『バチェラー・ジャパン』久保裕丈が明かす
番組出演後の人生と新たなビジネス

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氏名 久保裕丈
肩書 株式会社クラス 代表取締役社長
略歴 海城高校から東京大学、同大学院を経て、外資系コンサルティング企業のA.T.カーニーへ入社。その後、起業の道に進みファッション通販サイト『ミューズコー(MUSE & Co.)』を立ち上げ。2015年には同社を17億円超でmixiに売却。Amazonが配信する恋愛リアリティー番組『バチェラージャパン』の初代バチェラー。現在は月々500円から使える家具シェアリングサービスを提供するCLAS(クラス)の代表取締役。

今回、お話をうかがったのは久保裕丈(くぼ ひろたけ)さん。東京大学の大学院を卒業後、外資系コンサルティング企業のA.T.カーニーへ入社。その後、ファッション通販サイト『ミューズコー(MUSE & Co.)』を立ち上げ、2015年には同社を17億円超でmixiに売却した、という実績の持ち主です。2017年には、Amazonが配信するリアリティー・ショー『バチェラー・ジャパン(The Bachelor Japan)』に出演。「容姿端麗で、裕福な男性」の「彼女」になるべく女性25人が恋愛サバイバルを繰り広げる番組の中で、洗練された立ち振る舞いを見せて、多くのファンを獲得。起業家としてだけでなく、タレント的存在としても注目される異色の存在です。

バチェラー出演の影響

—【聞き手:楯雅平(たて まさひら)、以下 楯】本日はよろしくお願いいたします。私たちのメディアは「時代のキーパーソンに学ぶ」というテーマで、ジャンルや年齢を問わず活躍されている方やユニークな働き方をしている方にインタビューをさせていただくメディアです。今日は「起業家、経営者」としての久保さんにフォーカスしてお話をおうかがいする予定です。しかし、どうしても『バチェラー』の話題は避けて通れませんので……最初は、やはりそこからお話しいただければと(笑)。

—【話し手:久保裕丈(くぼ ひろたけ)、以下 久保(敬称略)】わかりました(笑)。よろしくお願いします。

—【楯】番組に出演される以前から起業家としてご活躍されていましたが、世間的には『バチェラー』の久保さんという見方の人も多いはずです。例えば、ビジネスの場面でも「あ、あのバチェラーの人ですか?」と言われることがあるのではないでしょうか? そのように「番組を通じてできたイメージ」が広まっている状態について、悪い面と良い面を教えてください。

—【久保】悪い面というか、デメリットはあまり感じていません。確かに、番組をご覧になった方々は私に対する先入観をお持ちになると思います。でも、実際に会ってお話すれば、『バチェラー』の久保と違う部分もわかっていただけますから問題はありません。

良い面で言うと、番組を通じで多くの方に自分を知っていただけたことで、会える人の幅は広がったということはあります。あとは、初対面の方とのアイスブレークにも活かせますね(笑)。「はじめまして、バラの花(※)を渡していた者です」と言ってネタにしています(笑)。

※編集部注:『バチェラー』では、男性からバラの花を受け取った女性だけが次のステージ(デートなど)へ進めるというシステムになっており、番組の山場となっています。

「イケメン」と評価されることについて

—【楯】軽い質問で恐縮ですが、久保さんはとてもたくさんの人に「イケメンですね」と言われますよね? 初対面でそう言われたときに、うまく返す「ベストプラクティス」みたいなものはあるのでしょうか?

—【久保】どうなんでしょう……(笑)。特に、否定はする必要はないと思います。男性でも女性でも、褒めていただいた時に「いやいや」とか「そんなことありません!」とか否定しちゃうと、逆に相手の方が話しづらくなることがあるじゃないですか? ですから、「イケメンですね」と言っていただけたときは「ありがとうございまっす!」とか「すみません」イケメンで(笑)」みたいな感じでありがたく頂いて、否定しないようにしています。

—【楯】さすが、素敵です(笑)。

これからモテる男

—【楯】海外の『バチェラー』を見ていると、アスリートだったり、軍人だったり、いろいろな人が居ます。誰が見てもわかりやすく「モテる」要素が必要なわけですが、5年とか10年の期間で見て、今と変わるというイメージはありますか? 容姿、職業、生い立ちなどいろいろありますが……。

—【久保】昔は男臭い人がモテたと思います。一方で、今は中性的な方がモテますよね? 人気の職業は商社か金融系でしょうか。あと、私の世代は「外資系コンサルに行くとモテる」みたいな時代でしたが……。これからはフリーランス的な「自分のスキルで生きていくヤツがモテる」時代が来るかもしれません。

『バチェラー・ジャパン』に関して言えば、男性キャラクターにもっとバラエティが出てくると、おもしろいですよね。2代目バチェラーの小柳津さんも大学を出て、大きな企業の幹部になっている方ですから、これまでの「モテ」パターンに近いと言えるでしょう。でも、回を重ねるごとに、アスリートとかアーティストの方が出てきてくれたらいいと思います。あと、個人的には思いっきりチャラい人、遊び人が出てきて番組を引っ掻き回してくれたらおもしろいと思っています(笑)。

—【楯】さて、次の質問です。初代バチェラーとして、、そして起業家としての『久保裕丈』は個人ブランドになっていると思います。また、Instagram 約2万3000人、Twitterで約1万人のフォローをお持ちですから「個人メディア」、あるいは「インフルエンサー」とお呼びしても差し支えないかと。そういった状態が「仕事に役立つ」という感覚はありますか? もしくは「ビジネスとそれは別物」ですか?

—【久保】ソーシャルメディアは、お客様に自分の会社やサービスのことを知っていただくきっかけとして、とても役に立っています。今ちょうど、CLAS(クラス)という家具やインテリアのレンタルサービス会社の立ち上げをしているので、そういう状況ではソーシャルメディアをフル活用したいと思っていますね。



“CLAS(クラス)は月々500円から家具、インテリアがレンタル可能なサービスです。転勤・結婚・出産などライフステージにあわせた交換・アップグレードも。家具は『買わない』 時代へ”


【CLAS】https://clas.style



最近のSNSでは「炎上」が起こることも少なくないので、自分がそうならないように気をつけています。具体的に言うと、投稿する前に自分が書いた内容を「立場を変えて読み直す」ということをしています。年齢や職業、趣味、住んでいる場所がちがえば感じ方もちがうし、面白いと思うポイントもイラッとくるポイントもちがうはずです。なので、想像力を働かせながら視点を変えて「自分のコメント」を別の角度からも読んだ上で発信するよう心がけています。

—【楯】『バチェラー』としての久保さんの知名度を考えると、ビジネスの面でも引き合いが多いのではないでしょうか? 当然、全てのオファーを受けることはできないと思いますので、「断る、受ける」の見極め、「やらない判断」はどのようにされているか、教えてください。

—【久保】そこはシンプルかつ、ビジネスライクに決めています。会社にとってメリットが有るか、無いかの判断ですね。逆の立場として、仮に私がどなたかにお会いして時間をいただく時は、それに対するお返しをしたいと思っています。時間は誰にとっても有限で、ある意味では一番貴重な「資産」ですから、その「資産」をいただくなら、必ず何か「お返し」ができるようにしないといけないという考えです。

勉強にはコンプレックスがあった

—【楯】さて、ではここからは『バチェラー』の話は離れて、よりパーソナルなストーリーをお聞かせいただければと思います。まず、生い立ちから学生時代までのお話しを聞かせてください。

中高一貫のエリート校のご出身ですが、他のインタビューでは「高校3年生まで、成績はクラスで最下位レベル」というお話しもあったと思います。しかし、その後は見事に東京大学工学部に入り、大学院を卒業されました。この間、何か転機のようなものがあったのでしょうか?

—【久保】 私はもともと勉強が得意ではありませんでした。学校でも塾でも、一番良いクラスには入れましたが、いつもその下のクラスに落ちるスレスレの成績でした。中学校受験で合格したのも、実は第3志望の学校で、しかも補欠での滑りこみでした。

第1志望と第2志望の学校に入れなかったことは、当時の自分には「受験に落ちた」という感覚に等しくて、非常に悔しかったです。入学してからの成績も波があって……というか、だいたい悪かったです(笑)。ですから、勉強に関しては間違いなくコンプレックスを感じていました。

そんな学生時代だったのですが、高3の12月に、ふと「このまま中途半端に勉強して、良い結果がだせなかったら、一生コンプレックスを抱えて生きていくことになる」と思い、思いっきり勉強しようと決めました。

それで、バリカンで髪の毛を刈ってボウズ頭にしました。そうすると、街に遊びに出れなくなります。自分の周りに読者モデルをしている友だちがいたのですが、そんなオシャレな人たちとボウズ頭で並んで歩くとか、高校生にとっては相当恥ずかしい(笑)。結果、家にこもって勉強するようになりました。当時は1日12時間くらい、短期集中型で勉強をしました。

外資系コンサルで得たモノ

—【楯】そうして、東大に合格され、大学院まで進まれたわけですから、すごいですね。

ご卒業後は外資系のコンサルティング会社A.T.カーニーに就職されたそうですが、その当時について教えてください。「この時代に学んだことで、起業に役立った」というようなお話があれば、ぜひ、教えてください。

—【久保】コンサルでの経験が起業に大きく役立つかというと、そんなことはありませんでしたね。資料作りなどで自分が手を動かさなければならなくなった時に『エクセル』や『パワーポイント』が得意、みたいなことはありますが……。ほんとは、あまり経営者が資料作りにかかりきりになるのは良くないので、それが得意というのは微妙と言えば微妙です。今どきは『500 Startups』が出している「ピッチのテンプレート」みたいな物をもとに作れば、それなりの物ができますしね。

コンサル時代の経験で「人前でしゃべる」ことに慣れたとは後の役に立ったと思います。大企業のマネジメント層を前に話すので鍛えられました。他には……ハードワーク耐性というか、いざというときの馬力みたいなものも身についたかなと思います(笑)。自分が大量の作業をしなければいけない状態になっても「それなりにできますよ」みたいな自信はつきましたね。

起業を考えている方がコンサルという道を通らなければいけないかと言うと、そんなことは無いと思いますけれど、何であれ会社員という立場を経験するのは良いことだと思います。経営者というのは特殊な職種なので、いきなりその立場になってしまうと、どうかなというのはあります。経営者としての思考回路だけしか自分の中にないと会社を構成する大多数の人の心の機微はわかりづらいですからね。もちろん、学生起業ですぐに経営者になって成功している人もいますけれど、それが一番の効率が良いかと言われると「どうだろう?」という感じです。

コンサルタントや経営者として会社を見てきてわかったのは、仕事をうまく進めるためにはコンセンサスゲームが必要だということです。かっこいい話でも、目新しい話でもありませんが、実際「すり合わせ」こそが会社を円滑に動かす力だったりするわけですよ。そして、これはいきなり経営者になってしまうと身につきづらい部分なので、会社員を経験するメリットは大きいと思います。

起業のゴールはどこなのか?

—【楯】その後、ご自身で会社を始められたわけですが、当初からバイアウトされることを想定して起業をされたのですか?

—【久保】最初からバイアウト狙いではありませんでした。できれば、IPOをしたかったです。ですが、単独で成長していくのは難しいと考えていたタイミングで、キャッシュリッチな会社からご提案があったので、お受けしたというかたちです。

—【楯】起業のゴールに買収されることを想定する人は少なくないと思います。そういった方々へ、ご自身の経験をもとにアドバイスをお願いします。

—【久保】バイアウトされることを最終ゴールとしてしまうと、会社は大きくなりづらいと思っています。ミューズコーという会社の場合も、世の中に良いインパクトを与えていこうという試みの途中で、バイアウトという区切りが存在していただけです。ですから、そこがゴールであるとか、それをもって成功したと言い切れる気持ちはありません。

起業する時は、社会に良い変化を起こす、それによって世の中の人たちに喜んでもらうということをまっさきに考えて、その途上にバイアウトがあるという考え方にした方が、結果的に良い金額でバイアウトされる確度が上がると思います。

利益を上げるのは当然として、その先に社会的な意義や理念があれば欲しがる会社はたくさんあります。1億円や2億円のバイアウトであれば、それだけを目標にしても達成できるかもしれませんが、それだと、システムの受託開発に近いイメージです。それを否定するつもりはありませんし、数億円でのバイアウトが目標であれば、会社の買い手を想定して、そのニーズに最適化していく方法でうまくいくと思います。ただ、「3桁億円」というような規模になると、社会的に大きなインパクトを与えることをゴールに設定しないと、バイアウトまですらたどり着けないと思います。

これからの挑戦

—【楯】家具・インテリアのシェアリングサービスを行うCLAS(クラス)という会社を立ち上げられました。 そのビジネスについてお聞かせください。そのサービスというのはCtoCなのでしょうか?

—【久保】最初のフェーズでは家具を自社で製造して、それをレンタルします。いま、ちょうどその家具を中国で作っているところなんですよ。実は、あり物を買わずにわざわざ自分たちで家具を作るのには理由がありまして……ちゃんとした木材を使って、しっかりと作ると家具というのはリペアができるからです。

きちんとした物を最初に作れば「レンタルして、メンテナンスして、またレンタルする」というサイクルが成り立ちます。安い物ではこうはいかず、例えばMDFという合板で作るとコストダウンできる一方、リペアにはほとんど対応できません。今売られている大半の家具はリペアのプロセスまで見越してデザインしていないので、キレイに使える年数が短いのです。でも、リペアを前提にきちんとした家具を作っておけば、利用者が変わるごとに新品同様になり、長く使えるエコなビジネスモデルが生み出せます。

また、次のステップとしては「家具の処分に困っている」という方向けのサービスを考えています。使っていない家具があるけれど捨てるのは忍びないとか、処分するのがめんどくさい、という経験は大半の方にあるはずです。引っ越しの時まで捨てられず、ギリギリになってあわてて便利屋さんに引き取ってもらう、みたいな経験があったりしませんか? そういう方の家具を弊社で買い取って、リペアをして海外に販売しようと思っています。また、貸し借りのシステムが整ってくれば、国内で借り手を探す「CtoC」型のサービスにもできるでしょう。

—【楯】それは、おもしろいですね。そういったビジネスを通じて目指す目標は何なのでしょうか?

—【久保】家具とインテリアのシェアリングエコノミーを作ることです。もちろん、現状でもインテリアの中古マーケットは有りますが、配送とリペアが課題となってなかなか二次流通がスムーズにいっていません。ですから、大半の人は家具は使わなくなったら捨てる物だと思っていて、ごく一部がたまにSNS経由でやりとりされている程度です。ですから「ホントは使える物に、新しい使い手がつかない」という状況を変えていきたいとおもっています。

東京に住んでいる人の持ち家比率は低く、2,3年で引っ越す人も少なくありません。昇進、転職、同棲、結婚、離婚など、ライフスタイルの変化に対して、一箇所に持ち家を建ててそこでずっと暮らすというのは難しい。家を買いたいという人は減っています。そこから考えると、家を借りているのに家具は買わなければいけないというのは、なんかちょっと違和感があります。2、3年で引っ越すたびに、家具を捨てたり買ったりする人たちのインテリアの使い方に即しつつ、サステナブルなモデルをつくることが弊社の目標です。

インテリア市場の構造を変える

—【楯】海外への展開はお考えですか?

はい、海外への展開は考えています。国内で一定期間レンタルすれば原価の回収は済みますので、その後は新たな借り手の方を探しても良いし、海外に持っていき販売することも可能です。近い所では、東南アジアを中心に若者がどんどん都市に出てきて働いて、家を借りて家具を手に入れたいと思っている人がたくさんいる国がいくつもあります。そういった国で暮らす人たちに良い家具を提供することで、その人たちの生活の質が良くなって私たちも損をしないビジネスモデルが創れると思います。

一番の目的は社会をよりよく変えることなので、それは日本に対しても別の国に対しても同じです。家具とインテリア市場の構造を変えることに真剣に取り組んで行きたいです。

ちょっと、宣伝というか告知になるのですが、いま、私たちの会社は仲間集めをしています。私自身、ウェブへの知見はありますが、手数を出し続ける人が必要です。会社のウェブサイトは既に公開していて、そこの採用情報を掲載しているので、興味がお有りの方は、ぜひ、そこからご連絡をいただければと思います。



“株式会社クラスでは、私たちのビジョン・バリューに共感し、一緒に働いてくれる仲間を募集しています”


【CLAS採用情報】https://clas.style/company



—【楯】最後に、キーパーソンになることを目指す人へのアドバイスをお願いします。

—【久保】「ギブ・アンド・テイク」という言葉がありますが、私は「ギブ・アンド・ギブ」の姿勢でいることが大切だと思っています。こちらが何を提供できるか、どう役に立てるかを考えて行動し人には期待しないという考え方です。私たちはどういう時に深く失望するかというと、期待した通りのアクションが返ってこなかったり、望んでいた見返りが得られなかった時だと思うんです。ですから、最初から期待をしなければ、こうした不満を感じることもありませんし、何か自分に良いことが返ってきたら余計に嬉しいじゃないですか。ですから「ギブ・アンド・ギブ」でいるほうが良いんです。

あとひとつは、脱力の大切さです。キーパーソンになろうという方は肩肘はってがむしゃらに頑張るということもあるかもしれませんが、私自身の経験として「いろんなことがうまく行くようになったのは、脱力を覚えてから」だと思っています。

仮に自分が得意だと思っていることがあっても、それは世界で何番目でしょうか? トップ1,000に入れる何かを持っていれば素晴らしくて、トップ10,000でもラッキーです。だいたいは、自分の能力なんて世の中のベスト何位かわからない程度のものでしかありません。だから、自分にも過剰に期待したり力んだりしないで、失敗しても落ち込まないようにしています。そうすると、自然とどうすればできるのか、どう工夫すればいいのか、という方に考えが向くようになります。

—【楯】本日はありがとうございました。

【久保】ありがとうございました。

Company
企業 株式会社クラス
所在 東京都目黒区
業種 シェアリングサービス
URL https://clas.style



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