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THE KEYPERSON INTERVIEW約47分で読めます

“問題解決の達人” 大芝義信、組織の悩みの多くは「人」の問題。人と人の問題を解決し続けたい。

株式会社グロースウェル 代表取締役社長

大芝義信Ohshiba Yoshinobu
大芝義信さんのインタビュー
大芝義信 — The Keyperson

INTERVIEWEE 話す人

大芝義信

株式会社グロースウェル 代表取締役社長

1975年生まれ、東京都八王子市出身。(株)グロースウェル代表取締役。楽天、ミクシィ、GREEでキャリア形成。2013年に株式会社AppBank(証券コード:6177)入社。CTOとしてIPOを経験後、2016年に株式会社グロースウェルを創業。スポットCTOとしてプレ要件定義やシステム開発ベンダーの選定および管理。エンジニア組織のマネジメント支援として累計200社以上の実績。組織支援にはEQ(心の知能指数)を導入して累計1,000名超。2021年、大月市DXアドバイザー。当インタビューメディア『The Keyperson』Owner。著作に『感情リテラシー事典(フォレスト出版)』7刷・2.3万部、韓国版4刷、『組織の感情を変える(日本実業出版)』『感情のブレーキを外してすぐやる人に生まれ変わるレッスン(秀和システム新社)』、動画出演に『プロが解説EQマネジメント(NewsPicks)』がある。

掲載者の関連リンク株式会社グロースウェル
大芝義信さんに相談する(新しいタブで開きます)
この記事の目次
  1. 現場の熱意を 経営の意思決定につなぐために
  2. 自分の時間を10分割すれば 10社の力になれる
  3. 直らなかったエアコンが教えてくれた 依頼する側の視座
  4. 部下を守るための言葉が 周囲を傷つけていた
  5. 感情を言葉にすると 次の行動を選び直せる
  6. 同じ石段を登っても 人は違うところを見ている
  7. 人を見極めるには 能力が発揮される条件まで見る
  8. 動けない理由を理解すると 支援の方法が変わる
  9. 人の変化を 組織の成果へつなげていく
  10. 話す 聞く 考える その基礎を磨き続ける
  11. 誰もあなたを知らないと言われて それでも10万文字を書いた
  12. 一冊の本を 誰かの生活の中で役立つものに
  13. もう会えない人に 今だから伝えたい言葉がある
  14. 5年先へ残す仕事と 目の前の一人に向き合う時間
  15. 誰かと働く時間に もう一度希望を持てるように
  16. 大芝義信に相談する
  17. 素顔に迫る20問

心に残った言葉を、選択してシェア。

大芝義信が、技術と経営の先で「感情」に向き合い続ける理由

「人生はあっという間だぞ」。92歳で亡くなった祖父の言葉を、大芝義信さんは今も大切にしている。

楽天、ミクシィ、GREEを経て、AppBankではCTO(最高技術責任者)として上場を経験。2016年にグロースウェルを創業し、累計200社以上のエンジニア組織に関わってきた。技術と経営の両方を知る大芝さんが、現在、力を注いでいるのは、組織の中で見過ごされてきた感情を理解し、人が力を発揮できる条件を整えることだ。

その原点には、胃が痛むほどの板挟みも、情熱を持っていた人が職場を去る姿もある。出版の可能性を否定され、それでも10万文字を書き上げた経験もある。何が彼を動かし続けるのか。仕事の話をたどっていくと、やがて、もう一度会って感謝を伝えたい人の話になった。

現場の熱意を 経営の意思決定につなぐために

ー【聞き手:紙谷由美子、以下、紙谷】大芝さんは、この「The Keyperson(ザ・キーパーソン)」の創設者でもあります。まずは、現在のお仕事につながる歩みから教えてください。

ー【読みて:紙谷由美子、以下、大芝】出発点はシステムエンジニアからでした。楽天、そしてミクシィでは、エンジニアが数名だった段階から企画・開発に携わり、海外開発拠点との業務プロセスの整備や、拠点間の橋渡しも担当しました。2007年、mixiが大きく成長していた時期には、全国から集まった優秀なエンジニアを率いる立場になりました。

彼らには、ユーザーのためにもっとよいサービスをつくりたいという熱意がありました。ただ、その熱意を実現するには、技術的に正しいだけでは足りない。予算、事業上の優先順位、他部門の事情を理解し、関係者の合意を形成する必要があります。

現場が何を実現したいのかはわかる。けれど、その実現を阻んでいるものを、当時の自分は十分に説明できなかった。現場に努力を求める前に、自分が経営を理解しなければいけない。その問題意識から学びを重ね、MBAを取得しました。

ー【紙谷】転職の選択肢も多かったそうですね。

ー【大芝】ありがたいことに、ヘッドハンターから月に20件ほど連絡をいただいた時期もありました。その中で重視したのは、知識を実際の事業で検証できることです。複数の事業に関われば、同じ技術でも、事業によって求められる価値や判断基準が異なることを学べると考えました。

AppBankには、iPhoneやゲーム攻略のメディア、YouTube、アプリ、ECがあり、当時は実店舗も7店ありました。そうした事業を支える開発部門のマネジメントを担い、CTOとして株式上場も経験しました。技術、事業、組織がどう連動しているのかを、実務の中で考え続けた時間でした。

自分の時間を10分割すれば 10社の力になれる

ー【紙谷】そこから、企業の外で支援する「スポットCTO」という働き方を選ばれたのですね。

ー【大芝】私は、課題を発見して、解決策を考え、実行できるところまで具体化することが好きなんです。「ここがおかしい」と指摘して終わると、現場には何も残りません。制約条件を踏まえて、誰が何を変えれば前へ進むのかを考える。その過程に、強く惹かれます。

一方、社内のCTOとして大切なのは、自分が常に介入しなくても組織が機能する状態をつくることです。意思決定の基準を共有し、人を育て、権限を渡していく。責任者だけが際限なく忙しくなる構造は、どこかで見直す必要があります。

それなら、課題が集中している場面に、自分の経験と時間を届けられないか。自分の時間を10分割すれば、10社の力になれるのではないか。そう考えて始めたのが、スポットCTOです。

ー【紙谷】支援を仕事にしようと思った背景には、現場での苦労もあったのでしょうか。

ー【大芝】ありました。事業側は「市場が待っている。早く出したい」と言う。開発側は「テスト期間が足りない。このままでは品質に責任を持てない」と言う。どちらも、自分の立場で果たすべき責任を果たそうとしているんです。その間に立ち、胃が痛くなるような夜を、何度も経験しました。

そして、優秀なエンジニアが辞めていく。「キャリアを広げたい」と説明されても、私には、その言葉の向こうに積み重なった消耗が感じられることがありました。本人の内心を断定することはできません。ただ、能力も意欲もある人が、人とのやり取りの中で疲弊していく。その現実は、見過ごせませんでした。

メンバーの不満が直属のリーダーを飛び越え、管理職へ、さらに経営へと届き、最後には「もう無理です」と告げられることもあります。その言葉になるまでに、どれだけの違和感やためらいが積み重なったのか。表面化してから対応するだけでは、取り戻せない信頼や時間があると感じてきました。

技術力を評価されてリーダーになった人が、合意形成や育成を十分に学ぶ機会のないまま、人の責任を負うこともあります。責任や周囲からの期待が膨らむ一方、それに見合う報酬や支援が得られず、管理職が「罰ゲーム」とまで言われる。そのしんどさを、個人の資質や忍耐だけに帰してよいのか。誰かが引き受け、整理し、支える仕事が必要だと思ったんです。

当初の取材でお話しした頃には契約先が30社を超え、その後も支援を続けてきました。エンジニアが一人の会社から、外注中心の会社、急成長するスタートアップ、1,000人規模の企業まで、累計200社以上のエンジニア組織に関わっています。規模が変わっても、役割の曖昧さや、期待のすれ違いが人を疲弊させる場面には共通点があります。

直らなかったエアコンが教えてくれた 依頼する側の視座

ー【紙谷】技術顧問に加えて、メディア運営や、事業を支える活動もされています。それらはどうつながっているのですか。

ー【大芝】提供する側と、依頼する側の両方の視点を持ちたかったんです。会社員の頃、自宅のエアコンが壊れて、修理に来ていただいたことがありました。昼から夕方まで作業していただいたのですが、必要な部品がなく、結局、その日は直りませんでした。それでも、請求額は2万5,000円でした。

もちろん、技術者の方は時間と専門性を提供してくださっています。ただ、依頼した私の側には、「困りごとは解決していない」という実感が残った。この隔たりは、仕事でも起きるのだと気づきました。

提供者は、自分がどれほど努力したかを知っています。でも依頼者が知りたいのは、何が解決し、何が未解決で、次に何を判断すればよいのかです。そこまで説明しなければ、専門性が信頼に結びつかないことがある。技術者としての誠実さを、依頼者に伝わる形にする必要があるんです。

ー【紙谷】ご自身で事業を営むことも、その理解を深めるためだったのでしょうか。

ー【大芝】はい。メディアの運営では、費用を負担し、人に仕事を依頼し、成果が形になるまで責任を持つ側になります。成果が形になる前にも、人の時間や仕事に対価を支払う責任がある。その重みを、自分が依頼する側になって理解しました。また、起業家の挑戦を出資という形で支えた経験もあります。事業の可能性と、継続に伴う責任の両方に触れることは、経営者への助言を机上のものにしないためにも意味がありました。

多くの経営者にお会いして印象に残ったのは、3年後、5年後から現在を捉える視点です。私自身、会社員の頃は、目の前の仕事や週末の予定に意識が向きやすかった。もちろん、立場だけで時間軸が決まるわけではありません。ただ、遠い将来から問いを立てると、今日の選択が変わる。その気づきを、読者にも届けたいと思いました。

「The Keyperson」で知りたいのも、成果に至るまでに、その人が何を見て、何を危惧し、何を引き受けたのかです。判断の背景まで聞くことで、読者が自分の仕事に持ち帰れるものが生まれると考えています。

部下を守るための言葉が 周囲を傷つけていた

ー【紙谷】組織支援の中で、感情を理解することの重要性を感じた出来事を教えてください。

ー【大芝】ある経営者から、「CTOの言葉が厳しく、他部門との仕事が進みにくい」と相談されたことがあります。例えば、Webディレクターが反応のよくないバナーを差し替えようとしても、「依頼は手順どおりに。今日でなければならないのか」と強く返される。依頼する側は萎縮し、社内の雰囲気にも影響が出ていました。

経営者は、人を入れ替えることも選択肢として考えながら、できれば今いるメンバーで改善したいとおっしゃっていました。そこで、まずCTO本人に話を聞きました。

本人が危惧していたのは、部下が社内の下請けのように扱われ、専門職としての誇りを失ってしまうことでした。自分が何でも引き受ければ、部下もその姿をまねてしまう。だから、彼らを守るために、あえて強く突き返していたというんです。

ところが、強い言い方が習慣になり、必要以上に相手に当たってしまう。そのことには、本人も苦しんでいました。守りたいものがあるのに、守るために選んだ行動が、別の関係を損なっていたんです。

ー【紙谷】その事情を聞くと、同じ言動でも見え方が変わりますね。

ー【大芝】ええ。だからこそ、目に見える振る舞いから、その人の全体を決めつけたくありません。何を恐れ、何を大切にしているのか。そこまで理解したうえで、行動の妥当性を検討したいんです。

部下の誇りを守りたいという意図は尊重できます。同時に、相手を威圧する伝え方は改める必要がある。例えば、「今日この依頼を入れると、合意済みの開発が止まります。優先順位を変更するか、明日の対応にするか、一緒に確認させてください」と伝える。境界を明確にしながら、協議の余地をつくるんです。

交渉の考え方には、表面に出ている要求と、その背景にある関心を分けて捉える方法があります。「今日やってほしい」と「今日はできない」だけでは平行線でも、顧客への約束と品質保証という、それぞれが守りたい条件まで示されれば、別の手段を検討できます。仕事で対立したときは、「この人は何に反対しているのか」に加えて、「何を損なうことを危惧しているのか」と問うと、理解が深まります。

ー【紙谷】感情を理解することが、業務の設計にもつながるのですね。

ー【大芝】そうです。過剰な仕事量、曖昧な優先順位、責任に見合わない権限を放置して、本人に穏やかな態度だけを求めても、負担は残ります。感情の背景を聞いたうえで、依頼のルールや役割分担、判断の権限まで整える。私が技術と経営の経験を生かしたいのは、その部分です。

感情を言葉にすると 次の行動を選び直せる

ー【紙谷】その支援の基盤にあるEQについて、改めて教えてください。

ー【大芝】EQは、Emotional Quotientの略で、一般に「感情知能」を表す言葉として使われています。感情知能は英語ではEmotional Intelligenceといい、自分と相手の感情を理解し、思考や行動に生かす力です。

感情知能の研究では、感情を知覚する、思考に活用する、意味や変化を理解する、適切に調整する、という四つの能力で整理するモデルがあります。知性と感情は、相互に関わりながら判断を支えています。

私が現場で大切にしているのは、感情を情報として丁寧に読むことです。不安は、何が不確かなのかを確かめるきっかけになる。悔しさは、自分が何を大切にしていたかを教えてくれることがある。ただし、感情から浮かんだ解釈が、そのまま事実だとは限りません。「軽んじられた」と感じたら、実際に何が起きたのかも確かめる必要があります。

ー【紙谷】AIに任せられる仕事が広がっていく時代に、EQはどのような意味を持つと考えていますか。

ー【大芝】これまで人が担ってきた仕事の一部をAIが実行する流れは、これからも進んでいくと考えています。その中で、私たちは「自分が誰かと働くことには、どんな価値があるのか」を、より深く問われるようになるでしょう。私は、その問いに向き合ううえで、人間力を磨くことが大切になると信じています。

専門性や倫理観、経験から学ぶ判断力も含めて、私は人間力と捉えています。その中核を担う力の一つが、EQです。自分の感情を理解し、相手の置かれた状況を想像し、何を伝え、どう関わるかを選ぶ。その力によって、蓄えた知識や経験が、誰かを支える言葉と行動になっていくんです。

ー【紙谷】同じ言葉でも、「誰が言うか」によって、受け取る重みが変わるということでしょうか。

ー【大芝】そう思います。その人が、何に悩み、何を引き受け、どんな経験を経て、今その言葉を口にしているのか。言葉には、その人が生きてきた時間が伴います。同じ一言でも、受け取る人にとっての重みが、1にも100にもなることがある。

例えば、挫けそうなときに、これまでの努力を知っている人から「ここまでやってきたことを、私は知っているよ」と言われる。すぐに状況が変わるわけではなくても、「もう一度、踏ん張ってみよう」と思えることがあります。挑戦をためらっているとき、その人自身が迷いながら一歩を踏み出してきたと知っているからこそ、「あなたならできる」という言葉を、自分の力に変えられることもある。

つらいときにかけてもらった言葉が、何年たっても自分を支えている。言ってくれた本人は覚えていなくても、受け取った側では、その一言が今も生きている。そういう言葉に救われた人は、少なくないのではないでしょうか。

AIの言葉に励まされる場面もあるでしょう。それでも、「この人は、私がうまくいかなかった時期も知っている」「苦しいときにも、関わり続けてくれた」と思える関係には、一緒に過ごし、互いに引き受けてきた時間があります。その人の生き方と、二人の間に積み重なった信頼まで、言葉の生成だけで置き換えられるとは思いません。私は、そこにAIだけでは代替できない、人が人を支える価値があると考えています。

ー【紙谷】一人の言葉の背景には、その人の人生だけでなく、受け継いできたものもあるのですね。

ー【大芝】ええ。私たちは、家族や先人から受け継いだ歴史や文化の中で生きています。約束を守ること、礼を尽くすこと、誰かの努力を尊ぶこと。そうした価値を、人の振る舞いや言葉に触れながら、自分の判断の基準にしてきました。自分では経験できない人生にも、本や対話を通じて触れ、学ぶことができます。

その積み重ねを、今、目の前にいる人への接し方に生かす。受け取った優しさや知恵を、自分のところで終わらせず、次の人へ渡していく。歴史や文化は、そうした日々の選択の中にも息づいているのだと思います。

ー【紙谷】その人間力を磨くには、どのようなことを意識すればよいでしょうか。

ー【大芝】経験を重ねるたびに、そこから何を学び、他者への理解をどう深めたかを振り返ることです。例えば、自分が苦労した経験を「私も乗り越えたのだから、あなたもできるはずだ」と伝えると、相手を追い詰めることがあります。その経験から、自分にも限界があることや、人によって必要な支えが違うことを学べたなら、かける言葉は変わります。

自分の感情を捉える。相手の言葉の奥にある不安や願いを聞く。そして、自分の経験を相手に押しつけず、その人が次の一歩を選べるように関わる。EQを発揮し、磨くとは、こうした実践を積み重ねることでもあります。

AIを使いこなす力を高めるとともに、人としても成長していく。その両方を続けることが、AI時代にも「あなたと仕事がしたい」「あなたに話を聞いてほしい」と思っていただける理由の一つになると信じています。グロースウェルとして私が支えたいのも、その成長です。

誰かの言葉に支えられて、今日まで歩いてきた人がいる。今度は、自分の言葉が誰かの明日を支える。関わった方が「自分にも、まだできることがある」と思えるような言葉と行動を、私自身も磨き続けたいですね。

ー【紙谷】人を支えるためにも、自分の感情を理解することが大切なのですね。ただ、怒りが強くなると、そうしたことを考える余裕がなくなりそうです。

ー【大芝】だから、反応が強まる前の兆候を知っておきたいんです。以前、電車内で、隣の人の鞄が何度も当たることから、つかみ合いに発展する場面を目撃しました。最初は「気をつけてください」という注意だったのですが、相手は音楽を聴いたまま、ちらっと見るだけだった。注意すれば配慮してくれるという期待が外れ、怒りが一気に強まったように見えました。

その場で相手の意図まではわかりません。ただ、自分が苛立ちを感じた段階で気づければ、立つ位置や車両を変えるという選択肢があります。伝え方を変えることも、いったん距離を置くこともできる。自分の望んだ結末から遠ざかる前に、別の行動を選べるようにしておくんです。

計算や数を数えることを、注意を切り替える工夫として使う場合もあります。ただ、「計算すれば必ず怒りが消える」とまでは言えません。大切なのは、その人に合う方法で感情が動いてから行動するまでに一呼吸置き、安全と関係を損なわない選択をすることです。

ー【紙谷】不安に対しては、どう向き合えばよいのでしょう。

ー【大芝】例えば、ライターが公開済みの原稿に誤りを見つけたとします。「もう公開したし、黙っていよう」と先送りすると、電話が鳴るだけで「指摘されるのでは」と身構えることがあります。これは仮の例ですが、仕事で似た経験をされた方はいると思います。

このとき、「怖い」の中身を具体化します。叱責が怖いのか、信頼を損なうことが怖いのか、読者に誤った情報を渡したことが気がかりなのか。そして、誤りの範囲、影響、修正の方法、報告すべき相手を確認する。必要な訂正や謝罪に移れば、状況に働きかけられます。

心理学には、「感情の粒度」という考え方があります。自分の感情をどれほど細やかに区別して捉えられるか、ということです。不安、焦燥、悔しさ、孤独をすべて「ストレス」で済ませると、必要な対応が見えにくい。「何を感じているのか」「何が大切だから、そう感じるのか」「次にどの事実を確かめたいか」と問う。感情を言葉にし、背景を確かめる精度を高めることが、感情リテラシーを育てる一歩になります。

ー【紙谷】本人が報告しやすい環境も、必要になりそうですね。

ー【大芝】ええ。心理的安全性は、疑問や懸念、ミスを話す際の対人リスクを、過度に恐れずに済むという、チームで共有された認識です。「報告してくれて助かった。まず影響を確認しよう」と受け止めたうえで、修正と再発防止の責任は明確にする。率直に話せることと、仕事に高い基準を求めることは、両立させたいんです。経営者には、「最近、部下が自分に反対意見を言ったのはいつか」と振り返ってみてほしいですね。問題がないように見えるときも、問題を伝えられる関係になっているかまで確かめたいと思います。

一度発した言葉は、相手が受け取った経験ごと消すことはできません。それでも、言い過ぎたと気づいたなら、具体的に謝罪し、次の振る舞いを改めることはできます。役職が上がるほど、自分の一言が相手の発言や判断に及ぼす影響を、自覚していたいですね。

同じ石段を登っても 人は違うところを見ている

ー【紙谷】経営者から寄せられる相談には、どのようなものがありますか。

ー【大芝】大きくは、売上、組織、急成長に伴う課題です。ただ、最初から論点が明確とは限りません。「なんとなく求心力が弱くなった」「以前のように話がかみ合わない」という、言語化される前の違和感から始まることもあります。

そこで、事実と解釈を分けながら、課題を可視化します。「メンバーに主体性がない」と感じているなら、実際にはどの行動が減ったのか、期待をどこまで共有しているのか、判断する権限は渡しているのか。一つの評価語を、検討できる問いへ分解していきます。

ー【紙谷】そうした問いの立て方も、身につけられるのでしょうか。

ー【大芝】練習できます。私が大切にしている楽観性は、困難を見落とすことではありません。制約を認識したうえで、自分が働きかけられる余地を探す姿勢です。失敗したら、「自分には能力がない」で思考を止めず、どの前提が外れ、何を修正できるかを検討する。失敗を次の判断に使える経験へ変えていきます。

論理的に筋道を立てる力、前提を吟味する批判的思考に加えて、別の選択肢を構想する創造性や、相手の立場を理解する共感も必要です。知識を持っていることと、状況に応じてそれを使えることには、距離がありますから。

ー【紙谷】EQの検査では、どのようなことがわかるのですか。

ー【大芝】自分の感情や判断の傾向を振り返る手がかりが得られます。ただ、EQの測定には複数のモデルがあり、自己認識を尋ねる検査と、課題への回答を通じて能力を測る検査では、見ているものが異なります。どの検査で何を測っているかを理解して使うことが大切です。

わかりやすい例として、香川県の金毘羅山の石段を考えてみてください。「こんなに登るのは大変だ」と感じる人も、「全部で何段あるのだろう」と数に関心を向ける人もいる。同じ場所にいても、最初に注意を向ける対象が違うんです。もちろん、この反応だけで人を感情型、理性型と判定するわけではありません。自分の見方が唯一ではないと気づくための例です。

ー【紙谷】普段とは違う見方をするには、どうすればよいでしょう。

ー【大芝】例えば、what、when、who、whereという4Wで問いを立ててみる。「どんな石でできているのか」「いつつくられたのか」「誰と登れば楽しいか」「ほかにはどこに似た場所があるか」。事実への関心も、人との体験への関心も広がります。4Wは検査ではなく、注意の向け先を増やす練習として使えます。

映画でも同じです。アカデミー賞4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』を見て、物語の感情に心を動かされる人もいれば、「思ったより上映時間が短く感じた」「レイトショーは空いていた」と、時間や環境に着目する人もいる。そこから、「どの場面で時間を忘れたのか」「自分は何に反応したのか」と問うと、体験の理解が深くなります。

相手の感想が自分と違うとき、理解力の違いだと片づけず、何に注意を向けていたのかを聞いてみる。職場でも、同じ会議から持ち帰るものが違う理由を理解する手がかりになります。

人を見極めるには 能力が発揮される条件まで見る

ー【紙谷】採用や育成では、どのように生かせるのでしょう。

ー【大芝】スキルに加えて、何を大切にし、どのように周囲と協働するのかを見ることです。例えば、すでに制作方針が決まったWebサイトに、「この文字は、もっと小さくした方がよい」と提案する人がいたとします。品質へのこだわりは、強みになり得ます。ただ、目的、納期、費用、他の関係者への影響と結びついているかを確認したい。

「理想が高いから組織に向かない」と判断するより、どの範囲を任せ、何を合意すれば、その専門性が生きるのかを考える。専門性に集中する役割で力を発揮する人もいれば、判断基準を共有することで、チームの品質を引き上げる人もいます。面接でも、「品質と納期が競合したとき、どう判断し、誰と調整したか」と、具体的な行動を尋ねます。

ー【紙谷】意見を持っていても、それを直接伝えられない人もいますね。

ー【大芝】例えば、通常3日かかる作業を1日で求められたとき、依頼者には何も伝えず、周囲に「普通は3日かかるよね」と不満を漏らしてしまうことがあります。これでは必要な調整が始まりません。ただ、その人の消極性だけで説明せず、異論を伝えたときに何が起きる職場なのかも確認します。

本人には、「1日で仕上げるなら範囲をここまでに絞る必要があります」「全体を対応するなら3日必要です」と、条件と選択肢を示す練習をしてもらう。上司にも、その報告を受けて優先順位を判断してもらう。双方の行動を変えなければ、同じ構造が残るからです。

ー【紙谷】日常の小さなやり取りにも、仕事の進め方は表れますか。

ー【大芝】日程調整はわかりやすい例です。「この日はどうですか」に「その日は無理です」だけで返すと、相手はもう一度候補を探さなければなりません。「その日は難しいですが、火曜の午後か木曜の午前なら可能です」と返せば、次の判断に進めます。

相手が次に何を判断するかを想像し、そのための情報を渡す。この習慣には、協働するうえでの配慮が表れます。ただし、一度の返信や一つの検査値から、仕事の能力全体を断定することは避けたい。観察した行動を、具体的な改善に結びつけることが大切です。

能力が高くても、周囲を傷つける振る舞いが続けば、組織全体がその人への対応に追われます。いわゆる「ブリリアントジャーク」と呼ばれる問題です。私も、影響力の強い人の周囲で派閥が生まれ、会社の中に別の会社ができたように分断される場面を見てきました。専門性を尊重しながら、他者への振る舞いにも責任を求める必要があります。

動けない理由を理解すると 支援の方法が変わる

ー【紙谷】指示を待ってしまう人や、先延ばしをする人には、どう関わりますか。

ー【大芝】まず、その仕事の目的が本人の中でどう理解されているかを確かめます。夏休みの宿題を例にすると、親に催促されて取りかかるうちに、いつの間にか「親が管理する課題」のようになってしまうことがあります。

漢字の書き取りなら、「何のためにやるのだろう」「覚えた漢字を忘れにくくするには、どう取り組めばよいだろう」と話してみる。本人から「何回かに分けて繰り返す」という考えが出れば、「では7月にはどこまで進めようか」と、自分の計画へつなげられます。

動機づけの研究では、活動そのものが面白いという内発的な動機と、その活動の価値を理解して自分で引き受けることを区別します。仕事には、それ自体は楽しくなくても必要な作業があります。その意味に納得し、進め方に関与できることが、自律的に取り組むうえで大切なんです。

ー【紙谷】宿題の話は、新しいご著書にもつながっていますね。

ー【大芝】はい。以前、難関大学を卒業した知人に、夏休みの宿題をどう進めていたか尋ねたことがあります。「母親に、遊ぶなら宿題をしてからと言われ、そのとおりにしていた」と。さらに、「8月末に焦って追い込まれる感覚が嫌だった」と話していました。

その人は、最後に焦る不快感を避けるために、早く動いていた。感情が行動の先送りに働く場合もあれば、着手を促す場合もあるんです。同じ「やるべきこと」に向き合っていても、何を負担と感じ、どの状態を避けたいのかが違います。

大人になると、宿題が企画書や経費精算、片づけ、健康診断、勉強や運動に変わります。期限直前の提案資料では、お客様への価値を吟味する余裕が失われ、提出できる形に整えることへ意識が集中してしまう。先延ばしを扱う意味は、仕事の質を考える時間を取り戻すことにもあります。

ー【紙谷】ご著書では、先延ばしの背景をどのように整理したのですか。

ー【大芝】『感情のブレーキを外してすぐやる人に生まれ変わるレッスン』では、不安を避けたい、完璧を求めすぎる、意味や目的を感じられない、心身のエネルギーが不足している、という四つの観点から考えています。固定的な人物分類ではなく、いま行動を妨げているものを見つけるための整理です。

同じ「着手していない」でも、失敗への恐れが強い人と、疲弊して考える余力が残っていない人では、必要な関わり方が異なります。小さく試せる範囲を設けるのか、完成の基準を合意するのか、目的を確かめるのか、休息や負荷調整を優先するのか。行動の背景を見て、支援を選びます。

子どもや部下に「早くやりなさい」と繰り返したくなったときも、「どこで止まっているのか」「何が始めにくいのか」を聞く余地を持ちたい。本人がまだ言葉にできていない障壁を、一緒に明らかにしていくんです。

ー【紙谷】日常生活でも、実践できそうですね。

ー【大芝】片づけもそうです。どこから始めればよいかわからない、捨てて後悔するのが怖い、全部を完璧にしたい。背景はさまざまです。机の紙を一枚整理する、パソコンのデスクトップのファイルを一つ移す、使っていないアプリを一つ消す。その人が選べる大きさまで行動を小さくします。

私自身にも、週末の仕事を翌週へ送ったり、整理を後回しにしたりすることはあります。重要でも緊急性が低いことを、目の前の仕事の後ろへ回してしまうんです。書きながら自分でもレッスンを試して、以前より着手しやすくなった場面がありました。著者も、自分の課題に向き合いながら書いています。

担当編集者から、契約したものの足が遠のいているジムの話も聞きました。制作中には、その方がまたジムへ行けるようになることを、私の中で小さな目標の一つにしていたんです。本に関わってくださる、目の前の一人にも役立ってほしいと思いました。

人の変化を 組織の成果へつなげていく

ー【紙谷】そうした支援は、組織の中でどのように広がってきたのでしょうか。

ー【大芝】経営者が受けてくださり、次は役員、その次は社員へと紹介していただくことがありました。最初の取材でお話しした頃には、2年間で500名以上からご依頼をいただき、その後、累計では1,000名を超えています。

検査を受けて終わるのではなく、結果と現実の課題を照らし合わせます。経営者が意思決定で何を抱えているのか、幹部との期待にどんな隔たりがあるのか。フィードバックでは、数値を説明するだけでなく、現場で変えられる行動まで具体化することを重視しています。

EQを使って組織づくりに取り組んだ企業が、社員8名から60名へ成長した例もありました。事業の成長には、経営判断、採用、市場環境など複数の要因が関わります。その中で、規模の拡大に合わせて、相互理解や役割、意思決定の仕方を整えることに、EQを役立てていきたいんです。

ー【紙谷】売上との関係は、どのように考えていますか。

ー【大芝】経営者の判断や対話が変われば、営業や組織の成果につながる可能性はあります。ただ、売上が一律に何%伸びると約束できるものではありません。まず、何が事業の前進を妨げているかを特定する。判断が止まっているのか、情報が届いていないのか、任せる範囲が曖昧なのか。そこに働きかけ、変化を確かめます。

私にとって、経営で学んだサイエンスの姿勢とは、説明のつく仮説を置き、現実と照合し、違えば修正することです。気持ちが前向きになったという実感と、実際に仕事が進んだという変化の両方を見たいと思っています。

話す 聞く 考える その基礎を磨き続ける

ー【紙谷】ご自身は、どのように仕事の力を磨いているのでしょうか。

ー【大芝】車の基本性能を「走る・曲がる・止まる」と考えるように、仕事の基礎を「話す・聞く・考える」と捉えています。複雑な課題に向き合うほど、この基礎の精度が問われます。

私は話すことが比較的得意なので、意識して聞く経験を増やしたくて、「The Keyperson」の取材にも取り組んできました。相手の話を聞きながら、自分が用意していた理解を修正する。何を成し遂げたかだけでなく、どんな葛藤の中で決めたのかを聞く。その経験が、相談の場でも生きています。

考える力についても、論理を組み立てる、前提を疑う、別の可能性を構想する、という異なる働かせ方を意識しています。ひとつの得意な考え方に固執しないことが大切だと思うんです。

ー【紙谷】考えたことを、行動へ移す工夫はありますか。

ー【大芝】今日できることは、できるだけ今日着手する。ただ、気分が乗らない日もありますから、最初の動作を小さくしておきます。例えば、走ろうと思っても億劫なとき、まずスパッツを履くんです。硬くて履くのに手間がかかるのですが、履いてしまうと「ここまで準備したのだから」と、走りに出やすくなる。自分の反応を知り、着手しやすい条件をつくっています。

ー【紙谷】以前お聞きした、「まず取りかかること。始めれば半分はできたようなもの」という言葉を思い出します。

ー【大芝】読書も、一冊を読み切ろうとすると構えてしまいますが、まず開いて読み始める。すると関心が動いて、そのまま読み進められることがあります。意欲が高まるのを待ち続けるより、自分が始められる入口を探してみるんです。

誰もあなたを知らないと言われて それでも10万文字を書いた

ー【紙谷】その行動力は、出版への挑戦にも表れていますね。最初から、本を書きたいと思っていたのですか。

ー【大芝】会社員の頃は、一度も考えたことがありませんでした。出版につながる人脈も、文章を専門的に学んだ経験もありません。起業して、周囲の経営者が、自分の問題意識や社会に実現したいことを本にしている姿を見て、初めて「自分もいつか」と思うようになりました。

ただ、最初は何を書くのかがなかったんです。IT企業での経験はあっても、同じような経歴の人はいる。自分が読者に何を渡せるのか、答えられませんでした。EQを学び、組織で使う中で、ようやく伝えたいテーマが定まりました。

制度や仕組みを整えても、失敗への恐れや不信、評価されない悔しさが置き去りになっていれば、行動は変わりにくい。現場で抱えてきたしんどさを、理解し、働きかけられるものとして整理したい。その手がかりを、直接お会いできない方にも届けたいと思ったんです。

ー【紙谷】出版の相談をしたときには、厳しい言葉もあったそうですね。

ー【大芝】「大芝さんのことは、世の中の人は誰も知りません」と言われました。認知度は5段階で1。現時点では商業出版は不可能だ、と。Xのフォロワーが1万人いたとしても、それだけで本が売れる根拠にはならないという話でした。

落ち込みました。ただ、その方は、テーマの時流性、専門性や実績、競合に対する優位性、認知度という、出版を判断する視点を示してくださった。出版社が費用と人員を投じる以上、期待に応えられるだけの根拠が必要です。その判断は誠実だったと、今も思っています。

そこで、「では、自分に変えられるものは何だろう」と考えました。認知度はすぐには変わらない。でも、経験を整理し、原稿をつくることはできる。まず『DX時代のIT導入マニュアル』をカスタム出版でつくりました。大きく売れず、重版にも至りませんでしたが、本づくりの全工程を経験できました。

ー【紙谷】カスタム出版と商業出版では、どのような違いがあるのでしょうか。

ー【大芝】カスタム出版は、企業が費用を負担し、伝えたい知識や事業の考え方を本にする出版形態です。私の場合も、会社として費用を負担しました。一方、商業出版では、出版社が制作や販売にかかる費用と、その本が売れるかどうかの事業上のリスクを引き受けます。

商業出版を目指すときには、自分の経験を本にしたいという思いに加えて、誰にどんな価値が届き、どれだけの読者に必要とされるのかを、出版社にも判断していただく必要があるんです。

ー【紙谷】カスタム出版での一冊から、何を学びましたか。

ー【大芝】本づくりは、システム開発とよく似ているということです。誰が何のために使うのかを定め、構成を設計し、書いて、レビューを受ける。著者自身には見えていない論理の飛躍や、説明の不足を指摘していただき、校正や根拠確認を経て世に出す。最初の一冊は、その後を書くための土台になりました。

ならば次は、EQを組織に取り入れるというテーマで、一冊分を先に書いてみよう。そう決めて、およそ10万文字を書き上げました。出版してくれる会社が見つかる保証はありませんでした。

ー【紙谷】誰にも読まれないかもしれない原稿に、それだけの時間を注いだのですね。

ー【大芝】ええ。効率だけを考えれば、合理的とは言い切れない行動です。それでも、当時の私には、実物を示すことが、自分の考えに責任を持つ方法でした。エンジニアが動く試作品をつくるように、「このテーマについて、ここまで考えています」と伝えられるものを用意したかったんです。

知られていない自分にも、現場で受け取ってきたものはありました。懸命に働く人の言葉や、組織の中で解けずに残った問いです。それを、自分の経験だけで終わらせたくなかった。原稿にすれば、まだ会ったことのない誰かが、自分の状況を理解する手がかりにできるかもしれないと思いました。

企画書と原稿を持って、いくつかの出版社に相談しました。そして、日本実業出版社が受け止めてくださった。それが、商業出版としては私にとって1冊目となる『組織の感情を変える』です。『DX時代のIT導入マニュアル』で本づくりを経験し、その土台の上で、出版社が費用と販売のリスクを引き受けてくださる出版に、初めてたどり着きました。

ー【紙谷】決まったとき、最も強く感じたことは何でしたか。

ー【大芝】感謝でした。誰に読まれるかもわからなかった10万文字を、読んでくださった人がいた。そして、この問題意識を本にして届ける価値があると判断し、自分たちの時間や仕事を託してくださった。

本の表紙には、著者として私の名前が載ります。でも、その一冊が存在するためには、私の名前の横には載っていない、たくさんの方の仕事が必要でした。編集者が問いを返し、文章を整え、デザインや校正に携わる方が一冊として磨き上げる。営業の方が書店へ届け、書店員さんが置き場所をつくってくださる。その先で、読者が自分の時間を使って開いてくださる。

「誰もあなたを知らない」と言われたところから、誰かが原稿を読み、次の人へ渡してくださった。そのつながりの中に、今の自分がいます。実績について語るときに、その人たちの存在を省いてしまったら、自分がどうやってここまで来たのかを、正確には語れないと思うんです。

一冊の本を 誰かの生活の中で役立つものに

ー【紙谷】商業出版として2冊目の『感情リテラシー事典』は、出版社からのお声がけだったそうですね。

ー【大芝】フォレスト出版の編集者から、Facebookでメッセージをいただきました。社内で企画を進めているので、一度話したい、と。自分から持ち込んだ、商業出版1冊目の『組織の感情を変える』とは、まったく違う始まりでした。

その本づくりで実感したのは、専門家として知っていることと、読者が手に取って使える本をつくることの違いです。私は、伝えたい知識から考えやすい。編集者は、読者が何に困り、どんな形なら日常で使えるかを考える。事業開発でいう、プロダクトアウトとマーケットインの視点が重なったんです。

感情に名前をつける方法、記録する方法、多くの感情語を見渡せる見せ方を、一緒に検討しました。「机の上に置いて、何度も開ける事典にしよう」という発想も、その過程で生まれました。編集者は、著者の専門性と読者の生活をつないでくださる存在なのだと感じました。

ー【紙谷】その本が、海外でも読まれるようになった。

ー【大芝】日本で書いたものが、別の言葉の表紙をまとい、海外の書店に並んでいる。今でも、不思議な感覚があります。国内では7刷、累計発行23,000部となり、韓国版は4刷。タイ、台湾でも刊行されました。出版社、翻訳、流通に関わる方々が、それぞれの場所で仕事をしてくださった結果です。

韓国のSNSや動画、ECでの反応にも触れました。感情に名前をつけるという切り口や、ITの出身者が感情を整理することに関心を持っていただけたように感じています。読者の受け止め方を知ることで、自分では当然だと思っていた専門性の、別の価値にも気づかされました。

海外へ出たことで、学び直したこともあります。2026年8月に体験を振り返った時点では、韓国で版が進む一方、タイは大手書店やSNS、コミュニティで少しずつ紹介が広がる段階でした。同じ本でも、同じ速度、同じ方法では届かない。文化や生活習慣、流通、読者が関心を寄せる文脈まで理解する必要があるんです。

以前、仕事でタイを訪れた際に、人の優しさやホスピタリティに触れました。だから、現地の方にも役立てていただけるよう、日本からできることや、現地を訪れる機会を考えていきたい。ベトナム、中国、インド、ヨーロッパ、アメリカにも、いつか届けられたらと思います。実現には、それぞれの地域を知る方々の力が必要です。

ー【紙谷】本が広がることで、どのような変化が生まれてほしいですか。

ー【大芝】言葉の違う国でも、人間関係に悩み、家族に気持ちを伝えられず、自分自身の感情に戸惑う人がいる。その方が、「自分が感じていたものには、名前があったんだ」と理解できる。そして、次の会話や行動を少し変えられる。そういう使われ方をしてほしいです。

『組織の感情を変える』で、経営者が部下とのやり取りを捉え直す。『感情リテラシー事典』で、自分の悔しさや不安に気づく。『感情のブレーキを外してすぐやる人に生まれ変わるレッスン』で、先延ばしにしていたメールを一通送ってみる。本の価値は、読者が開いた後の、その人の時間の中で生まれるのだと思います。

だから、書いて終わりにはしたくありません。重版を目指すのも、可能性を信じてくださった出版社や編集者に応え、必要な人へ届け続けたいからです。編集者が注いでくださった時間を、誰かの役に立つ時間へつなぐ。その責任は、著者として持ち続けたいですね。

本を書くたびに、知識の不足や説明のわかりにくさが見つかります。海外へ出れば、その国を何も知らない自分に戻る。それでも、わからないことを調べ、誤りを直し、人の力を借りて、少しずつ届けられるものを増やす。その過程に、仕事を続ける意味を感じています。

商業出版として3冊目となる『感情のブレーキを外してすぐやる人に生まれ変わるレッスン』の発売を1か月後に控えたときも、最終原稿を何度も確認しながら、表紙がどんなデザインになるのかを楽しみにしていました。書いた言葉が、一冊の本の姿になっていく。その過程には、毎回、初めてのような期待があります。

もう会えない人に 今だから伝えたい言葉がある

ー【紙谷】人が注いでくれた時間に応えたい。その姿勢には、ご家族から受けた影響もあるのでしょうか。

ー【大芝】父の影響はあると思います。父は、言ったことを必ず守ってくれる人でした。私が「有言実行」を大切にしているのも、その姿を見てきたからです。

約束をすると、相手はその言葉を前提に、次の行動を決めます。時間を空けたり、別の選択肢を手放したり、大切な判断をしたりする。だから、自分の言葉に責任を持つということは、相手が託してくれた時間や期待を大切にすることでもあるんです。父から受け取ったものが、今も仕事の判断基準になっています。

ー【紙谷】今、もう一度会えるとしたら、誰に会いたいですか。

ー【大芝】亡くなった祖父です。優しさの象徴のような、私にとって理想のおじいさんでした。祖父は、「人生はあっという間だぞ」という言葉を残してくれました。92歳で亡くなった人の言葉ですから、その重みが、今も心に残っています。

仕事をしていると、来月、来年、5年後という予定を立てます。けれど、大切な人に会える時間や、感謝を伝えられる機会まで、その予定の中に確保されているわけではないんですよね。「落ち着いたら」「もう少し形になったら」と考えているうちに、渡せなくなる言葉もある。

ー【紙谷】もし今、お祖父さまに言葉が届くなら、何を伝えたいでしょう。

ー【大芝】「教えてくれたことを、今も使って生きているよ」と伝えたいです。人から愛されることの尊さも、人生を後回しにしない大切さも、祖父が教えてくれました。

本を書いたことも、仕事で出会った人のことも、今の自分の言葉で話せたらと思います。でも、いちばん伝えたいのは、「ありがとう」なんですよね。祖父がどれほど大切なものを渡してくれたのか、今だから言葉にできることがある。それを聞いてもらいたい相手には、もう会えない。

会えなくなった後にも、感謝は深くなっていくんですね。祖父がいない人生を生きながら、祖父から受け取ったものに気づく。言葉にしたいことが増えていく。その寂しさは、何かを成し遂げれば埋まる、というものではないのだと思います。

ー【紙谷】その感謝を、これからどのように持ち続けていきたいですか。

ー【大芝】今、関われる人への接し方にしていきたいです。誰かの話を、わかったつもりで途中で閉じない。その人が大切にしているものを、できるだけ丁寧に受け取る。引き受けたことに、誠実に向き合う。

祖父はもういません。でも、祖父から受け取った優しさまで、この世界からなくなってしまったわけではない。私が誰かに向き合う時間の中に、その優しさを少しでも残せるなら、祖父から受け取ったものは、私のところで終わらずに済みます。

直接は渡せなくなった「ありがとう」を、これから出会う人に、言葉や行動で手渡していく。そんなふうに仕事をしていけたらと思います。いつか祖父に報告できるとしたら、「あなたから受け取ったものを、ちゃんと次の人に渡せたよ」と言える自分でありたいですね。

5年先へ残す仕事と 目の前の一人に向き合う時間

ー【紙谷】祖父から受け取った時間の感覚と、以前お話しされていた「5年先の自分へのギフト」は、どうつながりますか。

ー【大芝】今いただいている仕事は、数か月前の提案や、それまでの信頼が形になったものです。だから、目の前の仕事を大切にしながら、5年後に何が残るかも考えます。メディア、本、事業への支援、学び続ける時間。今すぐ成果が見えなくても、将来の自分や、まだ出会っていない誰かの力になるものを積み重ねたいんです。

同時に、5年先のことを考えるために、今、目の前にいる人を後回しにしてよいわけでもありません。顧問の60分も、その方が自分の時間を切り出して託してくださる60分です。困っていることを整理し、面談の後に何をすればよいかが見えるところまで、誠実に使いたいと思っています。

ー【紙谷】実際の顧問やメンタリングでは、どのように伴走するのですか。

ー【大芝】経営者やCTOの方とは、月1回60分のオンライン面談を基本に、現状、判断すべきこと、次の行動を整理します。誰に、何を、いつまでに伝えるのか。何を任せ、どこを確認するのか。前回から試したことと、その結果も一緒に検討します。

経験が役立つ場面では具体的に助言し、ご本人の考えを整理する必要があるときは、問いを重ねます。例えば、経営者が開発状況をつかめないなら、欲しいのは詳細な技術説明なのか、納期の見通しなのか、予算や優先順位の判断材料なのかを明確にする。双方に必要な情報をつなぎ直します。

責任のある立場ほど、人に答える機会は多くても、自分の迷いをそのまま話せる機会は少ないことがあります。「ここがわからない」「この判断には確信が持てない」と言える相手でありたい。その対話を通じて、ご自身で判断できる範囲を広げていきたいですね。

誰かと働く時間に もう一度希望を持てるように

ー【紙谷】これから、どのような組織を増やしていきたいですか。

ー【大芝】人が、本来持っている力を、お客様や、よいサービスをつくることに使える組織です。急成長企業で働いていた頃、まだ組織が小さかった時期には、少人数で成果を出そうと、みんなが一生懸命でした。仕事の時間を離れても「こんなプランはどうだろう」と話が出る。よいものをつくることに、自然に意識が向いていました。

ところが、会社が大きくなるにつれて、「あの人は頼りにならない」「この仕事は誰がやるのか」と、社内の人への不満や調整が意識を占めていった。仕事そのものに没頭できていた充足感が、失われていく感覚がありました。

トラブルへの対応にばかり注意が向くと、黙々と力を尽くしている人への支援が後回しになることもあります。教室でも、一部の問題への対応に追われ、ほかの子が必要としている助けを見落とすことがあるでしょう。組織でも、声の大きさだけで支援の優先順位を決めないようにしたいんです。

ー【紙谷】同じ目標に向かって力を出し合えるときの充実感は、特別ですよね。私も、気がかりなことがあると仕事に集中しにくくなるので、よくわかります。

ー【大芝】そうなんです。一緒に働くことのよさを知っているから、その時間を取り戻したい。関係や役割を整えることで、互いを警戒することに使っていた力を、仕事へ戻していく。そのために、ITの経験、問題解決の力、経営で学んだ検証の姿勢、EQを使っていきたいと思っています。

現在は、訪問看護、歯科医院、医療法人、女性が多い職場など、IT以外の組織にも関わっています。業種も構成も異なりますが、不安や、評価されない悲しさ、変化への恐れに向き合う必要はあります。DXやAIの導入でも、「自分の仕事はどうなるのか」という問いを置き去りにせず、仕事と役割の変化を話し合うことが大切です。

私たちは、人との衝突に直面してから、感情をどう扱えばよいかに悩むことが少なくありません。それまでに学ぶ機会を、もっと届けたいんです。上司との関係に行き詰まり、退職代行という手段を選ぶ状況にも、組織に関わる者として考えさせられます。自分の気持ちを伝え、相手の事情を聞き、必要な調整をする。その方法を、関係が傷つく前から学べるようにしたいですね。

運動でも、子育てでも、親しい人との関係でも、感情は日々の選択に関わっています。仕事で身につけた理解を、生活にも持ち帰れる。感情を扱う方法を、年齢や立場を問わず学べるようにしていきたい。「EQを日常や組織で使える形にした人の一人だった」と思っていただけたら、それは、生きて仕事をしてきた証の一つになると思います。

ー【紙谷】最後に、今、一人で課題を抱えている方へ、言葉をお願いします。

ー【大芝】組織がうまくいかないとき、その問題をすべて自分の力量の不足として背負ってしまう方がいます。でも、確かめるべきことは、もっと具体的です。役割や権限は整っているか。必要な情報は届いているか。互いに違う前提で話していないか。一つずつ整理すれば、働きかけられる場所が見つかるかもしれません。

私も、自分一人では進めなかった人間です。誰に読まれるかわからなかった原稿を、読んでくださった人がいました。自分の言葉を、その先へ渡してくださった人がいました。その経験があるから、今、目の前で話している方の可能性を、現在の困りごとだけで判断したくないんです。

まだ、うまく説明できなくても構いません。何に行き詰まり、何を守りたいのか、言葉を探すところからご一緒します。これまで一人で引き受けてきたことを、次は一緒に考えましょう。あなたがこれから使う時間を、もう一度、大切にしたかった仕事へ向けられるように。

大芝義信に相談する

経営の意思決定、CTOとしての役割、幹部やメンバーとの関係、感情を生かした組織づくり。今、行き詰まりを感じていることをお聞かせください。相談内容が整理できていなくても構いません。現在の状況を伺い、支援できる内容と進め方をご案内します。

大芝義信に、いまの課題を相談する

フォームには、現在の状況や困っていることを、書ける範囲でご記入ください。よろしければ「The Keypersonの大芝義信インタビューを読んだ」とお添えください。

BEYOND THE INTERVIEW

KEYPERSONの素顔に迫る20問

仕事のその先にある、価値観と日常。

01出身地は?
東京都八王子市です。
02趣味は?
リアリティショーを見ることです。自分では経験できない環境にいる人が、何を感じ、どう判断するのかに関心があります。誰が最後まで残るのかを推理しながら、物語と人の変化を楽しんでいます。
03特技は?
性質の異なる課題を、並行して考えることです。30〜40社、およそ200人の方と関わりながら、異なるテーマの仕事を進めていた時期もありました。一つのことだけを続けるより、複数のテーマを行き来する方が、自分には合っています。プログラマー時代にも、帰宅後に個人でフリーソフトを開発していました。ネットワーク監視の「AirG_PC監視」が「窓の杜」に掲載されたことは、今も嬉しい記憶です。
04カラオケの十八番は?
スキマスイッチの「奏」や、平井堅さんの曲です。最初の一曲には、サザンオールスターズの「希望の轍」を選ぶことも多いですね。
05よく見るYouTubeは?
「REALVALUE」「BreakingDown」「Nontitle」「PIVOT」などを見ます。バラエティでは「佐久間宣行のNOBROCK TV」「ジャルジャルアイランド」も好きです。ビジネスから笑いまで、幅広く楽しんでいます。
06座右の銘は?
「有言実行」です。言ったことを必ず守ってくれる父の姿から学びました。相手は自分の言葉を信じて、時間を使い、次の判断をします。その信頼に応えることを、仕事でも大切にしています。
07幸せを感じるときは?
取材に参加したメンバーと、帰り道に「すごい存在感だった」「いい刺激を受けたね」と話しているときです。同じ人の話を聞いても、心に残ることはそれぞれ違う。その感想を交わす時間まで含めて、取材の魅力だと思います。
08今の仕事以外を選ぶとしたら?
ファッションが好きなので、バイヤーやセレクトショップの経営に興味があります。
09好きな漫画は?
『HUNTER×HUNTER』です。アニメは10回以上繰り返し見ています。特にキメラアント編が好きで、人の心の機微や、誰かを信じる力、人を思うことの尊さに触れるたび、心を動かされます。
10好きなミュージシャンは?
米米CLUBとBOØWYです。BOØWYは中学生の頃からずっと好きで、私にとって特別なロックバンドです。
11今、一番会いたい人は?
亡くなった祖父です。92歳で亡くなった祖父が残した「人生はあっという間だぞ」という言葉と、人から愛されることの尊さを、今も大切にしています。今の自分の言葉で、もう一度、感謝を伝えたいです。
12どんな人と一緒に仕事したい?
お互いを高め合える人です。仕事の仕方や姿勢に、自分も取り入れたいと思えるものがあると刺激を受けます。自分の経験も相手の役に立ち、相手からも学べる。そういう関係を築きたいですね。
13社会人になって一番心に残っている言葉は?
ある会社で役員を務めていたとき、CFOから、独立せずに会社にいるのは、自分でやっていく自信がないからではないか、と言われたことです。私には、自分は何を引き受ける覚悟があるのかと、問われるような言葉でした。会社に勤めることと独立することに、優劣があるとは思いません。そのうえで、自分の選択に責任を持てるようになりたいと、学びと実践を重ねました。創業から年月を経た今、その言葉を、自分への問いとして捉え直しています。
14休日の過ごし方は?
自分の状態を整える時間に使うことが多いです。サウナや美容院に行ったり、必要な受診をしたり。日々の仕事を続けるためにも、自分のメンテナンスを大切にしています。
15日本以外で好きな国は?
エストニアとフィンランドです。街の石畳の美しさ、サウナ、クラフトビールが印象に残っています。ミサに参加し、皆で歌う文化に触れたことも、よい経験でした。
16仕事の中で一番燃える瞬間は?
周囲が驚くような企画を思いつき、それを形にできたときです。「The Keyperson」で取材を実現できたときや、書籍の発行部数が2万部を超えたときも、自分の取り組みが広がっていく実感がありました。その先に、次は何を届けられるだろうと考えることが好きです。
17息抜き方法は?
サウナです。仕事から少し離れ、心身を切り替える時間にしています。
18好きなサービスやアプリは?
スマホゲームが好きです。最近は十分に遊ぶ時間を取りにくいのですが、「モンスターストライク」「ONE PIECE バウンティラッシュ」「パズル&ドラゴンズ」などは、今もガチャを引いて楽しむことがあります。
19学んでみたいことは?
日米の株式市場について理解を深めたいです。企業の事業と、経済や技術の変化がどうつながっているかを、自分ごととして考える機会になります。例えば、AIの普及でデータセンターが増えたら、電力需要や関連企業にはどのような影響が及ぶのか。そうした関係を考えることが、経営の視野を広げます。企業が四半期ごとに成果を示すように、自分も学びを実践し、成果を外へ伝え続けたいと思っています。
20読者に期待する反応は?
現在3つの事業を手掛けていますので、それぞれに関してお問い合わせいただけると嬉しいです。

①技術顧問・コーチング・メンター
技術責任者にシステムを一任していて、経営者が介入できずにブラックボックス化しているといった課題を感じている方、担当者の急な退職リスクや不明瞭なインフラコストなど、不安を感じている経営者の方のご相談をお待ちしています。

②メディア事業(インタビューコンテンツ制作)
今後、AIがさらに普及する中でも、人の想いを伝えるテキストインタビューの価値は高まると考えています。企業のPRや採用活動において、プロフェッショナルな聞き手とカメラマン、制作スタッフが最適なコンテンツを制作します。

③EQ(感情知性)の組織導入支援
人の行動は感情に大きく左右されます。EQを組織に導入し、感情の取り扱い方を学ぶことで、離職率の低下や生産性の向上に繋がります。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

記事制作クレジット

取材・構成・ライティング/紙谷由美子 撮影/原哲也

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