「評価されない場所に用はない」──元大学職員から累計40万部超の作家へ。漫画家・あんじゅ先生が語る、好きを仕事にする秘訣

Interviewee

漫画家

若林杏樹(あんじゅ先生)

Wakabayashi Anju

大学卒業後、母校である帝京大学に正規職員として就職。5年間勤めた後にフリーランスとして独立、ライター業やコンセプトカフェでのアルバイトなどを経て漫画家として活躍中。漫画家を目指す人や漫画好きな人を集めたオンラインサロン「あんマンサロン」主宰。著書に「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!」(2018年/サンクチュアリ出版)、「貯金すらまともにできていませんがこの先ずっとお金に困らない方法を教えてください!」(2021年/サンクチュアリ出版)、「今の働き方、ホントにそれでいいの?」(2025年/高橋書店)などがある。

累計40万部超のベストセラー作家でありながら、元大学職員という異色の経歴を持つ漫画家・あんじゅ先生こと若林杏樹氏。

安定した職を手放し「好きなこと」を仕事にした彼女が、いかにしてフリーランスとして成功を収め、多くのビジネスパーソンからも支持される独自のポジションを築き上げたのか。

本稿では、彼女の仕事術や、信頼を積み重ねるSNS戦略、そして人生を好転させるマインドまで、軽やかな発信の裏にある戦略的な素顔に迫ります。

読者目線を守るために、検索しない──40万部を生んだ仕事の型

ー【聞き手:岡崎美玖、以下:岡崎】2018年に出版した「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!(通称:フリーランス税本)」をはじめとする著書が累計40万部を突破し、漫画家・インフルエンサーとして幅広く活動されているあんじゅ先生ですが、現在の主な活動内容について改めてご紹介いただけますでしょうか。

ー【話し手:あんじゅ先生、以下:あんじゅ】漫画家のあんじゅ先生こと若林杏樹です。現在は、税金や投資といった「難解でとっつきにくいテーマ」を、漫画を用いてわかりやすく翻訳・発信する活動を主軸としています。 加えて、クリエイター向けのオンラインコミュニティ「あんマンサロン」の運営や、キャリアコンサルタントとしてフリーランスの方々のキャリア支援を行うなど、漫画制作の枠を超えて「個人の力が正当に評価される社会」の実現に向けた活動を行っています。

ー【岡崎】あんじゅ先生といえば、難しい税金の話やビジネスの話を、驚くほどわかりやすく漫画に落とし込むスタイルが印象的です。累計40万部という数字は並大抵のことではないと思うのですが、ご自身の仕事における「核」、大切にされている流儀のようなものはあるのでしょうか?

ー【あんじゅ】そうですね、流儀と言えるかわかりませんが、私は仕事をする上で「自分で調べない」と決めています。

ー【岡崎】「調べない」ですか!? クリエイターの方は、入念なリサーチをされるイメージがあります……!

ー【あんじゅ】一般的にはそう思われますよね(笑)。ですが、私の場合は「翻訳者」としての役割を求められていることが多いのです。例えば、税金の本や、iDeCo・NISAといった投資の本など、元々のテーマが非常に硬く、難解な案件が大半を占めます。

そういった案件のご依頼をいただく際、私はクライアントの方に「専門用語や硬い文章は、そのまま硬い状態で渡してください」とお願いします。「わかりやすくしなくて結構です。「これは一体何だ?」と思うような状態のままで構いませんので」と。

ー【岡崎】あえて噛み砕いていない、原文に近いものを求めると。

ー【あんじゅ】そうです。ここからが重要なのですが、原稿の中に例えば「ABC」という知らない単語が出てきたとします。

その時、私は絶対にインターネットで「ABCとは」と検索しません。その代わりに、担当の編集者の方や専門家の方に直接聞きます。「これはどういう意味ですか? 覚えなければならないことですか? 読者はこれを知ってどのようなメリットがあるのですか?」と。

ー【岡崎】なるほど……! 自分で調べて「わかったつもり」にならないようにする、ということでしょうか。

ー【あんじゅ】おっしゃる通りです。私がインターネットで調べて理解してしまったら、その時点で「専門家側」の思考に近づいてしまうんですよね。ですが、読者は何も知らない状態のまま本を手に取るわけです。

私が「?」と感じた生の疑問や、専門家に説明していただいて「あ、そういうことか!」と腹落ちした瞬間のリアクションこそが、最も面白い漫画のネタになるのです。なので、私は「無知であること」を武器にしているとも言えますね。

ー【岡崎】「フリーランス税本」を拝読した際、主人公のあんじゅ先生が読者と同じ目線で驚いたり、困ったりしている姿にとても共感したのを覚えています。あれは演技ではなく、リアルな反応だったのですね。

ー【あんじゅ】もう、リアルもリアルですよ! そもそも私自身、税金のことなんて本当にゼロからのスタートでしたから。「領収書とは何か」すら理解していないレベルだったので(笑)。

だからこそ、読者がどこでつまずくか、どこが退屈かが手にとるようにわかるのです。得意分野で勝負するよりも、自分が全くわからない分野の方が、良い仕事ができる気がしています。

ー【岡崎】そのスタンスは、仕事の受け方にも影響していますか? 例えば、営業活動などはどうされているのでしょうか。

ー【あんじゅ】実は私、自分から「営業」をしたことがほとんどないのです。ありがたいことに、お問い合わせやご紹介だけで手一杯でして。 ただ、ご相談いただいたお仕事に対して、基本的に「断らない」というスタンスをとっています。

もちろん、物理的に私が描けないことはあります。ですが、そこで「無理です」とお断りするのではなく「私だと1ヶ月先になってしまいますが、この金額でよろしければ……」と条件を提示したり「私ではなく、この作家さんならすぐに対応可能ですよ」と、他の方をアサインしたりします。

フリーランスにとって、相談を断るというのは非常に惜しいことで「この人に相談すれば、何かしらの解決策が返ってくる」と思ってもらうことができれば、次もまた一番に相談してもらえると思うのです。

私自身、コミュニティを運営しており、アシスタントや若手の漫画家も周囲にたくさんいるので、彼らに仕事を依頼することも可能ですし。「断らない」でいると、まだ企画が固まっていない予算取りの段階から「あんじゅさん、これくらいでどうでしょうか?」と相談が来るようになるのです。信頼残高を貯めるというのは、こういうことではないかと思います。

贅沢は見せない、過程は見せる。信頼で仕事につなげるSNS設計

ー【岡崎】あんじゅ先生はSNS、特にX(旧Twitter)などでの発信力が凄まじいですよね。ビジネスパーソンや経営者のファンも多いですが、SNSで「仕事につなげる」ために意識していることと、逆に「ただのファン作り」の違いは、どのように捉えていますか?

ー【あんじゅ】そうですね、私の場合、クリエイターなのである程度「おふざけ」も許容されるところはあるかと思いますが……明確に決めているルールが一つあります。それは「贅沢をしている投稿は極力しない」ということです。

自分が仕事を頼んだ相手が、SNSで毎日パーティーをしていたり、ブランド品を買い漁っていたりしたらどう思いますか? 「この人は、私が支払った報酬で遊んでいるのか? きちんと仕事をしているのか?」と、イラッとしませんか?(笑)

なので、例えば新幹線の移動でも、グリーン車に乗った写真は絶対に投稿しません。もちろん、どうしても席が空いておらずグリーン車に乗ることはありますが、それを「グリーン車に乗車している」と投稿する必要はないのです。 「映えない日々」こそが、仕事相手に対する誠実さの証明になると思っています。

ー【岡崎】徹底されていますね。それは初期の頃から意識されていたのですか?

ー【あんじゅ】徐々に、ですね。書籍を出版して責任ある仕事を任せていただけるようになってから「見られ方」を強く意識するようになりました。

真面目すぎても面白くないのでエンタメ要素は入れますが、クライアントの信頼を損なうような「無駄な派手さ」は排除する。このバランスは常に考えています。

ー【岡崎】逆に、積極的に発信していることはありますか?

ー【あんじゅ】「数字」です。それも、大きな成功を収めた数字だけではなく、過程の小さな数字も全て出すようにしています。

例えば現在、毎朝6時に起きてコミュニティのメンバーと「朝活」をしているのですが、最初は参加者が私を含めて2〜3人といった状況でした。しかし、それを隠さずに「今日は3人で実施しました!」とインスタグラムのストーリーズに投稿するのです。

2〜3人だと「人気ないのかな?」と思われそうでつい隠したくなると思うのですが、そこがプライドの邪魔なところなのです。むしろ「昨日は2人だったけれど、今日は4人に増えた!」という推移を見せることで「あ、なんか盛り上がってきてるな」「私も参加してみようかな」というストーリーが生まれるのです。

最初から「100人集まりました!」という結果だけを見せられても、完璧すぎて入りづらいじゃないですか。失敗も含めて、数字をさらけ出すことが一番の「応援したい」という声につながると思っています。

ー【岡崎】格好つけずに、泥臭い過程を見せる。それが結果として人を巻き込む力になっているんですね。組織づくりという点でも、あんじゅ先生は独特なチームをお持ちだと伺いました。

ー【あんじゅ】私のチームには、いわば何でも相談できる相棒がいまして(笑)。大学職員時代からの友人で、現在はエンジニアとして独立している男性なのですが、「応援したいから何でもやるよ」と言ってくれたのが始まりでした。

今ではマネージャー的な役割を担ってもらっていて、請求書の発行からイベントの買い出し、「水がないから買ってきてほしい」といった細かな雑務まで幅広く対応してくれています。私の父が経理を担当しているので、彼が請求書を作成して父に連携する、といった運営フローも自然とできあがっています。

また面白いのが、彼はタロットや九星気学といった占いが好きで、オンラインサロン内では月に一度、相棒による「占いコーナー」まで生まれました。私には直接言いづらいような悩みも、彼には相談できるようで「今の仕事を辞めて転職しようか迷っている」といった深いキャリア相談が集まることもあります。

私一人では手が回らない部分を、彼やアシスタントたちがうまく吸い上げてコミュニティを回してくれています。そうした支えがあり、今の活動が成り立っているのだと思います。

KEYPERSONの素顔に迫る20問

Q1.出身地は?

神奈川県川崎市です。

工場地帯というよりは多摩川の自然に近いエリアで育ちました。

Q2.趣味は?

お土産リサーチです。 特に地方のご当地お土産を見るのも買うのも食べるのも好きです。

最近は大阪に移住したので、新大阪駅のお土産ベスト3を勝手に決めたりしています。

Q3.特技は?

地味なのですが……指遊びです。「月が出た出た」に合わせて指だけで踊れます(笑)。

あとは、やはり漫画を描くことですね。

Q4.カラオケの十八番は?

中島みゆきさんの「銀の龍の背に乗って」です。歌詞が全て頭に入っているほど歌い込んでいます。

Q5.よく見るYouTubeは?

ゲーム実況ですね。特に大乱闘スマッシュブラザーズの「Tea(てぃー)選手」の動画はよく見ます。パックマン使いの方なのですが、応援しながら拝見しています。あとは「第五人格」の世界大会なども見ますね。

視力が低下したのはゲームボーイのせいなのでは、というほどゲームが大好きでして(笑)。「スプラトゥーン」は750時間以上プレイしており、任天堂の公式大会にも出場しました。週3回、夜11時から社会人の友人と部活のように練習しています。

Q6.座右の銘は?

「座して死ぬより、出でて死ね」です。 以前の職場の上司に言われた言葉……だったかと思います。

何もしないで終わるより、飛び込んで当たって砕けろ、という意味で、挑戦する時の指針にしています。

Q7.幸せを感じる瞬間は?

お風呂です。特に入稿明け、原稿が終わった後の朝風呂などは最高ですね。

スーパー銭湯であかすりをして、露天風呂に入っている時は「生きていてよかった」としみじみ思います。

Q8.今の仕事以外を選ぶとしたら?

VTuberになりたいです。自分で描いた絵を動かして、少し高飛車なお嬢様・女帝キャラで配信してみたいですね(笑)。

Q9.好きな漫画は?

藤田和日郎先生の「からくりサーカス」です。

中学生の時に塾の先生に「勉強も大事だが、まずこれを読め」と薦められまして。人生のバイブルです。好きすぎて、聖地巡礼でチェコのプラハまで行きました。

Q10.好きなミュージシャンは?

松任谷由実さんです。親の影響でドライブ中ずっと流れていたので、DNAに刻まれています。

Q11.今一番会いたい人は?

高市早苗さんです。

女性ファンが多いですよね。ご自身の見せ方や、阪神ファンであることを公言する人間味など、学ぶところが多いなと。一度拝んでみたいです。

Q12.どんな人と一緒に仕事をしたいですか?

シンプルに、私のことが好きな人です。技術以上に、私の作品を読んでくださっていて、意図を汲み取ってくれる人柄重視ですね。

Q13.社会人になって一番心に残っている言葉は?

コンセプトカフェでアルバイトをしていた時、卒業する際にお客様から言われた「秋葉原は夢を追いかけて来る人は多いけれど、夢を叶えて出ていく人は少ない。だから君は素晴らしいよ」という言葉です。 あの言葉に背中を押されました。

Q14.休日の過ごし方は?

最近は「コミティア」などの同人誌即売会に出展することに熱中しています。

仕事ではなく、自分の描きたいものを描いて、直接売っています。準備は大変ですが、クリエイターとしての原点回帰のような感覚で楽しいです。

Q15.日本以外で好きな国は?

台湾です。 初めて行ったドイツで食事が合わずに苦労したのですが、台湾は食事が美味しすぎて感動しました。プライベートで8回ほど行っていますね。

Q16.仕事の中で一番燃える瞬間は?

「これ絶対面白い!」と自信満々のネームを編集者の方にお送りして、返信を待っている時間です。そして「天才です!」と返ってきた瞬間がピークです(笑)。

Q17.息抜き方法は?

最近始めたピラティスです。

かなり指導熱心な先生で「お腹を締めて!」と叱咤激励されながらやるのが逆に心地よくて(笑)。強制的に頭を空っぽにできるので、良いリフレッシュになっています。

Q18.好きなサービスやアプリは?

中国のSNS「RED(小紅書)」です。中国の方々の美への執念がすさまじくて……!

綺麗なモデルさんではなく、石膏像を使ってハイライトの位置を解説していたりするのですが「そこまでするのか!」という熱量が面白すぎて見てしまいます。

Q19.学んでみたいことは?

After Effects(動画編集)とお笑いの台本構成です。漫画に動きをつけたり、コントの構成を漫画に活かしたく、勉強中です。

Q20.読者に期待する反応は?

「あんじゅ先生、意外と考えてるんだな」と思ってくれたら嬉しいです(笑)。

安定した大学職員のキャリアを捨て、夢だった漫画家の道へ

ー【岡崎】 漫画家になる前は大学職員として5年間勤務されていて、かなり安定した職業だと思うのですが、漫画家の道へ進むことになった一番のきっかけはなんだったのでしょうか?

ー【あんじゅ】きっかけは、非常にシンプルですよ。「死ぬほど怒られたから」です(笑)。

5年目の時でしょうか。直属の上司ではなく、さらに上の役職の方にこっぴどく怒られまして。今思い返しても私、ミスなんて一切していなかったんですよ(笑)。ですが理不尽に怒られてしまったことで「なんで私がこんなに怒られなければならないの!?」と反発心に近い感情が湧いてきて「もう辞めてやる!」と。 3月末で退職しますと宣言して、4月からは無職になりました。

次の仕事の当てや、漫画家としての準備も全くのゼロからのスタートでしたが、貯金と退職金はありますし、失業保険も出るので……とりあえず2年くらいは挑戦できるかなと。

自分が卒業した大学にそのまま就職したので、社会に出たといってもまだ学生気分の延長のようなところがあったので、今振り返ると世間知らずで甘く見ていました(笑)。「もし挑戦してみて上手くいかなかったとしても、これまでの5年間の経験があれば、別の大学職員として再就職できるかもしれない」と、万が一の際のキャリアの選択肢を考えていました。

ー【岡崎】当時を振り返ってみると、不安はありませんでしたか?

ー【あんじゅ】ありましたが、“戻れる場所がある”という謎の自信があったのが大きかったかもしれません。大学職員としての経験はありますし、面接で「2年間は夢を追っていました」と言えば逆に面白い経歴になるのではないか、とか勝手に計算していましたね。なので、退職は「ドロップアウト」というよりも「少し長い夏休み」を取りに行く感覚に近かったかもしれません。

ー【岡崎】そこから、どうやって「漫画で食べていく」状態まで持っていったのですか?

ー【あんじゅ】フリーランスになった直後は本当にただの無職でした。秋葉原のコンセプトカフェでアルバイトをしたり、貯金を切り崩したりして生活をしていましたが、時間があるので絵を描いてSNSに投稿し始めたら、少しずつ反応をいただけるようになりまして。

「これは仕事になるかもしれない」と思ったのは、フリーランスになって3年目の「フリーランス税本」が出版された時ですね。

本が売れて、インボイス版なども含めて40万部近くになり、フォロワーも一気に増えました。「これは真面目にやったら、きちんとビジネスになるぞ」とスイッチが入り、そこからは先ほどお話ししたようにオンラインストアを立ち上げたり、コミュニティを作ったりと、戦略的に動き始めましたね。怒られて辞めた衝動が、結果的に私の人生を大きく変えるエネルギーになりました。

ひそかに続けて、数字で返す。家族の反対を押し切りブレイクへ

ー【岡崎】大学職員を辞める時、ご家族の反応はいかがでしたか?安定を捨てることに反対されませんでしたか……?

ー【あんじゅ】大反対されました!(笑)

親からは「普通の大学を出て、普通に就職して欲しい」と育てられてきたので、 辞めてからも2〜3年は「いつ大学に戻るの?」「謝って戻してもらいなさい」と言われ続けました。同僚と遊びに行くと親から電話がかかってきて「娘を説得してくれ」と頼むほどで(笑)。

ー【岡崎】大反対を押し切ってでも漫画を描き続けられたのはなぜですか?

ー【あんじゅ】「ひそかにやるのが楽しかったから」です。絵に関しては、幼少のころから母方の祖父が応援してくれていました。祖父の家に行くと「今日はこれを描きなさい」と課題を出してくれて。弟には算数の問題、私には絵の課題と、それぞれに合った教育をしてくれた祖父の存在は大きかったですね。

親は漫画を描くことを応援してくれませんでしたが、否定もしませんでした。容姿のことや、人格を否定されたことは一度もなくて、基本的には「明るくて元気な子」として愛されて育ちました。

私、中学生の頃は体重が68キロくらいあって結構大きかったのですが、それでも母はずっと「可愛い可愛い」と育ててくれましたね。

ー【岡崎】ご家族、特におじい様からの深い愛情が、自己肯定感を高めた土台となっているのですね。

ー【あんじゅ】そう思います。なので、大学を辞める時も「まあ、私ならなんとかなるだろう」と思えましたし、親に反対されても「結果で見返してやる」と思えました。本が売れて30万部、40万部となった時に、やっと親も「あなたはしつこい性格だね」と諦めて認めてくれました(笑)。

今では父は経理を手伝ってくれてますし、家族が私の一番のファンかもしれません(笑)。 結局「好きなことで生きていく」というのは、最初は誰にも理解されないものです。ですが、ひそかに続けて、数字という結果を出せば、周りは手のひらを返してくれる……その瞬間、認められたと感じて、嬉しくなりました。

「稼ぐ」を目標にすると、やることが決まる──迷いを減らす考え方

ー【岡崎】漫画家として成功を収めた今、次に見据えている目標は何でしょうか?

ー【あんじゅ】個人的な目標としては、やはりアニメーションや動画制作に挑戦したいです。自分の絵が動く楽しさを追求したいですね。

それともう一つ、仕事の軸として力を入れたいのが最近資格を取得した「キャリアコンサルタント」としての活動です。周囲のクリエイターやフリーランス志望の方々を見ていて、「思い込み」で損をしている人が多すぎるなと思ったのです。

「私なんかが漫画家になれるわけがない」「このスキルではお金なんて頂けない」……そういったメンタルブロックが行動を止めてしまっているなと感じることが多く、キャリアコンサルタントの勉強をして、質問を通じてその思い込みを外す技術を学びました。

これからは、クリエイターが「自分の価値」に気づいて、正当に稼げるようになるための手助けをしていきたいのです。

ー【岡崎】素晴らしいですね。あんじゅ先生ご自身も、かつては「大学職員しかできない」という思い込みがあったのでしょうか?

ー【あんじゅ】ありましたね。私自身も「漫画家なんて夢のまた夢」だと思っていましたから。

ですが、小さな行動と努力が実り、実績がついてきた時、全く違う景色が待っていました。だからこそ、読者の皆さんにも「もっとシンプルに、お金を稼ぎましょう」と伝えたいです。

何をしていいかわからないと悩む方が多いのですが「お金を稼ぐ」ことを目標にすると、やるべきことが明確になるのです。人に知ってもらうために宣伝しなければならない、商品を綺麗に見せるためにポップを作らなければならない……と、全てが「稼ぐための一歩」だと思えば、作業自体が楽しくなってきます。

それに、自分のクリエイティブに対してお金が支払われるということは、社会から「認められた」ということじゃないですか。それってとても幸福度が高いことなのです。

ー【岡崎】確かにそうですね……!「稼ぐ=悪」ではなく「稼ぐ=貢献と承認」と捉え直すことが大事ですね。では最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

ー【あんじゅ】私が思うに、人生がうまくいかない理由は、1つに「自分を評価する上司の能力が低いこと」、2つに「その上司を評価する経営者の能力が低いこと」、3つに「自分のクオリティが、求められるレベルに達していないこと」。この3つしかありません。

今の自分がモヤモヤしているなら、このどれに当てはまるかを冷静に考えてみてください。 もし1か2なら、即座に場所を変えるべきです。「評価されない場所」に居続けることほど無駄な時間はありませんので、すぐにでも自分を高く買ってくれる場所に移動しましょう。もし3なら、不平を言わずに実力を磨くか、プロの技を盗んでください。

原因を分解して、行動する。それだけで、人生は驚くほど好転して、自然と収益がついてくるようになると思います。


【クレジット】
取材・構成・ライティング/岡崎美玖 撮影/村田征斗 企画/大芝義信

【スポンサー】
・エンジニア組織のハードシングスのご相談は「株式会社グロースウェル

Company

若林杏樹(あんじゅ先生)

<著書>
「貯金すらまともにできていませんがこの先ずっとお金に困らない方法を教えてください!」(サンクチュアリ出版)15万部突破
「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!」(サンクチュアリ出版)25万部突破
「今の働き方、ホントにそれでいいの?」(高橋書店)

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