コンプレックスがあったからこそ、追求できる。社会に新たなサービスを生み出し成長を続けるトラストゲート・坂元伸一

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氏名 坂元伸一
肩書 株式会社トラストゲート 代表取締役
2013年トラストゲートを創業。インクフリーなど、業界をリードするビジネスの立ち上げを創業者として直接携わる。組織の理念としては「三方よし」を基本的な物事の考え方として据え、事業を拡大。2020年に成長基盤となる事業領域ごとにグループを再編し、現在はトラストグループの代表としての役割とともに各グループ企業でも代表や取締役として兼務。

マーケティングや広告代理事業、定額レンタルプリンターサービス、美容クリニック運営など……、幅広い領域で事業を展開しているトラストゲートグループ。

一見すると事業内容に統一性がないようにも感じられるが、代表の坂元氏は「自分の中では一貫している」と語る。その背景には、同社が掲げるビジョンとミッションが関係しているのだとか。

今回は、トラストゲートグループの成り立ちや事業への思い、会社の今後について伺った。

社会に驚きを届けるため、幅広い領域に挑戦

—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】最初に自己紹介をお願いします。

—【話し手:坂元伸一氏、以下:坂元】株式会社トラストゲートの代表をしている坂元と申します。2013年に創業していて、主な事業はグループ企業の経営です。

—【松嶋】グループ会社では、どのような事業をされているのでしょうか。

—【坂元】基幹事業はマーケティングですね。広告代理事業を展開する株式会社R-TGエージェント、定額制レンタルプリンターの「INK FREE」やコールセンターのBPOサービス業を請け負っている株式会社TGS、保険代理店を展開している株式会社NEXUS、新規ビジネスを運用する株式会社FUTURE GATESといった4つのグループ会社があります。

FUTURE GATESで新規ビジネスを運用し、軌道に乗ってきた段階で分社化するといったアプローチで事業展開しているのが特徴ですね。現在は美容クリニックの経営やコワーキングスペースの企画や運営も行っています。

—【松嶋】さまざまな事業を展開されているのですね。

—【坂元】ええ。事業を通してデジタル広告や営業、カスタマーサクセスなどに関する知見が自社に蓄えられていっているため、さまざまな事業に挑戦できるのが私たちの強みです。

—【松嶋】とはいえ、美容クリニックなど、全く異なる領域に挑戦するのは大変ではないですか?

—【坂元】私たちの価値は、大企業と同じようなサービスではなく、“他者とは一味違った独自サービス”を展開できることです。当たり前だと思われていることでも、違った角度から見てみると新たなアイデアが出てくる。それをサービスとして届けるのが私たちの役目です。

例えば、INK FREEはインクの原価コストと市場での取引価格のギャップに疑問を持ったことからスタートしています。美容クリニックについては、従来のようなカウンセラーは不在で、医師が最初から最後まで伴走するスタイルにしているのが特徴ですね。幹細胞などの再生医療もメニューに取り入れています。

「驚きを届け続ける集団を目指す」が会社のビジョンであり、それを実現するためにさまざまな事業に挑戦しているのです。

挑戦を続ける強い組織の根幹にあるもの

—【松嶋】先ほどビジョンの話が出ましたが、ミッションの「いかなるときも三方よしの追及を」には、どういった意味が含まれているのでしょうか。

—【坂元】一般的に「三方よし」とは、売り手と買い手が満足できるとともに、社会にも貢献できることだと言われていますね。私たちは、それに加えて物事のバランスを良くして長く付き合っていきたいという思いを込めています。例えば、上司と部下といった2極間のやり取りは、片方に優位性があって利益が一方に傾いている場合、関係性を持続するのは極めて難しいでしょう。私たちはそういった社会のアンバランスを解消し、長く付き合えるものにしていきたいと考えているのです。

そういった観点で「人」を一番重要視しているのも特徴で、社員の教育にも注力しています。新しいことに挑戦しているとはいえ、人を使い回すようなことはせず、メンバーの成長とともに会社を大きくしていこうという考えですね。

というのも、トラストゲートは“ベンチャーに毛が生えた”ようなフェーズの会社であり、一人ひとりの業務も多岐に渡ります。大手企業のように、縦割りの組織で自分の専門業務に集中できる環境はありません。その分、個々がやっていることが業績に大きく反映されますし、責任も大きい。また、彼らと過ごしてきた時間には、代え難いものがあります。一朝一夕ではそういった関係は作れませんし、人間関係は非常に大切にしているつもりです。

—【松嶋】ベンチャーで教育にも注力されているのは珍しいのではないかと思います。

—【坂元】人ととことん向き合い、付き合っていくのには、パワーがかかりますからね。その分、会社の成長が緩やかになるのも事実です。しかし、長く続けていくためには、緩やかにでも確実に成功を積み上げていく方が良いでしょう。そういった考えを持っていたからこそ、コロナ禍でも右肩上がりで成長することができましたし、それはメンバーが踏ん張ってくれたからだと思っています。

—【松嶋】メンバーとも良い関係が保てているのですね。組織づくりにおいて、意識されていることはありますか?

—【坂元】採用面で言うと、経験があるかどうかよりも、コミュニケーション能力を重視しています。経験を重ねることや勉強して身に付くスキルよりも、性格や思考の部分が重要だと思うのです。

よくメンバーと話すのは、お客さまから「あなたがそう言うのなら信じます」と言っていただけることが大切だよねということ。信頼関係がないと出てこない言葉ですし、これを言ってもらえるような関係を構築するのは簡単なことではありませんよね。お客さまとの信頼関係を構築するためにも、メンバーには流れ作業のようなことは絶対にしないように伝えています。

—【松嶋】信頼関係って構築するのは難しいのに、崩れる時は一瞬で崩れてしまいますからね。

—【坂元】難しいですよね。だからこそ、私はオフラインでの会話も大切にしていて。もちろんリモートで済ませた方が効率がいいこともあるのですが、何かを決断する時や大切な話は必ず直接会って話すようにしています。デジタルやチャットツールでは、伝え切れないこともありますから。

—【松嶋】人を大事にしているからこそ、対面でのコミュニケーションも大切にしていると。

—【坂元】ええ。私がここまで来れたのは、社内外の仲間に助けられてきたからだと思うのです。周囲に生かされていると言いますか。自分の力ではなくて、ただ運が良かったのだと。そういった意識があるため、関係者との関係性は大切にしています。最近はオンラインでやり取りすることが増えていると思いますが、私個人としては、対面でのコミュニケーションを大切にしていきたいですね。

最初の事業「INK FREE」の誕生

—【松嶋】ここからは会社の成り立ちについてお伺いさせてください。坂元さんは最初から起業することを目指されていたのですか?

—【坂元】いいえ。大学を卒業した後は、音楽の道を志していました。しかし、なかなか芽が出なくて……。しばらく音楽を続けたものの「このままダラダラ続けるよりも、社会人になった方がいい」と思うようになり、24歳で就職しました。

—【松嶋】会社員としてはどのような仕事をされていたのですか?

—【坂元】広告代理店で営業をしていました。期間としては約3年間ですね。ただ、自分が会社員であり続けて成功するイメージができなくて(笑)。27歳で独立してトラストゲートの前身となる小さな会社をつくりました。そこでは前職と同じく広告代理業をしていたのですが、次第に「クライアントのビジネスをサポートするのではなく、自分たちのサービスを持ちたい」と思うようになり、3年後にトラストゲートを立ち上げています。

—【松嶋】最初はどんなサービスをされていたのですか?

—【坂元】INK FREEですね。「会社の成長」「オフィスにある」「今までの知識を生かせる」といった条件が揃うものを考えて浮かんだのが、プリンターだったのです。プリンターは、大抵どこの会社にもあるものだと思いますし、サービスとして展開しやすいだろうと考えたのが全ての始まりです。

—【松嶋】とはいえ、プリンターやインクに関する知識がないとサービスを成り立たせるのは難しいと思うのですが、創業メンバーの中にプリンターのメーカーや近しい業種の出身者がいたのでしょうか?

—【坂元】いいえ。プリンターやインクに関する専門知識を持っているメンバーはいなかったため、最初はWebで調べながらサービスを作っていましたね。無知だったからこそ、イノベーションが生まれたと言いますか。結果論ではありますが、今となっては「詳しい人がいない状態」だったからこそ出来たサービスだと思います。

—【松嶋】なるほど。最初からサービスは順調に伸びていたのでしょうか?

—【坂元】これも答えは「NO」ですね。当時は現在のようにサブスクリプションサービスが浸透していない時代で、サービスについてご理解いただくのが非常に大変でした。インクの品質について、ご指摘のお言葉をいただくこともありましたね。

—【松嶋】インクの品質、というと?

—【坂元】現在はオリジナルのインクを使用しているのですが、サービスをスタートした当初は海外のサードパーティ製品を使用していたのですよ。ただ、品質が安定しておらず、まさに“安かろう悪かろう”というものでした。インクの製造メーカーに品質改善のお願いもしていたのですが、改善されないままだったので、思い切ってインクを自社でつくる方向に舵を切ることにしたのです。

—【松嶋】インクを自社で製造することを決意するとは、思い切った方向転換ですね。

—【坂元】ええ。やはり日本と海外では文化の違いがあって、向こうでは「滲んでいても読めればいい」というスタンスなんですよ。しかし、日本ではそうはいかない。そういった文化の違いは仕方ないところもありますし、インクの品質を改善するには自社で製造してしまうのが一番確実だと思ったのです。

サービスが拡大し、新規事業も続々と展開

—【松嶋】インクを自社で製造しようと決意したのは、サービス開始から何年くらい経った時だったのですか?

—【坂元】5~6年ほど経った時でしたね。インクを自社製造のものに変えてからは、ずっと伸び悩んでいた売り上げが飛躍的に伸びていきました。

—【松嶋】インクの品質が改善されただけでサービスが伸びるとはすごいですね。

—【坂元】実はそれだけではなくて、カスタマーサービスを強化したことも関係しています。

INK FREEがスタートしたばかりの頃は、メンバーが10名ほどの小さな会社だったため「この人数で売っていくのは無理だろう」と考え、営業は他社にお任せしていました。最大で270社ほど加盟いただいて、サービスは少しずつ拡大していったのですが、継続率の低さが課題だったのです。人的なケアが出来ていなかったため、「面白いサービスだ」といって契約していただいたとしても、なかなか継続には繋がらなかった。そこで、現場のメンバーにカスタマーサービスをお願いしてお客様のサポートを追求した結果、インクの品質向上もあいまって、サービスが飛躍的に伸びていったのです。

—【松嶋】なるほど。そこからどのような流れがあって、現在のような複数の事業立ち上げに繋がっていくのでしょうか?

—【坂元】まず、INK FREEが軌道に乗ったタイミングで、トラストゲート社からサービスを独立させています。加えて、INK FREEの広告を自分たちで制作していたことから広告の依頼をいただくことも増えていたため、マーケティングの専門会社としてR-TGエージェントも立ち上げました。その後、同様の流れを受けて、BPOサービス業を専門とするTGSを立ち上げて、といった流れです。

—【松嶋】自社で展開していたサービスが拡大したタイミングでグループ会社を立ち上げ、現在の体制になっていると。

—【坂元】ええ。中でもBPOサービス業については、カスタマーサービスの重要性が浸透する前から取り組んでいたため社内に知見が蓄積されていますし、順調に事業が伸びていますね。

手がけている領域が年々広がっているので、周囲からは「何をやっているのかよくわからない人」になっているかもしれません(笑)。ただ、自分の中では一貫していて、全く新しいサービスを生み出していきたいのです。格好つけた言い方をすると、グロースハッカーのような立場になりたいのかもしれませんね。

—【松嶋】まさに先見の明があったのですね。美容クリニックなどへの挑戦が始まったのは何時ごろですか?

—【坂元】美容クリニックなどへの挑戦は、2020年あたりからスタートしています。

手がけている領域が年々広がっているので、周囲からは「何をやっているのかよくわからない人」になっているかもしれません(笑)。ただ、自分の中では一貫していて、全く新しいサービスを生み出していきたいのです。格好つけた言い方をすると、グロースハッカーのような立場になりたいのかもしれませんね。

事業拡大に向けて、アクセルを踏み込んでいく

—【松嶋】お話しできる範囲で、今後の展開についてもお聞かせいただけますか。

—【坂元】今年度は13人の新卒が入社してくれていて、会社として第2創業の時期に入ってきています。これから数年かけて、グループ全体をもう一段階ビルドアップしていきたいですね。具体的には、これまで役員直下で新規事業を垂直立ち上げしてきましたが、今後はメンバーのアイデアで新規事業が生まれるようにしていきたいなと。

また、11年ほどかけて約100人の企業になりましたが、200人にまで増やすのに10年かけるのではペースが遅い。組織拡大のスピードも早めていきたいですし、そのためには仕組みをつくる必要があると考えています。組織づくりに注力していきたいですね。

—【松嶋】まさにこれから事業拡大に向けてアクセルを踏み込んでいくフェーズだと。

—【坂元】ええ。そのほか、領域を広げたことで、外から見ると何をやっている会社なのかわからない面があるのも否めませんし、採用を効率的にしていくために会社のリブランディングも進める予定です。

—【松嶋】今後が楽しみです。最後に読者へ向けてメッセージをいただけますか。

—【坂元】「とにかく腐るな」この一言です。仕事でもなんでも、やってみないとわからないですから。

—【松嶋】腐らないでやっていれば、必ずいいことはあると。

—【坂元】ええ。腐ることはいつでもできますからね(笑)。何でもいいから、一つのことを継続する。その際、自分自身の信念を持ち続けることが大切です。

私自身は、何かをやり切ったことがないというコンプレックスを強く持っていて、常に「自分はどこまで行けるんだ?」と自問自答しています。だからこそ自分が大切だと思うものを追求し続けることができている。音楽を極めていた時は、自分を客観視できていなかったですし、人が求めているものについて考えられていませんでした。今は、あの時にできなかった「社会に求められているもの(サービス)をつくること」を追求しています。

サービスを生み出すという観点でいうと、業務や業種にはトレンドがありますし、ぐるぐる変わっていくものですよね。常に変わりゆくものに向き合うためには、信念を持って、自分が大切にしているものを追求し続けるしかありません。

私たちはこれからもビジョン・ミッションを貫き通しつつ、面白いサービスをつくり続けていくので、興味のあるものがあれば、ぜひお声がけください。

Company
企業 株式会社トラストゲート
所在 東京都新宿区西新宿6-18-1 住友不動産新宿セントラルパークタワー19階
業種 ・コワーキングスペースの企画・運営・管理業務
・経営コンサルタント業
・ベンチャービジネスへの投資及びその養成
URL https://trustgate.co.jp/



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