分達が産業を変えていく、というやりがいをご提供します。

—【松嶋】最後に、読者に向けてメッセージを頂けますか。

—【津崎】日本の保険市場規模は世界3位の78兆円と、非常に大きいマーケットです。

ソリシター君には、日本の保険産業を大きく変えるポテンシャルがあります。協業をご検討頂ける事業会社の方やご興味を持って頂ける投資家の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡下さい。皆様と良いディスカッションができましたら嬉しいです。

また、最後までお読み頂いた全ての方に、当社の今後にご期待頂ければ幸いです。今回の取材も、ありがとうございました。

Company
企業 SEIMEI株式会社
所在 〒106-0032 東京都港区六本木7-18-18 住友不動産六本木通ビル2階
業種 保険プラットフォーム「ソリシター君」の開発・運営
URL http://seimei.co/



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