SEIMEI株式会社Founder & CEO
羽生結弦コスプレイヤー

津崎桂一

Profile
プロフィール
氏名津崎桂一
会社名SEIMEI株式会社
出生年1983年8月13日
略歴開成中学・高校から東大法学部というエリートコースを進むも、受験後に「燃え尽き症候群」に。飲食業、メディア事業などの失敗と同時に、保険セールスでは成功を収め、「生命保険業務の音声辞書」システムの開発を皮切りに生命保険業界の変革に挑む。羽生結弦選手のコスプレイヤーとしても有名。
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33兆円市場「生命保険」の業務自動化に挑む「InsurTech起業家」津崎桂一

INTERVIEWEE  Keiichi Tsuzaki INTERVIEWER  Masahira Tate

対人観察力を武器に生命保険のトップセールスとして活躍しながら、「保険×IT」のInsurTech起業家へ。事業の失敗を乗り越えて「音声認識による生命保険業務RPA(Robotic Process Automation:ロボットによる業務自動化)」システムを開発するSEIMEI株式会社の津崎桂一CEO。今回のインタビューでは、挫折と学びを繰り返し「掛け算でオンリーワンの仕事をつくる」という起業哲学とそこに至る道程を詳しく聞きました。

インドネシアが第2の故郷

—【聞き手:楯雅平、以下:楯】私たちは『ザ・キーパーソン』というインタビューメディアでして、社会を動かしたり、コミュニティにインパクトを与えたりして「時代を動かすキー(鍵)になるような働き方や生き方をされている人達にお話をうかがっています。生い立ちや起業当時のエピソード、現在の取り組み、将来の展望などを、じっくりお話しいただければと思います。

【話し手:津崎桂一(敬称略)、以下:津崎】わかりました。では、よろしくお願いします。

—【楯】津崎さんのことを時系列にそって教えていただきたいので、まずは子ども時代のことをお聞かせください。お生まれは、兵庫県神戸市ですか?

【津崎】はい、生まれたのは神戸です。家族の転勤で、私が4歳の時にインドネシアの首都ジャカルタに移り住みました。1年中夏のような気候で、毎週プールの授業があったことを覚えています。私は日本人学校に通っていて、そこで週1回インドネシア語の授業がありましたが、今はもうほとんど忘れてしまいましたね。

10歳で東京の練馬に引っ越してから現在まで、インドネシアには25年間も行っていませんが、そろそろ今年中には1回帰りたいなと思っています。

ちなみに、私が取り組んでいる保険のビジネスを海外で展開するのはハードルが高いのです。基本的に各国それぞれの税法の制限を受けますし、途上国の場合はそもそも契約者が銀行口座から毎月お金が引き落とされることに慣れていません。それに、治安が悪いと保険金殺人が起こりやすいなどのモラルリスクもあります。もちろん、インドネシアはもう私が住んでいた頃のような途上国ではなく、急成長している国家ですけれど、すぐに向こうで保険ビジネスを立ち上げる予定はありません。ですが、中長期的にはビジネスを通して自分が育った国であるインドネシアに何かを還元できればと思っています。

受験に勝ち続け、燃え尽きた

—【楯】その後は、開成中学、高校から東大法学部に進まれていますよね? これは本当に超がつくエリートコース、素晴らしい学歴ですね。

【津崎】いやいや、ありがとうございます。開成中学は1学年300人くらい、高校で400人という男子校でしたが、周りを見ても、自分自身のことを見ても、受験には逆算ができる人が強いのだなと思います。私はそれが今も得意で、例えば「合格するにはコレとコレが足りない」という全体を把握して実行する力ですかね。一方で、クリエイティブな方面には必ずしも強くありませんが……。受験勉強のように「これだけやれば良い」という全体範囲を把握してから、それを実行していくのが得意なタイプです。

浪人を含めて、1学年の約半数にあたる200人くらいが東大に行くので、まるで付属校のような雰囲気でしたね。ですから、東大に合格しても先生に褒めてはもらえません(笑)。先生に「受かりました」と報告に行っても「あぁ、そう。おつかれさん」みたいな感じの学校です。

私は1年浪人して大学に入ったのですが「みんなが東大へ行くから、自分も」という感じで選んでしまったこともあり、明確にやりたいこともなく燃え尽き症候群になってしまったのです。勉強に打ち込むこともできなかったので、塾講師などのアルバイトをしていました。その中で、ひとつ大きな転機になったのは、ある接客業で働いたときのことです。

当時の自分は特段人生に困ったこともなく、他人にも興味がないタイプの人間でした。人と話すときも自分の喋りたいことばかり延々と喋っているような……まぁ、「調子に乗っている東大生」にありがちな感じですよ。しかし、それでは客商売で通用するはずはありません。これには完全に打ちのめされましたね。

生き残るために必要だった対人観察力

—【楯】その状態をどのようにして乗り越えられたのですか?

【津崎】真剣にコミュニケーション能力を磨こうと思って、数多くの芸人さんを研究しました。そこから学んで、相手を観察して相手が求めていることを話すように自分を変えていきました。このときに相手を見る力というのが鍛えられたので、今でも対人の観察力だけは誰にも負けない自信があります。

—【楯】どのようなポイントで相手を観察していますか?

【津崎】基本を言うと、男性は服装で、女性は髪型です。例えば、服装がワンパターンな男性は思考もワンパターンです。そこから、表情や仕草、目線の動きなどを「見ていないふり」をしつつ、実は穴が開くほど見ています。私は視力が裸眼で2.0あって、正面を向いていても斜め後ろ45度までハッキリ見えますので……(笑)

私は法人保険セールスに携わっており、日々経営者のお客様とお金の話をします。でも、そこに行き着くまでには周辺の話もしないといけません。保険の営業とはいえ、いきなり「はじめまして、役員報酬はおいくらですか? 資産総額は?」とは聞けません。良い保険商品をご提案できるかは、相手に「他の人には話せないこと」を、本音で話していただけるかが大事なので、ここで「聞く」能力が鍵になってきます。

私の場合はまず「業歴何年目ですか?」という質問から入って、「御社のヒストリーを教えてください」とか「何が成功のポイントだったのでしょうか?」というヒアリングを重ねていく中で、目の前の経営者は事業に対して拡大路線タイプなのか、それとも手堅く税金対策をしたいタイプなのか、という場合分けを自分の頭の中で組み立てながら話しています。

—【楯】観察した後、具体的にどのようにアクションする、トークを展開していく、という基本はありますか?

【津崎】ちょっと横道にそれるようですが、誰かをデートに誘いたい時のことを考えてみましょう。こういったシチュエーションで私が必ず聞くのは「季節の質問」です。夏なら「何か夏らしいことをした?」と聞くと、相手は即答できます。これはとても大切で、相手が答えやすい質問から入ります。経営者の方に「業歴何年目ですか?」と聞くのと同じです。

逆に「どんな男性がタイプ?」というのは答えのバリエーションが多すぎるし、即答しづらい人も多いです。「どんな保険がほしいですか?」といきなり聞かれても、誰もが回答に困るのと同じです。先程の夏の質問なら、だいたい相手は「まだ何もしてない」と答えるので、そこから「何がしたい?」と聞いて、海、プール、花火、バーベキューなどといった選択肢を提示して、相手の反応を見ます。

「この夏何がしたい?」だと抽象的すぎるし、「花火行きたい?」だと具体的過ぎますが、「夏らしいことした?」というYes or Noで答えられる簡単な質問を入り口にして、代表的な選択肢を並べることで相手がグッと答えやすくなります。これで具体的な答えが得られたら、「花火」は「花火大会」のことなのか「線香花火」なのかといった詳細を聞き出していきます。

答えが「花火大会」なら、「あれ、もう8月の半ばじゃん。花火大会って、遅くても9月までしかやっていないよね?」と期限を区切って、「来週行ける花火大会、俺が調べておくね」という話をします。保険セールスにおいても、基本的にこのような組み立てで臨んでいます。

起業に至るまで

—【楯】起業される以前の、社会人としてのご経験は?

【津崎】学生時代に、1学年上の先輩が経営する航空券のオンライン販売企業で働いていました。この時に「ベンチャーっていいな、働くっていいな」と思ったのと「自分は何かを売るのが好き」なのだと気づきました。営業とは「自分が売りたいものを押し売りする」ことではなく、相手の課題をヒアリングして、適切なソリューションを提供することです。自分には営業が向いていると感じたのがこの頃です。

その後、24歳で大学を卒業しましたが、卒業直前まで就職先が決まっていませんでした。同級生が真面目に就職活動をしているときに、私は常に何かしら仕事をしていたので、特に危機感を持たずに卒業間近を迎えてしまいました。そんな時に、高校時代の同期に紹介されてジブラルタ生命の方とお話する機会がありました。

そこで「君はせっかく東大に入ったのだから、就職留年をしてでも、外資系証券会社のような普通の学生では入れない会社に入ったほうが良いよ。でも、生命保険セールスをやったら君は間違いなく売れるから、もし興味があればこの世界も見てみない?」と誘われました。「なぜ、僕だと保険が売れると思うのですか?」と聞いたら「君は品(ひん)が良いから。保険は上品じゃないと売れないし、それは後から身につけられない天性の才能だからね」と言われました。そんなものなのかな? と思いながらも、他に行くところもなかったので、ジブラルタ生命に滑り込みで就職させていただき、4月から働き始めました。

配属されたのは上野の支社で、そこに10ヶ月勤務しました。仕事の主な内容は月額2~3万円の保険を営業していくという、いわゆるイメージ通りの保険営業マンでしたね。当時から現在まで一貫して変わりませんが、相手を観察して、本音でお話しいただいて、良い提案をして、ご契約いただくという流れです。

成績も良かったのですぐに給料が上がりましたが、やはり自分の名前で勝負したいという思いがあって、1年経たずに会社を辞めました。会社に所属している時は、ジブラルタ生命の看板があるから売れていた部分もあるわけです。それを外して、自分一人でどこまでできるのかやってみたいと考えていました。

弱みに気づかず起業し、失敗

—【楯】退職後はすぐに独立起業という流れだったのでしょうか?

【津崎】はい、そうです。最初の事業は飲食店経営で、25歳の時に始めました。新宿と渋谷でダイニングバーをやっていたのですが、これはうまくいきませんでした。やってみてから気づいたのですが、どうやら私は目が良い代わりに鼻が極端に悪いようでして……これはそのままの意味で香りや匂いに鈍感なのです。嗅覚は味覚にも影響するので、これは、もう単純に身体的な理由で、飲食業に向いてなかったという。この事業で失敗したときは本当に貧乏生活で、26歳くらいのときは家賃もろくに払えず銭湯通いで、食費は1日300円というような生活でした。

それで「このままじゃ、ダメだ」という状況になった時に、「生命保険の代理店をやってみないか」と声をかけてくださった方がいらっしゃいました。保険セールスの仕事に戻るとすぐに復活して、28歳くらいの時には1ヶ月に3〜4日間働くだけで人よりお金が稼げるという状況になっていました。片手間の週1稼働でも「MDRTのCOT会員基準」という、業界内トップクラスの成績を毎年達成していますので、セールス実績としては業界内上位0.1%以上には常にランクインし続けていると思います。

でも、お金を稼ぐことだけを目指して働くと、やはりどこかで「結局、何のために生きているのか?」という思いが強くなってしまう時があります。このままだと、気づいたら「西麻布のヒマなおっさん」に確実になっていくなと。時間だけはあったので、この先の残りの人生で何をしようか毎日考えていました。

自分にしかできない仕事はあるか?

—【楯】若くしてトップセールスとなり、超高学歴、184cmの高身長でスタイル抜群のイケメンという津崎さんは、誰から見てもパーフェクトな男なんじゃないかと思いますが(笑)、それに満足しなかった理由というのは?

そうですね。とどのつまり、既に世の中にある金融商品を売るというスキルは、「少ししか売れない」「たくさん売れる」という程度の差こそあれ、私以外の人にもできることです。一定のところまでいくと高止まりして、そこからスケールするわけでもありません。そこで「自分にしか解決できない世の中の課題とは何か」を、改めて考えるようになりました。

2011年頃はソーシャルゲーム黎明期で、立ち上げてすぐに年商100億円という会社もあったので、当時のゲーム業界を見るたびに私からは「隣の芝は青い」ように見え、「自分のいる保険業界はなんて地味なんだ」とうらやましく思っていました。でも、今は、ゲーム市場は競争も厳しくなって、株式市場からの評価も非常に悪いですよね。

翻って、改めて生命保険を見直すと、LTV(Life Time Value)がとても高い、一番強力なサブスクリプションモデルだということに気づきました。個人でも月額数千円~数万円の保険料を、平均して8年もユーザーは支払うわけです。これをソーシャルゲームの「課金」と比べたら、どれほどすごいことかがわかります。ゲームに毎月数千円〜数万円のお金を当たり前に払う人はごく稀ですよね? 生命保険なら全ユーザーがその状態、高額課金ユーザーです。しかも、課金中にサービスを何一つ提供しなくても全然退会しないんです。

自分が保険業界しか知らなかったのでなかなか気づけませんでしたが、今は実に素晴らしい最高のマーケットだと思っています。また、巨大マーケットでありながら、その収益性の高さと、厳しい規制産業であることから新しいチャレンジをやる人は少ないです。競合は少ないどころか、皆無と言っていいですね。ですから、生命保険業界には大きなビジネスチャンスがあります。

私は生命保険という金融商品そのものが大好きなので、ライフワークとしてセールスも一生やっていきたいと思いますが、マーケットとしての可能性を感じているので、やはりこの領域でスタートアップとしてチャレンジしようと思いました。

「紙の資料と蛍光ペンと付箋」の非効率物語

—【楯】生命保険業界は、スタートアップ企業でも大きな事業が作れるとお考えですか?

はい、もちろん。ここから少し、業界の中の話をさせてください。先程もお伝えしたとおり、生命保険は収益性の非常に高いビジネスで、保険料という月額課金から成り立つサブスクリプションモデルの市場です。また、日本においては、わずか41社の生命保険会社が年間約33兆円もの保険料を扱っているという寡占市場でもあります。そして、規制が厳しい認可事業ですから、新規参入のハードルも非常に高い。ですから、それほど業務効率化をしなくても儲かり続けてしまうので、大変多くの非効率が放置されています。言ってみれば、非効率を人海戦術で補ってきた世界なのです。

ですが、間違いなくこれからは変わります。実は、いまだに収益は十分上がっているのですが、人が足りなくなっています。生保レディも高齢化が顕著ですから、今の主力の彼女達が引退したら「誰が保険を売るの?」という状況です。ですから、生命保険会社は強い危機感を覚え始めています。この課題に対して、人手が減っても効率よく事業が回るシステム作りができれば、それこそが私にしかできない事業だろうと思って今の会社を始めました。

生命保険業界は保守的で、実は私自身もまだまだ保守的なところがあります。それは、生命保険という金融商品の構造上の特徴からくるもので、「ミスをしたときに取り返しがつかない」商材だからです。例えば営業が「この保険に入っておけば、要介護1認定になったときに500万円の給付金がおります」と説明して、実際にお客様が加入してその状況になったときに間違っていたとするじゃないですか。営業が「すみません、やっぱり要介護2認定じゃないと給付金が出ないみたいです」となったら、これは謝って済む問題ではありません。仮に契約自体を取り消せたとしても、契約者が過去の年齢と体況に遡って保険に入り直すことはできないからです。チャーン(退会)が起きたときのペナルティーが契約者側にここまで大きく課せられているという仕組みが、生命保険が最強のサブスクリプションたる所以です。ですから、現場の営業も事務員も「とにかく間違ってはいけない」「絶対に間違えるな」というすさまじいプレッシャーに日々悩まされています。

その結果、保険会社内部では何が起きているかというと、紙の資料に蛍光ペンで線を引いて付箋を貼って目視で確認をする、という作業を毎日数万人がやっているのです。西暦2018年の今に、ですよ。他の業界の人からは「信じられない」と言われますが、事実です。手書きの申込書類の「間違えてはいけない箇所」にはすべて蛍光ペンでラインを引くので、保険会社の事務員と代理店営業の人は皆、定規に沿って美しく蛍光ペンで線を引く匠の技を持っています(笑)。でも、これは間違いなく非効率で属人性の極みですよね。その非効率に最初はおかしいと気づける状態の新卒社員も、5年も在籍するとそれが当たり前になって、この世界に馴染んでいってしまう……というのがこの業界の常、そして保険業界の闇です。この状況でもなんとかなっているのは、人が大量にいたからですが、これからはもう、その様にはいきません。

そこで、現場の人力工数を減らす仕組みというのが必要になっていきます。そこにビジネスチャンスがある、と気づいて始めたのが今のサービスです。外部のIT系企業などが参入しようにも、そもそもそんなペインが存在していることに気づけませんし、煩雑な事務工程の細部や保険業法規制も容易にはわかりません。でも、人は確実に足りなくなって効率化が求められている。「じゃ、誰がやるんだ」という話ですが、それはたぶん自分にしかできないと思っています。

この暗黒面を残したまま皆さんが生命保険に加入しているのは良くないですよ。「蛍光ペンと付箋」は象徴的な1つのエピソードでしかなく、保険業界にはまだほかにも無数の非効率が存在しています。この無駄な人件費を支えているのは、いまこの『THE KEY PERSON』をお読みの皆さんが毎月支払っている保険料ですからね。オペレーションを徹底的に効率化できれば、今の保険料を半額以下にすることは全く難しくないと考えています。

専門知識×テクノロジーに勝機

—【楯】その「業界の負の部分」を改善していくのが、御社の狙いということですね?

【津崎】はい。当社、SEIMEI株式会社は「あらゆる業務を自動化し、生命保険に関わるすべての人の毎日を豊かにする」というミッションを掲げています。今は、保険会社と保険代理店向けにBtoBのサービスを作っていますが、将来的には契約者個人にも直接的に価値を提供できる事業も展開できればと思っています。

—【楯】なるほど。今展開されているものとしては「音声認識による保険業務情報検索」として『SEIMEI』がありますが、これが御社の1つ目のプロダクトですか?

いいえ。今のプロダクトにたどり着くまでに3年間で5回失敗していて、5,000万円くらいは自己資金を溶かしています。保険のメディアをやろうとしたこともありましたがダメでした。保険業法の対象者(保険会社か代理店)は自由に保険を比較してはいけないという規制があるので、「○○生命保険がおすすめです」と書いてはいけないのです。某社にキレられてサービスをクローズしたときに、「憲法で定められているはずの表現の自由はこの世界にはないんだな」と痛感しました(笑)。

自身6回目のチャレンジとして『SEIMEI』を開発しています。β版でユーザーヒアリングをする過程で、これまでの5回の失敗と大きく違うと感じるのは、ユーザーが自発的に進んで協力してくれることです。今も紙の冊子をめくって保険商品の情報を調べ、蛍光ペンと付箋で確認をする、そのために必要な物を全部鞄に入れて持ち歩いている人達から「私も自分たちがやっていることが非効率だということはわかっている。だから津崎さんには本当に成功して欲しい」と言っていただいて、私からお願いする前から、当社が持っていない資料をくれたり、関係者をご紹介してくれたりしています。これは今までにない、大きな手応えです。

振り返ると、失敗してきた5回はどれも自己満足でサービスを作っていたのですが、今回の『SEIMEI』は自分自身がユーザーとして心から「毎日使いたい」と思えるものを作っています。先日も、私自身が紙の資料を確認しなければならないことがあって、本当に「何をやっているのかな」と、つくづく思いました。自身をユーザーとして課題発見ができていて、また長年の業界知見がありますので、今回はうまくいくはずです。

—【楯】音声認識のベースになっているのは?

【津崎】いまはMicrosoftの「Cortana」ですね。保険業界はWindowsタブレットのシェアが圧倒的だからです。

—【楯】保険業界は今、紙からデジタルへの移行が始まっているのですか?

【津崎】過渡期です。日本には生命保険営業パーソンが40万人くらいいますが、彼らの利用端末は急速にタブレットに移行していて、ペーパーレス化の流れが進んでいます。

—【楯】『SEIMEI』は、声で聞いて回答はテキストや表で見るという方法ですか?

【津崎】はい、おっしゃる通りですね。業務用サービスなので、アンサーを音声で返すより、画像で、一瞬で表示した方が利便性が高いです。入力は音声だけではなく、手入力にも対応しています。

—【楯】収益モデルはどのようになっていますか?

【津崎】保険代理店に対しては無料提供で、保険会社に対しては月額課金を予定していますが、何が最適なのかはまだ仮説検証中です。日本人が音声認識に慣れていないので、まずは無料で、ユーザーの皆さんに利便性を体感していただきたいと考えています。

生産的な仕事への注力を可能にするRPA

—【楯】生命保険営業パーソンのコアになる価値というのはお客様のニーズを聞き出して最適な保険を提案することであって、数字を丸暗記したり書類作成の手順を記憶したりする部分は機械というか、『SEIMEI』に任せれば良い、という発想ですか?

【津崎】おっしゃる通りです。契約段階で生命保険営業パーソンが「ありがとうございます。それでは書類10枚のご記入にお付き合い下さい、最低30分はかかりますが……」みたいな状況は、誰も得しないですよね?さらにその書類で不備が出ると、その訂正に数倍の時間コストが発生します。保険会社の代理店営業は、この不備対応だけで毎日1時間はとられています。

入り口はシンプルな音声辞書ですが、辞書を2つ使う人はいないですよね。まずここを独占してシェアを取りきった先には、生命保険業務全ての自動化を目指しています。今流行りつつあるRPAで、保険業界に特化したものを開発します。日本は労働人口が急激に減っていきますから、RPAには大きなビジネスチャンスがあると思います。

保険業界のインフラを目指して

—【楯】御社が展開している生命保険業界の業務効率化というと、市場規模はどれくらいなのでしょうか?

保険会社の内勤職員は約12万人いますが、仮にその方々の仕事を1時間減らせたとしましょう。これに最低時給700円と年間の営業日数248日をかけると200億円ですから、これを1プロダクトでの市場規模と見込んでいます。市場占有率が10%で、ARR(Annual Recurring Revenue :年間経常収益)が20億円となる計算です。

—【楯】その売上規模ですと、IPOも視野に入ってくるかと思いますが?

【津崎】IPOやバイアウトといったイグジットは事業が成長するひとつの過程なので、そこにフォーカスはしていません。それよりも私は市場占有率を重視しています。現在創業19年目で、時価総額1.5兆円のエムスリーという会社を参考にしています。

医師には情報を無料提供して、医師32万人の80%を会員として囲い込んだプラットフォームを武器に、少数の製薬会社に大きく課金するというビジネスモデルで大成功した会社なんです。このプラットフォームにおける「医師と製薬会社」の関係は、「保険代理店と保険会社」の関係と似た構図です。

エムスリー登場前の世界の医師の方々は、業務情報がバラバラで検索しにくかったのではと想像してますが、これもどこかの業界とそっくりですよね(笑)。なので『SEIMEI』がまず目指すべきは、全国の法人保険代理店35,113社のシェア80%と考えています。

保険業界特化のスタートアップを起業するにあたっては、保険業法に精通していること、保険セールスでずばぬけた実績があり現場を熟知していること、テクノロジーを理解できること、何よりも生命保険に対して人並みはずれた情熱を持って取り組めること、おそらくこの4点が全て備わっていることが必要です。そして、それはきっと私しかいないと思いますので、あとは実践あるのみです。

—【楯】保険会社自身が内製で同じようなサービスを開発する、という可能性についてはどうお考えですか?

【津崎】投資家の方にもそのご質問はよく頂くのですが、保険会社は保険商品を開発して運用することが主業務なので、業務支援系に強みがあるわけではありません。どこか一つの保険会社が開発したサービスは競合関係にある他社は使えませんし、一方で外注先の大企業には優秀なエンジニアはたくさんいても、保険実務に詳しい人がいないので、「誰も押さないボタンがいくつも実装されている」状態です。ですから、当社ならではの強みは数多く発揮できると思います。

羽生結弦選手の有名コスプレイヤーとして

—【楯】なるほど、興味深いお話をありがとうございます。最後にひとつ「柔らかい」質問もさせてください。フィギュアスケートの羽生結弦(はにゅう ゆづる)さんのコスプレをされていますが、なぜまた?

【津崎】(笑)。2014年2月のソチオリンピックの時に羽生選手が金メダルを獲得しました。その日の朝に女友達3人から「津崎君、この人にすごく似てない?」というLINEが届きました。それでそのときほぼ初めて、羽生さんの画像を見たところ、確かに似てるのかも? と思いました。その年のハロウィンで、羽生さんの格好をしてみたのが最初のきっかけです。毎年続けていたらワイドショーなどでも多く取り上げていただくようになりました。

今年は羽生さんが、平昌オリンピックで2連覇を成し遂げられました。とてつもないレベルの技術と努力だけでなく、怪我をした今回のオリンピックでも「ここでコレとコレをやれば、これを飛べなくても金メダルが捕れる」という緻密な計算もされていて、本当にすごいと思います。あと、私と違ってどんなときでも手を抜かないのも素晴らしい(笑)。だから、私はコスプレという形から入りましたが、今では本当に羽生さんのことを尊敬していますし、応援しています。

当社の社名も今年5月にSEIMEIに変えていますからね。これは、生命保険の“SEIMEI”であり、羽生さんが平昌で金メダルを取った時の曲“SEIMEI”にちなんだものでもあります。生命保険ビジネスと羽生さんのコスプレを両方やっているなんて、もはや偶然ではなく、運命で必然なのかなと……(笑)。

あと「何のためにやっているのですか?」と聞かれることもあるのですが、自分でもよくわかりません。強いて言えば、羽生さんの公認キャラになりたいなという気持ちはあって、いつかアイスショーとかに呼んでいただいてトークショーとかをご一緒したいなというのが勝手な願望です。

—【楯】最後に、私たちの媒体名でもある「キーパーソン」に関連して「時代を動かす、社会にインパクトを与えるような生き方、働き方を目指す」人たちへのアドバイスやコメントをお願いします。

【津崎】人生けっこう短いなって、35年生きてきて思います。ですから、やれることは限られています。やらないことを決めないといけないし、やりたいことだけをやる人生にしないといけない。誰かに気を使う時間とかって、無いですよ。

あとは……専門性を持てる分野があるなら、それを身につけるべきです。数年間努力して、そこでしっかり実績をつくりましょう。その上で、世の中の全体像を学んで、あらためて専門分野を見直すと自分にだけ見えること、自分だけにできることがわかってくるんじゃないでしょうか。

そこから掛け算でレア度を上げていく、という戦略が良いと思います。私も自己評価が低かったからわかるのですが、皆さん「自分みたいな人なんて、いくらでもいるじゃないか」と思いがちですよね。でも、掛け算でキャリアをつくれば「自分にしかできないこと」ができるようになります。このインタビューを最後まで読んで下さった方も、それぞれ自分にしかできないことが必ず見つけられるはずですので、一緒に頑張りましょう。

あ、よかったらこの記事の感想も、私のSNSに直接お気軽に寄せて頂けたりしたらとても嬉しいので、よろしくお願いします!



津崎桂一さんのTwitter

» Keiichi Tsuzaki(@seimeitsuzaki)



—【楯】本日は、いろいろとためになるお話をありがとうございました。

【津崎】こちらこそ、ありがとうございました。

Company
会社情報
企業名SEIMEI株式会社
所在地〒100-0005 東京都千代田区丸の内1-6-6 日本生命丸の内ビル22階
業種生命保険業務RPAシステム「SEIMEI」の開発・運営
URL http://seimei.co/