資金ショート、事業停止からの売却…いくつもの逆境に遭いながらも成長を続けるウィルゲートの強さの秘密|18歳で起業した吉岡諒のビジネス論

30,514view
トップ > インタビュー 一覧

氏名 吉岡諒
肩書 株式会社ウィルゲート 共同創業者 兼 COO
出生 1986年
略歴 ​1986年岡山生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代表取締役小島氏と共に2006年に株式会社ウィルゲートを設立。個人として累計で2,000社のWebマーケティングの課題解決提案を実施。2012年に記事作成「サグーワークス」、2014年にメディア「暮らしニスタ」、2018年にはSEOのAIツール「TACT SEO」、2019年にはオンラインで編集チームが作れる「エディトル」、2020年にはM&A仲介支援サービス「Willgate M&A」をリリース。COOとして全サービスの管掌役員を務める。

小さい子どもから大人まで、インターネットが浸透している現代において、多くの企業を悩ませるWebマーケティング。Googleアナリティクスは都度アップデートされており、SEO対策の本や記事が大量に生産されている。

そんな中で、日本で一番SEOを愛していると言っても過言ではないのが、株式会社ウィルゲートだ。同社は「SEO」での検索ランキングで1位を獲得しており、社内にSEO領域のノウハウが蓄積されている。SEOに関するコンサルティングはもちろん「TACT SEO」などのツールやフリーランスによる記事作成サービスも展開中だ。

また近年はM&A事業やセールステック事業も立ち上げるなど、幅広い領域で事業を拡大し続けている。

今回は、ウィルゲートの共同創業者かつCOOである吉岡氏に、起業した理由や会社が成長を続けている背景、ビジネスを成功させるコツについてお伺いした。

※ 本インタビューは、感染症対策を行なった上で実施しています。また、取材後2週間が経過した時点で、関係者に新型コロナウィルスに関する症状はありません。

高校卒業3日後に起業。成功体験を得て19歳で会社を設立した理由

—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】吉岡さん、本日はよろしくお願いいたします。最初に自己紹介をお願いできますか。

—【話し手:吉岡氏、以下:吉岡】株式会社ウィルゲート共同創業者でCOOを務めている吉岡と申します。ウィルゲートはSEOのコンサルティング事業を展開している会社で、現在は二つの新規事業にも取り組んでいます。一つは2019年にサービスを開始したITWeb特化のM&A仲介事業。私が事業責任者を努めていて、これまで1600社にご利用いただき、成約実績は32件を突破しました。

もう一つはBtoBのマーケティング支援である、セールステック事業です。ウィルゲートを営業会社だと思われている方も少なくないのですが、社員180人のなかで営業は8人ほどしかいません。営業1人当たりの生産性が高く、効率よく営業できているため、少人数でも回すことができています。セールステック事業は、良いプロダクトを持っているものの営業で苦戦している企業に向けて、私たちの営業ノウハウを伝えるために始めた事業であり、具体的にはFacebookなどSNS活用のコンサルティングやオンラインセミナー支援を行っています。

私個人の役割としては、事業全般を担当しつつ、新規事業と中途採用と広報領域の担当もしているといった形ですね。

—【松嶋】共同創業者でありCEOの小島さんとは幼馴染なんですよね。

—【吉岡】はい。小島と私は岡山で生まれ育った幼馴染かつ親友です。ただ小島が慶應義塾高等学校に進学し東京で一人暮らしをしていたため、高校生の時は離れて暮らしていました。とはいえ縁が途切れることはなく、月に2回ほど電話をしたり、長期の休みで小島が帰省した際には一緒に遊んだりしていましたね。高校生の時に2人で起業する約束をして、高校を卒業した3日後にお年玉貯金で起業しました。

—【松嶋】2人で起業することを決意した理由はなんだったのでしょうか。

—【吉岡】起業した理由は二つあり、一つ目は私の家庭の事情です。高校1年生の時に父が病気で他界し、母から「大学2年生以降は学費の工面も含めて自分の力で生きて欲しい」と言われていました。つまりはお金を稼ぐ必要があったのです。

二つ目の理由は、小島に誘われたからですね。彼は高校に進学してしばらくしてから起業することを決めたらしく、2年生に進級したあたりで「大学生になったら一緒に起業しよう」と私を誘ってくれました。小島は私にとって1番の親友でしたし、小学生の時に彼がキャプテンで私が副キャプテンとして数人の友人とドッジボールチームを組んでいたこともあり、言うならば一緒に組織を作った経験があったんですよ。そのチームの雰囲気がとても良かったこともあり「小島と一緒だったら、会社も作れるのではないか」と思い、2人で起業することを決意しました。

—【松嶋】起業することを決めた当初、どのような事業を計画されていたのですか。

—【吉岡】IT領域で起業することは決めていましたね。私たちが起業したのは2005年で、当時は楽天の三木谷さんやライブドアの堀江さんが球団買収に名乗りを上げたり、サイバーエージェントの藤田さんが最年少上場したりと、IT業界が非常に盛り上がっている時期でした。コンサルティングや金融といった業界は、社会経験のない自分たちが学生起業で挑戦できる世界ではないとわかっていましたし、ITならアイディア次第で大きく跳ねるチャンスがあるのではないかと考えたのです。

—【松嶋】具体的にはどのような事業をされていたのでしょうか。

—【吉岡】アパレルのEC事業からスタートし、ARMANI EXCHANGEやAbercrombie & Fitchなど、当時は国内に店舗がなかった人気の海外ブランドの服を仕入れて販売していました。

服を販売するには仕入れるお金の確保とサイトを周知する必要があります。私たちはお年玉貯金で起業していたため、広告を出すような余裕はありませんでした。どうしたら服が売れるようになるのか調べた結果、SEOに注力すべきだと気づいた。そこからはSEOに関する本を読み漁り、たくさん勉強をしました。

「アバクロ 通販」で検索した際に、自分達のサイトが上位になるように研究を続けたところ、服がたくさん売れるようになったんです。大学1年生ながら月に400~500万円ほど売り上げていましたね。

—【松嶋】大学生でそれほどの売り上げがあるのはすごいですね。

—【吉岡】そうですね。ただ仕入れが追いつかないほど人気のサイトに成長させることはできたものの、徐々に資金繰りが苦しくなってしまったのです。

小島と話し合った結果、在庫リスクのあるEC事業を撤退し、SEOでの成功体験を活かした事業を立ち上げることになりました。ベンチャー企業向けのWebマーケティング支援事業をするために、2006年にウィルゲートを設立したといった流れですね。

コロナ禍の動きを読み取り、柔軟に対応。ウィルゲートが注力する「三つのS」

—【松嶋】さまざまな試練を乗り越えてこられたんですね。

—【吉岡】はい。事業の売却は一度だけでなく、計2回ほど経験しています。買収も4回ほど行っていますね。IT領域は変化が激しく、新規事業に挑戦することなく一つの事業だけをやり続けていると、会社として継続して成長していくことが難しいと思うんです。とはいえ新規事業に挑戦するためには資金が必要ですよね。自分達の実体験を踏まえて、企業が成長を続けるためにはM&Aをカジュアルなものにする必要があると考え、新規事業としてM&A仲介事業を立ち上げました。

—【松嶋】過去の経験を活かして事業を展開されているのですね。

—【吉岡】自分達の経験を活かしたものもあるのですが、メンバーが自主的に立ち上げてくれた新規事業もあるんですよ。先ほどお話した運営停止状態に陥った上での事業売却は人を伴わないものだったため、売却した事業部のメンバーは会社に残っていました。「赤字を出してしまった今、自分達にできることはないか」と、彼らが自主的に立ち上げてくれたのが、フリーランスによる記事作成支援事業なんです。

現在は事業の柱として、安定的な売り上げを出してくれるサービスに成長しました。

—【松嶋】メンバー発信のものもあるんですね。中でも注力している事業はどれになるのでしょうか。

—【吉岡】コロナ禍で特に注力しているマーケティング活動を「三つのS」と呼んでいて、1つ目は創業事業でもあるSEOです。現在「SEO」で検索すると、ウィルゲートのサイトが1位に出てくるんですよ。SEO事業を行う会社が国内に数百社もある中「SEO」で1位を取れたことはとても誇らしいですし、お問合せも増えましたね。

二つ目に注力しているのが、セミナーです。ウィルゲートで行っているSEOのノウハウ勉強会には、オンラインで年間1万5000名ぐらいの方が参加して下さっています。コロナ前はオフラインで行っていて、オフィス内にも大きなセミナールームがありました。年間1億円ほどの家賃が発生していて、セミナーの集客は毎月100名ほどでしたね。

コロナ禍で働き方が変わったことを受け、現在はセミナールームのない年間家賃4000万ほどのオフィスに移転しました。セミナーはオンラインで開催するようになり、6000万円のコストを削減するとともに、月当たり1500名ほど集客できるようになったのです。

—【松嶋】家賃は半分以下になり、集客は15倍にまで成長していると。

—【吉岡】おっしゃる通りです。また私がセミナーに登壇するのは月に10時間ほどで、セミナー後に多数のお問合せを頂戴しています。つまりは毎月10時間で1500名の方に営業できている。コロナ前は会社に訪問して営業していたため、1社あたり最低でも2時間ほどかかっていましたが、オンラインセミナーを始めてから非常に効率よく営業活動ができるようになりました。

加えてセミナーの集客にはお金をかけていません。名刺交換してきた方や過去にお問い合わせいただいた方など、累計で7万件ほどのリードがあるため、広告費をかけることなく、セミナーに集客できているといった形です。

—【松嶋】コロナ禍でも成長を続けていらっしゃるんですね。三つ目の注力事業についてもお話いただけますか。

—【吉岡】最後は「ソーシャルセリング」です。ソーシャルセリングとは、SNSを活用して顧客との関係性を深めていく営業手法を意味しています。私自身がFacebookで1万人、Twitterで約2万5000人と繋がっているんです。その上でFacebookに月100回、Twitterには月500回ほど投稿をしていて、SNS経由での新規受注は年間3億円ほどあります。

SNSにはプライベートの内容も投稿していて、私個人としての信頼性を高めることもできていますし、こちらから営業せずともSEOの相談をしていただけるようになりました。SEO、セミナー、ソーシャルセリングが組み合わさることで、非常に効率よく営業ができているんです。

強さの秘密は“三種の神器”。ベンチャー支援を通して世界を変える

—【松嶋】創業から10年後の生存率は6.3%、さらに友人との共同創業は難しいと言われている中で、ウィルゲートがここまで成長を続けている理由はどういったところにあると思いますか。

—【吉岡】小島の人柄が大きく関係しているように思います。本当に素敵な人だと心から思っていますし、彼と出会えた私は運が良いのでしょうね。

私と小島は現在でも仲がよく、お互いに尊敬しあっています。彼は私が苦手なことが全て得意なんですよ。

お互いに得意なことが違うことはビジネスパートナーとして大切なことだと思っています。例えば二人とも営業が得意だった場合「私は今月1億円の売上がある。あなたは500万円なのに、報酬は同じでいいのか?」といった揉め事が起きてしまうと思うんです。

しかしウィルゲートの場合、小島は営業にノータッチですし、私はエクセルやパワーポイントの資料作成は全然できません。また現在は私が中途採用を担当していますが、財務や中期的な経営計画は小島が担当をしています。小島が苦手なことが私の得意なことであり、私が苦手なことは小島が得意なことだった。お互いに支えあってここまでやってこれたことが、成長を続けられている要因の一つなのではないかと考えています。

—【松嶋】信頼関係ができていないと、仕事は成り立ちませんものね。

—【吉岡】はい。またウィルゲートでは、記事作成代行のエディトルというサービスのほか、SEO分析ツールのTACT SEOも用意しています。つまりSEO領域において「コンサルティングによる戦略支援」「フリーランスによる業務代行」「ツールによる内製化支援」といった三種の神器が揃っているのです。

—【松嶋】三種の神器が揃っている会社は、あまりないように思います。

—【吉岡】コンサルティングはノウハウがないとできないものであり、簡単にマネできるサービスではありません。業務代行に関しては、ウィルゲートには約29万人のライターと編集者がおり、全体売上の3割ほどはフリーランスの方々が働いてくれているおかげで成り立っています。結果的に固定費を変動費にすることができ、会社の生産性が大幅に改善しました。お客様からしたら統括的なサポートが受けられますし、フリーランスの方からすると営業をしなくても仕事を得られるきっかけにもなる。関わる人全てにプラスがあるんですよ。ツールについては単純作業を削減することができるため、自社もお客様も仕事の生産性を向上できます。

こうした三種の神器が揃っていることが、ウィルゲートの強みだと考えています。

なおセールステック事業は現在コンサルティングのみを提供していて、業務代行やツールについては準備中の段階ですね。

—【松嶋】なるほど。会社として、最終的に掲げている目標は何なのでしょうか。

—【吉岡】ウィルゲートの「will」は、英語の「意志や想い」からきており「一人ひとりの『will』を実現する」を経営理念として掲げています。

私たちは18歳で起業し、お金やノウハウ、人脈もなかったため、営業面で非常に苦労してきました。これはベンチャー企業にとっても共通の悩みなのではないかと思っています。ウィルゲートは、自分たちの経験を通してベンチャー企業の挑戦を手助けしていきたいと考えています。

なぜなら、社会にイノベーションを起こすのは、ベンチャー企業だと思っているからです。世の中には素晴らしいアイディアを持っている企業がたくさん存在しているものの、資本やノウハウがなく、夢半ばで諦めてしまうケースも珍しくありません。

私たちはベンチャー企業の課題解決を支援することで、素晴らしいプロダクトを世の中に広げる手伝いをしたいと思っています。そうすることで、結果として世の中が良くなっていくことに繋がると考えているんです。

ただベンチャー企業のようにあまり資本力がない企業を相手にする場合、大企業よりも費用対効果を求められるという厳しさもあります。私たちとしてもプロダクトを磨いていかないといけませんし、顧客満足度を上げるためにも常に努力し続ける必要がありますね。

ビジネスを成長させるコツは、人との出会いを資産に変えること

—【松嶋】吉岡さんは日本最大級の営業の大会であるS1グランプリで、2021年度のグランプリを受賞されていますね。ビジネスパーソンに向けて、メッセージをいただけますか。

—【吉岡】ビジネスにおいてライバルと差をつけるコツは、出会いを資産にできるかどうかだと思ってます。

私は起業してから1万7000人とお会いしてきていて、Facebookでは1万人と繋がっています。10年前に会った人とも繋がり続けているのですが、実はそれはとても珍しいことなんですよ。「10年前に会った人と今も連絡を取れますか?」と聞くと、ほとんどの方が「難しい」と答えます。

私が出会った方と積極的に交流を続けている理由は、情報発信を続けることで、相手から自然と問い合わせが来るようになるからです。お客様を探す時間を削減できるため、プロダクトの精度を上げることに集中できますし、自然と仕事のクオリティが上がります。価値提供ができれば次の仕事に繋がりますし、顧客が増えれば新規事業も生まれていくでしょう。事業拡大にも貢献できますし、自社の魅力をアピールできるため採用にも効果的です。SNSでの発信を通して、営業活動だけでなく広報としての役割も果たせているんですよ。

—【松嶋】SNSを利用することはかなり効果的だと。とはいえ、SNSでの発信が苦手な方もいますよね。

—【吉岡】出会った方と繋がり続ける方法は、SNSの発信だけではありません。年賀状やメールでも良いのではないでしょうか。私は新年の挨拶メールも送るようにしていますし、そこから累計4億円以上の受注に繋がっています。

ただ「新年あけましておめでとうございます」といった定型の挨拶文では、あまり意味がないかもしれません。私は「娘が◯歳になりました」「来年は息子が小学校受験です」「子どもたちは今『鬼滅の刃』にはまっています」など、プライベートの近況報告もするようにしています。そうすると「私の子どもは今年小学校受験でした」「子どもが同い年なんです」といった返信をくださるんです。そういったやり取りを続ける中で自然に関係値が深まり、仕事の相談に繋がっていくんですよ。

また私はソーシャルセリングで「すれ違った方から4年後に受注」をコンセプトにしていて、実際にお会いしてから数年後にお問合せいただくケースが続出しています。具体的には、5年ほど前に行われた忘年会で40人ほどの参加者全員と名刺交換をしたところ、4年後に参加者の1人から「大切なお客様がSEOに困っているため、吉岡さんに相談したいです」と連絡があり、総額1000万円以上のお仕事をご依頼いただきました。新規取引の場合は、50%ほどが「数年前にお会いした方」からですね。

人との出会いをその場限りにしている人と、ずっと繋がり続けている人を比較した場合、大きな差が出てくると思います。

—【松嶋】一度会って話したことがある方と初対面の方への営業活動を比較した場合、前者の方が警戒心もなく受注に繋がりやすいのかもしれませんね。

—【吉岡】はい。また、ウィルゲートが自社サービスとして対応していない領域について相談された場合にも、これまでに知り合った人や会社を紹介できるのもメリットですね。世の中にはたくさんの素晴らしい会社がありますし、縁を繋ぐお手伝いができることは、私個人としても非常に嬉しいことなんですよ。

突破口が見つからず悩んでいるビジネスパーソンは、今までの出会いをいかに資産に変えていくのか、意識して生活してみてはいかがでしょうか。

—【松嶋】ウィルゲートが成長し続けている背景には、吉岡さんのSNSでの発信も大きく寄与しているのだと感じました。本日は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました!

Company
企業 株式会社ウィルゲート
所在 東京都港区南青山3-8-38 南青山東急ビル3F
業種 コンサルティング事業、メディア事業
URL https://www.willgate.co.jp/



株式会社ウィルゲートにアクション