保険業界の貴公子、津崎桂一が描くSEIMEI保険キングダム統一への路

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氏名 津崎桂一
肩書 SEIMEI株式会社
Founder & CEO
出生 1983年8月13日
略歴 開成中学・高校から東大法学部というエリートコースを進むも、受験後に「燃え尽き症候群」に。飲食業、メディア事業などの失敗と同時に、保険セールスでは成功を収め、「生命保険業務の音声辞書」システムの開発を皮切りに生命保険業界の変革に挑む。羽生結弦選手のコスプレイヤーとしても有名。

日本の保険業界って現状どういう状況だと思いますか?生命保険市場だけみても、市場規模47兆円をわずか42社の生命保険会社が分け合う巨大な寡占市場です。魅力的な市場であるにも関わらず、規制の強さから業界におけるイノベーションはほとんど起こっていません。約10年前にインターネット専業の生命保険会社が話題にはなったものの、業界を変えるような大きなインパクトは未だ現れず。InsurTechは世界的には大きなトレンドであり、海外では急成長するサービスが生まれている一方、日本はほぼ無風状態。そのような日本を変えようとしている保険業界の注目起業家を、昨年の第1回インタビューに引き続き、ご紹介したいと思います。

生命保険セールスには、MDRT・TOT会員と言われる世界的な資格があるのをご存じでしょうか?生命保険営業パーソンの中でも、1年間の新契約年間保険料2億円以上という高い入会基準があり、日本では国内125万人いる生命保険募集人中の上位0.01%にあたる130人しか2019年度の会員がいないこのTOT会員資格を、週1稼働だけで達成したのが、保険業界の貴公子こと津崎桂一氏です。

TOT会員であるということはそれだけでトップクラスの高収入を得ているにも関わらず、新たに別会社を1から立ち上げ、ハードな起業家としての生き方を選択したその根底には一体何が?津崎氏の経営するSEIMEI株式会社が満を持してリリースした新サービス「SEIMEI」の全貌とともに、津崎氏の見ている保険業界の課題感や将来展望についてインタビューさせていただきました。

保険業界は未だにキングダムと同じ世界?

今回THE KEYPERSONの取材は2回目となりますね。前回は、新しいサービスをちょうどリリースする前のタイミングでしたが、状況はいかがですか?

はい、前回は確かSEIMEIの音声認識技術の基盤を開発しているところだったと思うのですが、その後ベータ版をリリースすることができました。現在は、実際に保険代理店に使って頂いてユーザーテストをしている段階です。

おぉ、おめでとうございます。サービスの詳細を教えてください。

今回リリースしたSEIMEIは、保険代理店を対象とした、複数保険会社業務情報の一括検索を可能とするツールです。保険業界では、保険提案の際に照会しなければならない業務情報が膨大にあります。例えば、見込客の持病によって保険に加入できるかどうかという医的引受目安情報がありますが、この情報は生命保険会社ごとに異なります。

今これをどうやって調べているかというと、保険営業パーソンはその都度紙の資料やPDFを各生命保険会社ごとに1社ずつ調べるということをやってるんですよね。これは非常に時間がかかります。SEIMEIはこのような非効率な業務の自動化を行うためのソフトウェアです。

ユーザーはこのマイクボタンをタップして、調べたい項目を話しかけるだけです。例えば、「胆石」のような見込客の疾患について調べて頂きます。

表示させる生命保険会社を変更したい場合はこちらの画面で選択します。ここでチェックした生命保険会社の業務情報だけが表示されます。

現在の機能はこれだけ、非常にシンプルなサービスになっています。 SEIMEIが提供している価値を一言で表すと、「保険会社何社分の業務情報であっても3秒以内にダイレクト検索できる」ということになります。

そのサービスを作ろうと思った背景は?

日本の保険業界は生保42社損保30社がそれぞれ自社の独自フォーマット書式や独自の事務オペレーションで動いているんですよ。漫画「キングダム」の世界のように、それぞれの国が独立して存在していて、国ごとに長さや重さの単位が全く違うような感じなんですよね。例えば、健康診断書の有効期限や高齢者の定義も各社違っていて、異なっていること自体は構わないのですが、それを一括検索する手段がありませんでした。

これだと複数保険会社商品を取り扱う乗合保険代理店の業務は円滑にまわりません。一方、アメリカだとアコード標準書式という保険会社共通の統一フォーマット申込書があって、その書類1枚だけでほとんどの保険会社の商品に申込が可能だったりするんです。

日本は少子高齢化で保険市場自体の成長は期待できません。この状況下で保険代理店や保険会社が利益を出していくためには、売上トップラインを2倍にすることを目指すよりも、事務コストを半分にする方が圧倒的に簡単です。

実際、現場の保険営業パーソンが一番面倒だと思っているのは事務作業です。SEIMEIの最初のソリューションとして一括で複数社の情報検索ができるようになれば、事務コストは大きく削減することができます。これは僕自身が実際に保険セールスをやってきた中でずっと感じていたペインです。自分自身の課題を解決しようと思ったのが一番大きい理由ですね。

サービスの反響はいかがですか?

サービスは一見とても地味なんです。投資家に話してもピンと来ない方が多いですね。だからこそ逆にこのサービスは勝てると感じます。分かりやすいサービスは、誰でも模倣できるサービスでもありますからね。 SEIMEIは保険セールスを長年やってきた僕だからこそ気づくことができたニーズで、ニッチなのは事実ですが、初期ユーザーには強く刺さっています。

業界トップクラスの大規模保険代理店数社にはすでに導入が決まっていまして、感触も良いですね。初期戦略としては、来店型保険ショップを初期ユーザーと捉えています。乗合保険代理店は複数保険会社商品を取り扱っているため、事務効率化の課題については切実に感じているところが多いです。大規模保険代理店シェアを独占した後であれば、保険会社にも様々な提案をしやすくなると考えています。

ただ、まだローンチするかどうかという現時点でも保険会社の皆様から注目は頂いているようで、多くの保険会社から「サービスはどうなっていますか?」という問合せを頂きますね笑

これまでいくつかのサービスをトライ&エラーしてきたとのことですが、今回のサービスがこれまでと違う点はどういうところですか?

これまで、自社サービスは4つローンチしていまして、今回5つ目になるSEIMEIも含めると累計で自己資金1億円以上を投資してきました。PMF達成してシリーズA到達するまでは、保険業界トップセールスマンとしての意地で自己資金だけでやりきります。僕がこれまでにトライしたサービスは次の5つです。

その1 確定拠出年金webコンサルティングサービス(構想のみでローンチまで至らず)
その2 保険メディア「オフィスライフ」
その3 法人保険メディア「法人保険ドットコム」
その4 恋愛チャットボット「保険彼氏」
その5 入院給付金請求チャットボット(サービス名称無し)

これらは全て失敗しましたが、SEIMEIと一番異なる点は、SEIMEIは僕自身が使いたいサービスだという点です。今まで失敗したサービスはどれも自分自身はユーザーではありませんでした。創業者としてのこの意識の違いは大きいと思います。

今後競合として意識しているところはありますか?

大手保険会社が100億円とかつぎ込めば勝てないんじゃないの?と投資家に言われることがあります。確かに資本力では当社のようなスタートアップは勝てません。一瞬で負けちゃうと思います(笑)
でも、保険会社がSEIMEIのようなサービスを開発することはあり得ません。日本生命が第一生命の業務情報を掲載するサービスを作れるはずがないのは自明ですよね。なので保険会社が当社の競合になることはありません。
とはいえ当社に構造上の絶対的な優位性があるわけでないのも事実です。良いビジネスアイデアでスタートしても、後発大資本に負けて消えたスタートアップはいくらでもありますから、先行逃げ切りでどれだけ早くマーケット独占できるかですね。

どのようにして競争に勝っていこうと考えていますか?

まず僕はできるだけ競争をしたくないんです。これは僕の人生哲学のようなものです。
早期にSEIMEIが保険会社公認サービスとなることを目指しています。そうなれば当社の将来的な競合他社が同じサービスを提供しても、保険会社がその競合他社にもそう簡単に公認を出すとは思えません。なぜなら、保険会社は複数の外部企業に自社業務情報を出したくないと考えることが容易に予想できるからです。「この世に辞書は2つも必要ない」ということですね。
SEIMEIは、潜在的な市場規模が大きくて、かつ入口はニッチなところを攻めていると言えます。この領域で成功したときには独占が待っています。僕は市場選択においては「独占できるかどうか」が全てだと考えています。

サービスのビジネスモデルはどういうものですか?

月額課金のSaaSです。保険代理店の課題を解決した先には保険会社の業務自動化を目指しますが、こちらも原則としては初期費用を頂かず、月額課金SaaSを想定しています。

SEIMEIで到達したいゴールと、会社のビジョンをお聞かせください。

中期目標では5年でIPOできる規模に成長することです。そして最終的なゴールは、保険業界の統一プラットフォームになることです。保険業界の誰もがSEIMEIを利用していて、毎朝仕事を始めるときにはまず最初にSEIMEIにログインする、という世界を作りたいですね。

羽生結弦コスプレイヤーとしてのキャリア論

津崎さんといえば羽生結弦コスプレイヤーとしても活発に活動していますがそちらの展望はいかがですか?

コスプレイヤーとしての展望ですか(笑)。実は、中国に進出するのを考えています。日本のコスプレマーケットではワイドショーにも毎年取り上げて頂いて、もう十分やりきってしまった感があるので。 コスプレっていかにメディアに取り上げてもらえるかが重要なんですよ。中国って羽生結弦さんの人気がとても高いんです。コスプレイヤーとして、中国メディアにどれだけピックアップされるかはいつか挑戦してみたいですね。

津崎さんが考える人生の意味とは?

人生って何を成し遂げられるかが重要だと思うんです。そんなに長くは生きられませんから、自分のやりたいことをやるのはとても重要です。 先日サウナに行ったとき、「人生で何回サウナに行けるのかな」って考えたんです(笑)これって、普段はあまり考えない事かもしれません。人間って漠然と時間は無限にあると考えてしまう生き物ですから。 時間には限りがあると認識すること。同時に、無駄なことに時間を割かないという意識は常に持っています。 これはSEIMEIのサービスとしての理念にも通じています。無駄を省いて、人生をいかに豊かにするかということですね。

津崎さんはご自身の人生の長期プランについてどのように考えているのですか?

僕は保険がとにかく好きなんです。今から9年後の45歳までに保険会社を作りたいですね。45歳からの10年間がフルパワーで働ける最後のチャンスだと思っていて。 保険会社と保険代理店の両方の業務改善システムであるSEIMEIは、いわゆる「胴元」としての立ち位置ですから、多くの保険会社や大規模保険代理店の課題感やユーザーデータがSEIMEIだけに集まってくるようになっています。保険業界プラットフォームとして成功したら、次はこの自社データを基に、究極にデータドリブンな保険会社を立ち上げたいですね。

なぜ生命保険をここまで圧倒的に売ることができるのか?その秘訣は?

僕が1プレイヤーとして人よりも成果をあげられている要因としては、2つあるかと思います。まず一つは意思決定の早さですね。とにかく迷わず決めること。 あともう一つは観察力。保険商談は対面で進んでいくので、お客様がどんな人かを最初の数分で把握するのはとても重要です。

意思決定力と観察力の2つを駆使して、保険営業に割く時間を極力減らしています。僕はここ数年間は保険営業パーソンとしては週1稼働ですが、週5稼働だった頃より売上は高いですね。 単価のコントロールも大切です。僕の顧客層は法人比率ほぼ100%で、「提案ベースで年間保険料5000万円以上」という単価設定をしているので、能動的に単価をコントロールできています。

今、保険業界で最も注目されている男と言って過言ではないと思いますが、最後に保険業界へメッセージをお願いします!

保険業界の共通目標は「顧客本位」ではないでしょうか。 我々保険業界の者が日々の非効率な雑務に追われて「顧客本位の保険」を実現できない現状があるならば、それはSEIMEIのようなテクノロジーで解決していきたいと考えています。 ただ、保険は巨大産業ですから、当社だけではなかなか達成できません。 保険業界全体がよりよくなるよう、皆様の知見をどんどんお借りしたいですし、また、当社を応援して頂けたら嬉しいです。 保険キングダムの統一を目指すSEIMEIにぜひご期待下さい!

Company
企業 SEIMEI株式会社
所在 〒106-0032 東京都港区六本木7-18-18 住友不動産六本木通ビル2階
業種 生命保険業務RPAシステム「SEIMEI」の開発・運営
URL http://seimei.co/



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