「デジタルマーケティングで日本を元気にする」デジタルアスリート・長橋真吾が目指すもの

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氏名 長橋真吾
肩書 デジタルアスリート株式会社 代表取締役
出生 1984年
1984年長野県生まれ。日本体育大学を卒業後、情報通信系商社に入社。その後ネット集客支援サービスを手がけるWebコンサルティング会社に入社。リスティング広告のノウハウを学ぶ。
2011年に株式会社リスティングプラス(現・デジタルアスリート株式会社)を設立し、代表取締役社長に就任。
中小企業を対象にコンサルティング会員は累計3,000名超え、年間100社以上の企業のWeb集客を支援する。

AI技術が驚異的なスピードで進化している昨今、マーケティングの手法も日々変化しています。インターネット広告の市場規模も年々増加しており、デジタルデータを活用したデジタルマーケティング業界が活発化。今やレッドオーシャン化しているデジタルマーケティング業界の第一線で活躍し続けているのが、長橋真吾氏が率いるデジタルアスリートだ。

今回は長橋氏を招いて、デジタルアスリートが事業拡大を続けてこれた背景、今後注力していく事業内容について話を伺った。

一人称でできる仕事を求め、大企業からベンチャーへ

—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】最初に簡単な自己紹介と、会社の概要をお話しいただけますか。

—【話し手:長橋真吾氏、以下:長橋】デジタルアスリート株式会社の代表をしている長橋と申します。

デジタルアスリートは2011年7月に創業したデジタルマーケティング会社で、現在は社員数が100名を超える規模に成長しました。主にはデジタル広告の運用やデジタルマーケティングの代行、コンサルティング、マーケティング人材の育成、紹介派遣など、幅広く事業展開しています。

—【松嶋】長橋さんはずっとデジタルマーケティングを専門とされていたんですか?

—【長橋】いいえ。新卒では某情報通信系商社に入社し、1年ほどコピー機の営業をしていました。360名ほどいる同じ部署の同期の中で、5本指に入るほどの成績をあげたこともあります。

しかし、会社都合で所属先が変わった後、全く数字が上がらなくなってしまいました。もともと私は田舎の方を担当していたのですが、都心の営業所に移動することとなり、それまでのやり方が一切通用しなくなってしまって。

—【松嶋】なるほど。田舎と都心では、クライアントもアプローチ方法も異なるでしょうしね。

—【長橋】ええ。今考えると、当時の私ではその違いに対応するのが難しかったのだろうなと。

次第に「会社の都合に振り回されずに、自分の力量だけで戦える市場で働きたい」といった思いが強くなり、転職を考えるようになりました。そして、一人称の仕事を探していた時に、当時流行っていたmixiでアルバイトを募集しているWebマーケティングの会社を見つけたんです。それに応募して見事採用となり、1万人規模の企業から青山一丁目にある3名のベンチャー企業に転職しました。

—【松嶋】思い切った決断ですね。具体的には何をしている会社だったのでしょうか?

—【長橋】株式投資に関する教育サービスをインターネット上で展開している会社で、私は主にLPのテキストを作成していました。テキストによってユーザーの反応は大きく変わるのだと、コピーライティングやWebマーケティングの基礎を学べましたね。

ただ、アルバイトだったために手取りが少なく、生活が苦しくて。給与交渉の余地もなかったので、1年ほど働いた後に退職しました。

—【松嶋】その後に起業された?

—【長橋】いいえ。その後に転職したのが、起業のきっかけとなった会社ですね。広告のコンサルティング会社を経営している知人に「広告を学びたいから働かせてください」と電話で伝えたところ、その方の会社に転職することになったんです。

一歩間違えば借金まみれ?危険な橋の先で得た大切なもの

—【松嶋】知人の会社ではどんな仕事をされていたのですか?

—【長橋】広告運用です。整体院や整骨院などヘルスケア系のクライアントをメインにデジタルマーケティングを主に行っていて、私が入社した当初は4名ほどの会社だったのですが、1年ほどで2倍の8名まで社員が増えていました。

—【松嶋】順調に会社が成長していたんですね。起業に至るまでは、どのような経緯だったのでしょうか。

—【長橋】会社の成長に伴って事業領域を分ける形で子会社を作ることとなり、その子会社の代表に選んでいただいたんです。そこで、2011年にデジタルアスリートの前身となる会社が誕生しました。

—【松嶋】なるほど。子会社の代表に選ばれた時は、どんな心境でした?

—【長橋】何もわかっていなかったですね。親会社の代表であるオーナーから「300万円出資してあげるから、挑戦してみたら」と言われて「300万円出資してもらえるんだ。ラッキー」みたいな(笑)。

また代表といっても社内ベンチャーでしたし、受付や配送、電話対応、営業活動などは全て一人で行っていました。

—【松嶋】一人で全てやるとなると、とても大変だったのでは。

—【長橋】必死でしたね。少しずつクライアントを増やしていって、創業から1年経った頃に、ようやく社員が2名雇えるほどの規模になりました。そこから増収増益を続けて、事業規模も社員数も拡大を続けていったという流れですね。7期目に差し掛かったぐらいで、社員数は60~70名ほどに増えていました。

—【松嶋】それはすごいですね。

—【長橋】ただ、7期の時点で2億円ほどの負債があり、私がその保証人になっていたんですよ。

—【松嶋】雇われ社長なのにですか?

—【長橋】そうです。知人から「解任になったら、借金だけが残ってしまうよ」と言われて驚きましたね。ただ、親会社の代表であるオーナーからは「業績が順調に拡大すれば、株を譲ってあげる」と言っていただいていたので、知人から忠告を受けた後に、株の譲渡についてオーナーに相談しました。すると「譲らないよ」と言われてしまって。

生々しい話で恐縮ですが、当時私たちの会社はM&Aで5~7億ほどの価値になると考えられていました。つまり、会社を売却したらオーナーは売却益が手に入る。また、順調に成長しているグループ会社が抜けると、本社としても困りますよね。グループ全体の利益を考えるなら社長を代えた方がいい、となるわけです。

—【松嶋】オーナーからすると、全体の売り上げや利益などを考慮すると、独立を認めるのは難しいと。

—【長橋】ええ。そのため、最初は当然ながら反対されました。とはいえ、会社を立ち上げたのは私ですし、社員がついてきてくれているのも私自身です。5~7億円という金額は私が継続することを見越しての価格ですし「社長が代わるなら、その金額にはなりませんよ」と、オーナーにも伝えました。そうやって1年半ほど交渉を続けて、最終的にはオーナーも納得してくださり、2019年にMBOが成立しました。

—【松嶋】無事にMBOが成立して良かったものの、非常に危ない橋ですよね。新たに自身の会社を立ち上げることもできたのでは?

—【長橋】新たに企業を立ち上げるとなると、筋を通すためにはオーナーに独立起業の話をする必要があります。どちらにしてもオーナーと交渉する必要があるなら、それまで頑張って走り続けてきた会社でやっていきたかった。7年間経営してきた会社ですし、最後まで責任を持ちたいと思ったんです。

一難去ってまた一難。紆余曲折の末にたどり着いた組織のカタチ

—【松嶋】会社をここまで大きくするまでに、組織マネジメントにおいても非常に苦労されたとお伺いしました。具体的にはどのようなことがあったのでしょうか?

—【長橋】いろいろありましたね(苦笑)。創業から1年半ほど経って社員が6~7名にまで増えた時に、半数以上の4~5名が退職してしまって。当時の私は雇われ社長で創業社長のような苦労をしていたわけではなく、求心力もありませんでした。マネジメントや組織づくりに関する知識もなく、社員に誠実な対応ができていたとは言えません。社内の雰囲気も悪く、人が入ってもすぐに退職するという状況がしばらく続きました。

その状況を見かねたオーナーが「選択理論心理学」について教えてくれて、それに基づいて行動するようになってからは、スムーズに組織運営ができるようになりましたね。

—【松嶋】具体的にはどのようなことをされたんですか?

—【長橋】選択理論心理学は、内発的動機づけを土台としています。つまり「人の行動はその人自身の内側に動機づけられているものである」という考えが前提にある。怒ったり罰を与えたりして外からコントロールするのではなく、相手を受け入れて良好な人間関係を築くことが大切だという考え方ですね。そこで、クライアントの方ばかりを向いて社員に背を向けていた姿勢を改めて、社員一人ひとりに向き合ってヒアリングを重ねた上で会社経営を見直したんです。

その他に細かなところでいうと、それまでは出社してから挨拶した以外は一言も話さず仕事が終わったら退勤するなんて日もあったのですが、積極的にコミュニケーションを取るようにしました。あとは入社記念日に花を贈ったり、社員のご両親に会いに行って挨拶したりもしましたね。流石に100名規模になった現在は、ご両親への挨拶はできていませんが、当時は社員10名ほどだったために出来たのだと思います。ご両親に挨拶に行ったメンバーは現在も会社に残ってくれていますし、人を大切にするのは重要なことなんだと実感しました。

—【松嶋】「人を大切にする」というのは、当たり前のことのように思いますが、実践できている人は多くないように思います。

—【長橋】口では簡単に言えますが、行動にするのは難しいですよね。しかし、そうやってなんとか踏ん張って組織づくりをしていったおかげで、10名だったところから30名近くまで社員が急増した時期がありました。

ただ、組織づくりが難しいのはここからで……。30名まで増えた時に、選択理論心理学をベースとした経営学に拒否反応を示す社員が出てきて、5~6名ほど退職してしまいました。

—【松嶋】うまく行ったと思ったら、また問題が発生してしまったと。

—【長橋】そこで、マネジメントや組織論に関する勉強をはじめて、書籍を探している時に見つけたのが「織学」です。織学に関する書籍を執筆されている安藤さんにメッセージを送り、講義を受けました。人の感情にフォーカスした選択理論心理学と感情を切り離して考える織学、真逆の考え方に触れたことで、多くの学びを得ましたね。

—【松嶋】織学の講義を受けたことで、組織づくりにも変化があったのですか?

—【長橋】ええ。選択理論心理学と織学をミックスした考え方を取り入れて組織づくりをすることにしました。私たちが提供しているデジタルマーケティングなどのクリエイティビティな領域は、内発的動機づけの影響が大きい部分もあるからです。具体的には、一定の経験を積んだ中堅社員は選択理論心理学を活用したマネジメント、1~2年目の若手社員には織学を当てはめました。

しばらくそのスタイルで運用して、順調に拡大したのですが、社員数が60名ほどの規模になった時に、また問題が発生しまして。指示待ち状態の若手社員が出現して、クリエイティビティを発揮しなくなってしまったんです。

そこで、今度は自走できる組織を目指して「ティール組織」を取り入れました。会社が設計したコミュニティを社員に運営してもらうなど、試行錯誤を続けていますね。新卒の社員にはファーストヴィレッジの研修を受けてもらうようにもしています。

—【松嶋】組織の変化に合わせて、柔軟に対応をされているのですね。

—【長橋】組織は人の集合体です。どんな手法、考え方が適しているのか、明確な正解はない。会社の人数や平均年齢、社員の家庭環境、文化などによって最適解は異なるでしょうしね。働く環境や働き方の選択肢が広がった現代においては、マネジメントの手法も流動的に変化させたほうがいいのではないかと考えています。

クリエイティブの強みを生かし、独自のポジションを確立

—【松嶋】デジタルアスリートの事業について、改めてお話しいただけますか。

—【長橋】コピーライティングをメインに、全体戦略の設計から広告の運用、クリエイティブ制作に至るまで、デジタルマーケティングを一貫してサポートしています。その他、マーケティング人材の派遣や育成、セミナーも行っています。

ちなみに、デジタルアスリートの特徴は、半数以上が「広告を出したことがないクライアント」であることです。一般的な広告代理店は紹介営業が主流で、前職からのご縁でお仕事をしつつ徐々に開拓していくケースが多いんですよ。しかし、デジタルアスリートは私がゼロから新規開拓してきた会社です。雇われ社長として私が1人でやっていたころから6期目あたりまで、営業は1名もいませんでした。

また広告代理店としては、広告費を多く出してくださるクライアントを獲得したほうが売上に繋がりますよね。そのため、一般的には営業で大きな案件を獲得していくスタイルが多い。しかし、私たちはデジタルマーケティングの有効性を知らないクライアントにアプローチをするスタイルをとっていました。

—【松嶋】広告を出したことがないクライアントが多いとなると、広告代理店ときいて思い浮かぶような「ブランディング」や「認知獲得のための広告」などはされていないのでしょうか?

—【長橋】一度も扱ったことがないですね。私たちは、LPを改善してコンバージョンの向上を目指すような案件をメインにしています。そこに特化していて、セールスコピーのナレッジが社内に蓄積されているため、デジタルアスリートはコピーライティングとクリエイティブに強みがあるんですよ。

—【松嶋】なるほど。マーケティング人材の派遣や育成については、何がきっかけで始められたのですか?

—【長橋】デジタルアスリートは未経験入社も多いため、育成に注力してきた会社です。会社としてはストイックに自己研鑽を続けている人を応援したいし、そういう人を増やしたい。そこで、マーケティング人材の派遣と育成事業をスタートすることにしました。

デジタルマーケティング業界は年々進化している業界なのですが、二極化も進んでいます。予算が少ない案件は、そもそも引き受けないようにしている会社も少なくありません。しかし、私はこの業界に助けられてきた人間ですし、デジタルマーケティングの有効性を、もっと多くの人に伝えていきたいんです。しかし、それをするためには、マーケティング人材が不足しています。

マーケティング系のスクールなども増えてきていている影響からか、基本的なことができている人はいるんですよ。ただ、本質的な部分も見極められている人材は非常に少ないのが現実です。マーケティング人材の素養がある人たちを適切に教育して増やしていかないと、日本の会社は落ち込んでいく一方だと思うんですよ。社会へ貢献するという観点で、私たちは人材育成に力を入れています。

—【松嶋】デジタルマーケティングの本質を見極められる人材、というのは確かに多くないように思いますね。

—【長橋】同業者の話を聞いても、皆さん人材育成に苦労されているようです。教育して、育ったら辞めていってしまうというサイクルが続いているとか。

私たちは育成に関するノウハウがありますし、もっと事業を拡大していって、デジタルアスリートとして国内に向けて情報を発信できるような立場になっていきたいですね

人材育成事業で、日本のデジマを強化していく

—【松嶋】人材育成について、具体的にはどのようなことをされているのですか?

—【長橋】3ヶ月ほどかけて、デジタルマーケティングのスキルセットをお教えするプログラムを提供しています。デジタルアスリートでトレーニングをした後には、実際のクライアント案件にも携わっていただいて、実務レベルで教育していますね。車の教習所をイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。まずは知識を身につけて、その後に教習所内で模擬的に運転をする。そのデジタルマーケティング版ですね。

—【松嶋】クライアントはどういった方が対象なのでしょうか?

—【長橋】中堅、中小まで、さまざまな企業が対象です。引き受ける人数についても、1社につき2~3名単位でご依頼いただくこともありますし、10名などでも可能ですね。

外注で頼んでいた部分を内製化したい時にはもちろん、デジタルマーケティングをされている企業からのご依頼も歓迎しています。オペレーション部分のスキルはあるものの、クリエイティブに関するノウハウがない企業も少なくありませんしね。マーケティングの中でも“泥臭い部分”を学びたいというニーズのある企業からご依頼いただくケースもあります。

—【松嶋】同業他社の場合、未来のライバルにもなり得ると思うのですが、その点についてはいかがですか

—【長橋】クリエイティビティは属人的なものなんですよ。そのため、社外の誰かを教育したからといって、ノウハウが全て流出してしまうわけではありません。デジタルアスリートで教育を受けた人がその会社を退職した際には、再度ご依頼いただけると考えています。人材は流動していくという前提のもと、運用ができる部分に私たちの強みがあります。

—【松嶋】ノウハウを外部に広めたからといって、会社の基盤が弱くなるわけではないと。最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

—【長橋】AI技術が驚くようなスピードで進化していますが、クリエイティビティは人間がやるからこそ意味があるものです。オペレーションについてはAIを活用することもできると思いますが、人の心を動かすクリエイティビティは、人間にしか創れないでしょう。今後、生産性を高めるツールなどがもっと登場すれば、今よりもクリエイティビティに集中できる環境が整うはず。いろんな技術の進化や社会への浸透がしきっていない、過渡期の今だからこそ、クリエイティブに強みのある私たちに、ぜひご連絡いただければと思います。

Company
企業 デジタルアスリート株式会社
所在 東京都新宿区西新宿6丁目24−1 4F
業種 リスティング広告情報提供、リスティング広告代行
リスティング広告コンサルティング業務
ランディングページ・ホームページ制作
Webマーケティング代行、コンサルティング業務
デジタルマーケティング人材の育成と派遣・紹介
URL https://ppc-master.jp/



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