窮地を救い、未来を描く。中小企業診断士 野竿健悟が導く、生き残りの戦略

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氏名 野竿健悟
肩書 株式会社トライズコンサルティング 代表取締役
出生 1979年
株式会社トライズコンサルティング 代表取締役。中小企業診断士。製造業やサービス業をはじめ、幅広い業界の補助金申請支援で高い採択実績を持つ。元システムエンジニア(以下:SE)であり、システム開発関連の支援で多数の実績を誇る。

「持続化給付金」「休業支援金・給付金」は、コロナ禍で耳にする機会が多かったのではないか。援助以外にも、ビジネスを推進させる様々な制度を国や自治体は用意している。しかし、その情報は行き届かず、また申請業務は煩雑で、かなりの時間と労力が必要だ。その業務進行を支援し、さらには経営的視点から事業へ助言をくれる専門家がいる。中小企業診断士だ。今回は、中小企業診断士として活躍し、経営者の顔も持つ野竿 健悟と、中小企業の抱える課題、制度の本質、中小企業診断士の存在意義について対話した。

※ 本インタビューは緊急事態宣言が発出される以前に、感染症対策を行なった上で実施しています。また、取材後2週間が経過した時点で、関係者に新型コロナウィルスに関する症状はありません。

経営難の家業を救いたい。経営を学んだきっかけ。

—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】『ザ・キーパーソン』は、ジャンルや年齢を問わず活躍されている方にインタビューし、時代のキーパーソンから学ぶことをコンセプトにしたメディアです。今回は、会社経営の傍ら、中小企業診断士として実務面でも活躍されている野竿さんにお話をお聞きします。まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

—【話し手:野竿氏、以下:野竿】中小企業診断士として活動し、会社でも中小企業向けのコンサルティングを行っています。独立して3年目です。補助金の申請支援事業が主な仕事で、事業者さんのお話から方向性を決めて、事業計画を作ります。実は中小企業には、補助金がたくさん用意されているんですよ。

—【松嶋】特にコロナ禍では、制度として分かりやすい補助金・給付金が用意されましたね。

—【野竿】はい。しかし、まだ知らない人が多いです。さらにITリテラシーが高くないと情報にアクセスできません。そこは是正したいですね。

—【松嶋】直近、補助金ポータルサイト「補助金バンク」をリリースし、プレスリリースを配信されましたね。補助金・助成金のポータルサイトは、他社も含めて、いくつかあります。今回リリースされた「補助金バンク」は、どのようなポータルサイトでしょうか?

—【野竿】「補助金バンク」は専門家が運営しています。一方、他のポータルサイトは専門家ではなく、メディアが運営していることが多いです。「補助金バンク」は、専門家が記事をきちんと確認しているので、正確な情報にこだわって、情報をお届けしています。

—【松嶋】中小企業診断士として、顧客への関わり方が様々だと思いますが、どのような支援をされていますか?

—【野竿】中小企業の課題は多岐にわたります。売上を向上はもちろん、資金の工面、マネジメントなど。私は、新しいことにチャレンジして、成長していくことを支援していきたい。社名の「トライズコンサルティング」は「トライ」と「ライズ」を合わせた造語で、その想いを込めています。

直近は、デジタルマーケティングに課題を持つ中小企業も多いです。我々もその領域にトライし、事業者さんに最適解を提案できるよう、取り組んでいます。

—【松嶋】野竿さんは独立される前はSEの職に就かれ、中小企業診断士の資格を取得後、独立されています。いつから、独立や中小企業診断士に興味をお持ちだったのでしょうか?

—【野竿】家族が苦しい時期もあって、その状況を打破したいと思ったのが最初のきっかけです。実家が印刷屋を営んでいて、子どもの頃から継ぐつもりでした。いったん社会に出て3年程経験したら戻る計画で、システム関係が好きだったことからSEに興味を持ち、就職しました。しかし、当時はもう印刷業界は右肩下がりで苦しく、家業を継ぐのが難しい状況でした。

出身地の大阪で働いていましたが、継がないと決心してから、東京へ。その頃は家業の借金も多く、何とかしないといけないと思い、経営の知識やマーケティングを独学しました。世間的にはiPadが発売され、本をカットしてスキャンすることが流行り始めてて、それを見て、「これだ!」と思いました。印刷屋には断裁機がありますから、それを活用することを思いつきました。ネットで注文を受けて、本を預かり、本の背表紙を断裁するサービスを立ち上げました。ホームページの作成も、SEO対策も自力でやって、なんとか売れるようになりました。今でもコンスタントに売り上げがあります。

SEと診断士は親和性も高いんです。事業活動の上流課題を明らかにして対応策を考える。思考の過程は似ています。上流課題に対応できるようになりたい思いもあって、資格を取るに至りました。

—【松嶋】資格取得後、すぐ独立されたんですか?

—【野竿】1年後ですね。補助金・公的支援も十分にあったので、診断士になってその支援を仕事にすれば、食べるには困らないだろうと思い、独立しました。最初、軌道に乗るまではエンジニアの業務も受けていました。週4日エンジニア、週2日は診断士。だいぶしんどかったです。「ダメだったらエンジニアに戻ればいい」と、独立を楽観視していたのかもしれませんね。

—【松嶋】独立前にお持ちだった支援したい思いは、今実感されているんでしょうか?

—【野竿】そうですね。本当に苦しい中小企業の支援もできています。国は経営改善計画として、補助金を出しています。銀行の支払い期日に猶予を持たせるためです。その経営改善計画もやれています。

—【松嶋】資金があればもう少し頑張れるけど、資金が回らず事業が止まってしまっている。でもこの苦しい時に改善策を取れれば、5年後、変わっている可能性もあるということですね。

—【野竿】そうですね。その猶予を使って原因を究明し、メスを入れれば、利益を確保できて返済できることがあります。これは本当にやりたかったことで、正直、私の稼ぎは重視していません。

中小企業が抱える、多様な課題

—【松嶋】本当に困っている中小企業は、資金がないため、厳しい支援だと思います。したし、やりがいは大きそうですね。具体的に、どんな改善を提案されていますか?

—【野竿】最近、担当している製造業さんだと、原価管理がきちんとできておらず、利益を出せる価格設定になっていませんでした。原価に含まれる人件費を考慮せず、ほとんど利益が残らない状態で、作れば作るほど赤字でした。製品によっては、むしろ作らないほうがましなことも。そこで全商品の原価を調べて、価格を設定し直しました。

—【松嶋】マーケティングや資金調達とはまた違う、泥臭い部分だと思います。そういった領域に踏み込むことも、ご自身としては好きな領域なのでしょうか?

—【野竿】数字の分析はけっこう好きなんですよ。調べて、問題点を見つけるのが好きなので、苦ではないですね。

—【松嶋】本当に困窮した企業を救う活動は、やりがいが強く感じられそうです。ご自身の経験にもなりますよね。

—【野竿】はい。助言するにしても、深みが出ると思います。診断士を取ってから3年しか経っていませんので、まだまだ勉強しなければなりません。どちらかというと、少しお金をもらいながら勉強させてもらっている感覚です。

—【松嶋】これまでは製造業を支援されいて、昨年はコロナ禍で困窮した飲食店の支援を中心にされていたと思いますが、業種・業界は特に決めていないのでしょうか?

—【野竿】特に決めていないですね。今はたくさん学んでいろんなものを吸収しています。これから当たりがついてくるんだと思います。飲食店は、注力して支援しようと思ってはいませんでしたが、コロナ禍で何かできることはないかと思って。飲食店支援プロジェクトを協力先と組んで支援しようと言う話になって、記事を載せたり、専門家を集めて支援した経緯があったんです。

—【松嶋】飲食店は、まさにデジタルやマーケティングも弱いですよね。今後の支援はどのようにしていこうとお考えですか?

—【野竿】デリバリーやテイクアウトへの適応や、商品開発を考えています。改善すべきところはたくさんあります。それから、私は補助金が専門なので、資金繰りも調達しながらやっていきたいです。

—【松嶋】支援をしていて、どんな時に一番熱くなりますか?

—【野竿】夢を実現しようとする社長さんですね。実現したい夢があるけど、キャッシュ不足やリスクもあるので、うまく補助金を使ってリスクヘッジしたい。でも本当にやりたいという方。事業に対する思いや社員に対する思いが強い方を支援すると、やりがいを感じます。補助金採択された後も、強い想いがある方とそうでない方とでは反応が全然違います。「おめでとうございます」と言うと「ありがとうございます」と気持ちよく言っていただくので、やりがいを感じます。

補助金は燃料。進みたい方向があるからこそ必要なもの。

—【松嶋】中小企業の課題は2つあると思います。1つは、集客能力の弱さ。もう1つは、補助金・助成金を含めた資金調達。中小企業は、関係のある銀行から決まった借り方しか知らないことが多いと思います。

—【野竿】資金調達は、正直、銀行から資金を借りられないと、補助金を借りても難しいと思います。ただ、補助金が先にもらえるとわかった場合、銀行はその分を貸します。補助金で返ってくる見込みがあるからです。「補助金が出るなら銀行が貸します」と言うのは、よく聞く話です。半年程の短期間で借りて返済する。返済の残りは、自己負担か他に借りたところから工面する。会社さんと銀行の関係次第なところもありますけどね。ただ、補助金の申請書は、いわゆる事業計画書です。銀行にとっては融資の資料です。私は基本的に、事業計画書を銀行に先に持って行くよう話しています。

—【松嶋】補助金・助成金支援をしてくれる方は増えていますが、一緒に事業を作る観点で支援をしてくれる人はあまりいないように感じます。実際に事業が良くなると言う観点よりも、採択されやすいパターンに沿って資料そ作られる印象です。野竿さんは、事業を作る観点で支援されていますね。なぜそのような支援をされるのでしょうか?

—【野竿】まさにそこはやっていきたいと思っています。補助金申請にはいろんな考え方があります。補助金もらいたいだけの企業と、成功報酬が欲しいコンサルタントなど、お金が欲しい方もいます。私は、新しいことにチャレンジしたい気持ちを支援したい。そのために補助金を活用するのが、あるべき姿だと思っています。チャレンジする意欲のある方を支援したいんです。

補助金申請も、コンサルティングの1つです。情報を整理して、最終的に見える形にしたものが申請書として出来上がる。事業者さんにヒアリングを重ねて、そのお話を事業計画書として形にすると、事業者さんの頭が整理されます。その過程もすごく大事だと思うんです。

—【松嶋】一時的にキャッシュを入れても、その間にビジネスが改善されなければ、単純に返済期日を先延ばししただけになってしまいますよね。

—【野竿】そうですね。補助金を使いたいお客さんにはいろいろな方がいらっしゃいます。例えば「補助金がほしいんですけど、どうやったら取れますか」「とりあえず補助金がほしい。何だったら使えますか?」とご相談をいただくこともあります。そういうご相談をいただいた際は、補助金の使い方からお伝えしています。私の思いにも共感してくれて、意欲のために補助金を活用するスタンスでいる事業者さんを救いたい思いがあります。補助金の使い方を、啓蒙することもありますよ。

—【松嶋】補助金はあくまでツールですよね。しかし、お金はあるに越したことはないので、用途を考えず、損得勘定だけでもらおうとする方も多いんじゃないでしょうか?でもそれは、本来の目的とは異なりますよね。しかし、審査側もそこを読み取るまでの審査ができない。ですから、この制度をうまく使うには、間に入る方の本気度が重要だと思います。野竿さんは、業界行動も含めてどうお考えですか?

—【野竿】こだわりのある人、支援をして儲かりたい人、診断士にもいろいろなタイプの方がいると思います。私はこだわりが強いというよりは、客観的な視点を持って取り組む方だと思います。事業者さんの取り組み内容で、本当に効果が出せそうかをしっかり検討します。場合によっては、補助金を使わずに自己資金でやることも勧めます。その方が、スピードが出るので。

今回発表された事業再構築補助金は6,000万円程支援されます。金額に目がくらんでしまっている人も多く、そういう人は6,000万円をどう計上するかばかり考えています。私としては本当に必要なもの、自分がやりたいことをまず考えて、そのために6,000万円を使う発想をしてほしいです。

よくある要望が、「新事業を推進するためにオフィスを改装したい」です。しかし、本当にそれが新事業を推進するのでしょうか?新商品の展示にショールームを作る話もあります。ショールームの建設に2,000万円かかると言われても、どうやってそれを回収するのか。私は、こういうケースでは「申請できない」と、きちんと伝えています。本当に売り上げがあがる計画じゃないといけない。私としては、2,000万円の補助金をショールームで使って、無理矢理申請書を通した方が報酬が増えるんです。でも採択されたとしても、全然嬉しくない。無駄な投資をせず、もっと効果的な使い方をしてほしいですね。仮に建設費が経費だったとしても、保有してしまえばその維持にお金がかかり続けます。そのような投資を回収できるか分からない計画を聞くことも実際にはあります。そういうものは、最初にコンサルティングして、計画の練り直しをアドバイスします。

経営者として、今後強化したい事業

—【松嶋】個人としての支援活動、経営者としてのサービス提供を行われていますが、今後は後者が強化されていくのでしょうか?

—【野竿】そうですね。会社を経営する上で、マネジメントとプレーヤーのどちらに専念するか迷う時期もありました。経営者の立場や今後の自己成長を考えると、マネジメントをやった方がいい。でも、実務も少しはやりたい。そうして今は、マネジメントが8割、プレーヤーが2割で落ち着いています。

私の補助金支援は、採択率が割と高く、そのノウハウも確立できています。私が業務から離れても、回る仕組みを作りたいと考えています。適正な価格で採択率の高いサービスを提供できれば、もっとお客さんの役に立つと思います。そして、私は別のところにまた注力する。「補助金バンク」はその1つです。情報が届いていない方に届けたり、適正価格で提供するためです。相場と乖離した高額な報酬を請求する業者には、市場競争の上で勝ちたいですね。うちは相場より安いと思います。

「補助金バンク」は、専門家のマッチングなので、マッチング以降もサポートするか、マッチングだけして価格設定は専門家にしてもらうのか、今後議論が必要ではあります。ただ、後者の場合は高すぎない報酬レンジを案内しながらやっていくかもしれませんね。

—【松嶋】相対的に比較しなければわからない場合も多いですもんね。情報を届けることについて、どのように取り組んでいきたいですか?

—【野竿】コンサルティング領域を、どこまで組織としてできるかチャレンジしたいです。コンサルティングファームを作れるか。正直、他の事業と比べると難易度は高いと思います。非常に俗人的ですし、優秀な専門家をどうやって集めるかといった課題もあります。自分が動いていたら、抜けられませんし、事業としては推進できませんから、考えなければなりません。

—【松嶋】チームを組んでいきたいところにはどんな思いがあるのでしょうか。

—【野竿】自分のスキルがどんどん向上しても、1人では限界があります。支援をより多くの人に届けようとすると、いろいろな人に協力してもらわないといけない。サービスをより多くの人に届けたいです。

人の役に立ちたい。根本にあるのは、経験から培われた発想転換。

—【松嶋】中小企業がトライしながら上昇していくのを一緒にやっていきたいし、そういう企業をできるだけ多くしていきたい。そして一人でやるには限界があるから、一緒にやれる人を多くして、一緒にやることで、その思いを広げていきたいとお考えなんですね。

—【野竿】そうですね。あとは、中小企業のIT化にも注力していきたいです。中小企業の支援をしていくなかで、IT化がだいぶ遅れていることに気づいたんです。自分の強みも生かせますし。どういった方法かはまだわからないですが、ツールを提案したり、新しいサービスアイディアがあれば、作ってみてもいいかもしれませんね。

—【松嶋】ITができないことが理由で、事業が伸びないケースも相当ありそうですね。

—【野竿】そうですね。エクセルで管理していても、抜け漏れがあったりします。システム化してしまえば、正しい情報を入れないと辻褄が合わないロジックが作れるので、システム化を支援していきたいですね。

中小企業白書でも、IT導入で生産性や売り上げが向上することが統計的に明らかになっていました。適切な投資すれば、回収できる可能性が高いので、やっていない場合はやるといいと思います。今はIT導入補助金というものもありますから。

ただ、しっかり試算は必要です。導入するときに、見込める効果、利益、回収計画をしっかり行う。ベンダー主導だと、売りたい商材が優先的に案内されることもあります。その提案が本当に最適かどうかを、セカンドオピニオンとしてコンサルティングに頼ると、より正しい判断ができるんじゃないかと思います。

—【松嶋】ベンダーは、得意な領域が決まっているほど、自分たちの中で一番良い提案をしてしまいます。野竿さんは自分が稼ぐよりもお客さんのためを考えて、いい方法があったら、まずそれを提案できる方なんだと思います。

—【野竿】自分が儲けたい、稼ぎたい気持ちだけで動くと、お客さんのためにならないですし、お客さんにも伝わる気がします。逆に、お客さんのことを想う気持ちも、また伝わると思います。ちょうど去年、持続化給付金の相談を窓口で受けたときに、「ものすごく簡単なので自分でやってください」と、お断りしました。その時に「多少アドバイスはできるので、お金はいりませんからいつでもご連絡ください。」お伝えしたら、その発言を気に入ってくれて、ご支援することになりました。稼ぎたい気持ちもありますが、適正価格の中でやっていきたいですね。

—【松嶋】お金を稼ぐ方法がわかる人はいくらでもいますが、そういう人こそ仕事の楽しさを知らないと思います。だから稼いでも、楽しくない。野竿さんは支援する方の夢に寄り添っているときは、お仕事がすごく楽しいのかなと思います。

誰でもお金は欲しいと思いますが、結局みんなが不満に思うのは、お金ではなくて仕事がつまらないことです。仕事がつまらないからお金くれないとより損をした気持ちになりますし、永遠に「お金をくれ」と言い続けてしまいます。楽しく仕事をしている人は、「お金をくれ」と言いませんし、口コミなどで集まるお客さんにも楽しい雰囲気が伝わる。そうやって、仕事がどんどんやりやすくなるんだと思います。

—【野竿】私は根本的に人の役に立ちたい気持ちがあるんです。困っている人がいるから助けたい。そして実体験があったものは、もっと寄り添えるのかなと思っています。

—【松嶋】なぜ逆境の時に立ち直ることができたのでしょうか?

—【野竿】追い込まれたからじゃないでしょうか。SE時代の経験が大きいかもしれないですね。成功したプロジェクトもありますが、大失敗したプロジェクトもあります。順風満帆ではありませんでした。残業時間が月100時間という状態が1年間続いたり、体もメンタルも負荷がかかった状態で十数年仕事をしていたこともありました。それでも負けていられないから這い上がろうと思う気持ちが、仕事しながら鍛えられたのかもしれません。

—【松嶋】普通の人は、実体験があったとしてもサービスに変える発想がない。野竿さんはその発想があるから、乗り越えられているんだと思います。今は外に向けてサービスを提供されていますが、野竿さんのキャリアをお聞きして、個人としてもその発想転換をされていらっしゃると思いました。

—【野竿】多分、飽き性なところもあると思います。SE時代もプログラミングに携わったり、マネジメントもしていました。しかしやり続けていると、それも飽きてしまいました。新しいことをやっていたい気持ちがもともとあるのかもしれないですね。

—【松嶋】視野が広いんでしょうね。だから、自分の外にあるものにも気づけるし、行動してみる。普通は、今自分がいる領域の範囲でなんとかしようとするので、どうしても視野が狭まってしまいます。

—【野竿】何が役に立つかを考え続けるのが根本にあるのでしょうね。相手のためにならなかったら意味がありません。いろいろなサービスがありますが、存在意義がないとなくてもいいじゃないかと思ってしまいます。中小企業も特徴がないなら特徴をつくるべきだと思いますし、それを作っていくお手伝いをしたい。存在意義がある会社を増やしたいですね。人にとって価値のある状態を作っていきたいということですね。

経営支援に留まらず、人の上昇成長にきっかけを与えたい

—【松嶋】今後、新しいお取り組みはありますか?

—【野竿】デジタルマーケティングの領域ですね。WEBデザイン、SNSの運用、動画の制作など、全般的に提供したいですね。

—【松嶋】中小企業の診断より、診断後のアクションを領域関わらず、寄り添っていきたいんですね。

—【野竿】診断士は、専門家という位置づけですが、広く浅い知見を持ち、事業のハブになって情報を伝えることが本来の役割です。私も、飲食店支援の全てをカバーすることはできませんから、メニュー開発、ECサイト、デリバリー、それぞれのプロフェッショナルとタッグを組み、プロジェクトを推進したいですね。

あと、真新しいことでいうと、ジムを経営したいですね。最近、筋トレを始めたんですが、とても調子がいいんですよ。メンタルにも筋トレや運動が良い影響を与えるんだと思います。私はSE時代、過酷な働き方をして、メンタルを崩してし、相当つらかった経験があります。それもあって、メンタルを崩した人のサポート事業もしたいと思っていました。

—【松嶋】ジムでは、どのようなアプローチをお考えですか?

—【野竿】ジムは、筋肉ムキムキにしたい人や、痩せたい人、いろいろなニーズがあります。でも、メンタルの不調を整えたい人向けのフィットネスはあまりありません。ジムにこだわる必要はありませんが、ジムという選択肢を作ってあげたいんです。怪我を負ったら、リハビリをしますよね。理学療法士が専門家として存在しますが、精神系はリハビリをしてくれる先生はいません。対処法は、薬だけです。

私は、5年程時間をかけて復帰することができました。その時は薬を服用していましたが、今思うと薬以外の選択肢も、必要だと思います。アロマやマッサージ、鍼などの選択肢もありますが、1つのオプションとして、ジムを考えています。心療内科の先生とタッグを組んでやりたいですね。

—【松嶋】事業も個人にも言えることですが、本来は自立しないといけないけれど、できていない状態から自立するのは難しいですよね。でも、専門家や、経験した人がちょっとアドバイスするだけで、ガラッと変わることがある。野竿さんが持っている、経験を形として提供できれば、その人の人生も変わる。今後もどんどん幅が広がりそうですね。

—【野竿】そうですね。「補助金バンク」も、情報にアクセスできない人がいて、情報格差を知ったことがきっかけでした。経営も、ちょっとした情報が飛躍の糧になることもあります。ですから、アクセスできない人に情報を届けて、成長していけるように支援していきたい。ちょっとしたきっかけを与えるとで上に昇っていく。経営にもメンタルにも、共通している部分かもしれませんね。