FemTechでサポートする。女性が感じる生きづらさを、「わたしを愛でる」きっかけに。
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氏名 | 坂梨亜里咲 |
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肩書 | mederi株式会社 代表取締役社長 |
出生 | 1990年 |
略歴 | mederi株式会社、代表取締役社長。女性向けwebメディアのディレクター、COOを経て、代表取締役に就任。キャリアを重ねる中、プライベートでは不妊治療と向き合う。その経験からmederi株式会社を創業し、2020年3月より将来出産を希望する女性に寄り添うサービス「Ubu(ウブ)」をスタート。 |
「FemTech」をご存知だろうか?Female(女性)とTechnology(テクノロジー)をかけあわせた造語で、女性が抱える健康課題をテクノロジーで解決できるプロダクトやサービスのことを指す。そのカバー領域は広い。生理、セクシャルヘルス、妊活、不妊対策、更年期障害など、課題が起きうる年齢や改善目的が様々なのだ。
世界のFemTech市場規模は、2019年時点で8億2060万米ドルと推計 (引用:株式会社グローバルインフォメーションは、市場調査レポート「フェムテック (Femtech) の世界市場 – 分析と予測:2019-2030年」)。今後、経済的にも女性のQOL向上としても期待される市場だ。
今回は、FemTech 領域で創業し、2021年1月に前澤友作氏からの出資も決まり、より注目が集まるmederi株式会社の代表取締役社長、坂梨 亜里咲へインタビュー。創業に至るまでの経験、プロダクトを通じて実現していきたい社会像についてお話しを伺った。
※ 本インタビューは緊急事態宣言が発出される以前に、感染症対策を行なった上で実施しています。また、取材後2週間が経過した時点で、関係者に新型コロナウィルスに関する症状はありません。mederi株式会社を創業した原体験
—【聞き手:松嶋、以下:松嶋】『ザ・キーパーソン』は、ジャンルや年齢を問わず活躍されている方にインタビューし、時代のキーパーソンから学ぶことをコンセプトにしたメディアです。今日はmederi株式会社 代表取締役社長 坂梨さんに、創業に至った経緯や女性が抱える健康・キャリアの課題感など、広くお伺いしたいと思います。まずは、簡単に自己紹介をお願いできますか?
—【話し手:坂梨氏、以下:坂梨】mederi株式会社代表の坂梨と申します。31歳です。経歴としては、女性向け web メディアを立ち上げ、その会社の子会社社長を務めたのち、2020年にFemTech業界でmederi株式会社を創業しました。途中、メディアコンサルとしてフリーランスも経験しました。
—【松嶋】ありがとうございます。FemTech業界は日本ではまだまだ認知も低い分野かと思います。その分野で坂梨さんがmederiを創業されたのにはどんな経緯があったのでしょうか?
—【坂梨】飛び込んだのは、好奇心ですね。「FemTech」が海外では盛り上がっているのに、日本では浸透していない。誰もやっていないなら自分がやろうと思いました。
原体験としては、不妊治療を受けている自分を受け入れられなかった時期がありました。私の場合、不妊治療で毎週1日通院しなければなりません。病院にいる間、自分を可哀想だと思いたくなくて、待合室でずっと仕事をしていました。でも、そうしてしまっていることがつらかったんですよ。夫も仕事があるので1人で通院して、病院でキーボードを打ち続けて「超つらい」って思いました。でも、この状況をポジティブに変換しないと私の人生が悲しいまま終わっちゃう。どうやったらポジティブに変換できるか考えたら、この経験を発信して、情報を受け取った誰かが望んだタイミングで子供が産めたのなら、ポジティブになると思いました。
—【松嶋】ご自身の原体験で感じた問題の解決を、人を通してできるんじゃないかと思われたんですね。創業前は、ファッショナブルな世界にいたと思います。そこから方向転換した際、お気持ちの変化はあったのでしょうか?
—【坂梨】友人4人と立ち上げたメディアではトレンド情報を扱っていて、自分も常に最新の情報を取り入れるのが楽しかったです。しかし、不妊治療を始めたらひと月最低30万はかかるようになったんです。そうしたらお洋服やコスメにかけるお金があったら、自分の健康や産まれる子供のために備えたい意識が強くなりました。
独身向けと既婚かつママ向け、2つのメディアを運営していたんですけど、自分がどちらのターゲットでもないと感じて、結婚しても子どもを持つことに疑問を感じている方、なかなか授かれない方を対象にしたメディアとプロダクト開発を考えたんです。前職では承認に時間がかかりそうだったので、それなら自分で立ち上げようと思いました。
—【松嶋】価値観が変わられたんですね。
—【坂梨】そうですね。お金や時間をかけても買えないものがあるって初めて知りました。私の実体験として、努力で外見が変わる体験はありますが、私の場合の不妊治療は全然状況が変わらないし、むしろ悪い時もある。それまでは、可愛くなればなるほど、気分が上がったものでした。でも、私と夫の置かれている状況は、おしゃれとか可愛いとかそんなことを意識していられるほどの余裕がなくなっちゃったんですよね。
女性が自分の人生を、長く幸せで過ごすために重要なこと
—【松嶋】坂梨さんは、女性向けメディアの立ち上げからキャリアが始まりました。学生時代は、どんな意識や夢を持たれていましたか?
—【坂梨】女子大生時代は、アナウンサーになりたいと思っていました。私は小中高と歩みを得て、メディア等で目にすることができた女性のお仕事はアナウンサーで、私にとって働く女性の象徴でした。今はいろんな職業があるし、活躍する女性が見やすくなっているのですが、当時の私にとってはそうでした。
—【松嶋】ここまでお話しいただいた起業とアナウンサーはどちらも自立しているビジネスパーソンの印象が強いですが、ここは坂梨さんのご経験などと紐づいてる部分がありますでしょうか?
—【坂梨】母親の教育かもしれないですね。男性に頼りきっちゃダメだという教えを受けて育ってきたので、いつも自立していなきゃいけない意識がありました。そのための行動を考えていたら、女性が活躍しやすい職業や女性が輝ける職場を自然と探していた気がします。
起業するまでは、職業の選び方は自分ファーストでしたね。自分が輝ける場所とか自分が認められやすい場所に身を置きがちでした。今はそこを十分経験したので、ベクトルが逆になって、みんなのため・日本のために向いています。自分のために働くだけだと社会に貢献している感覚が低かったので、生涯働き続けられる自信はなかったですね。
—【松嶋】自立というキーワードは、可愛くなりたいということほど意識されてないように感じます。坂梨さんはどのように意識されてきたのでしょうか?
—【坂梨】私は昔も今も、年齢を意識した人生計画をしています。最近、年齢にとらわれない風潮もあると思いますが、自分にとっては年齢で物事を決めていく方がわかりやすいんです。 女性は選択肢が多いじゃないですか。子供を産む・産まない、子供を産んだら復職する・しないとか、男性よりも複雑なライフコースがあると思います。それに、いつ結婚しても良い時代になったからいつでもいいと思っちゃうと大間違いです。35歳から妊孕力は確実に低下して行くので、もし妊娠を望むのであれば、そこは意識しなきゃいけない。だからこそ意思決定を行うときは、年齢を意識した方がいいと思います。
女性はライフステージによってプライオリティがガラリと変わるので、フレキシブルな人生計画が必要です。その上で30歳までのキャリア形成が非常に大切だと思います。キャリア形成をして、自分の軸をつくる。そういうのをキャッチアップするのって20代後半だったりして、軌道修正に焦ったりもする。数パターンのライフプランニングをしたくても、経験と知識が必要で、教えてくれる人もなかなかいない。
私の人生、大学を卒業してから本当に慌ただしいです。仕事を頑張りながら、生涯を共にするパートナーを見つけたかと思えば、出産適齢期があることを知り、子どもが生まれない悩みも生じたりして。人生において大切な要素をマルチタスクでこなさないといけない。しかし、そういう女性ならではの慌ただしさは事前に予習することで改善できると思います。女性が自分らしく人生を歩み、納得感ある幸せを感じ続けるためには、知識が必要だと思います。
mederiを通じて解決したい課題
—【松嶋】mederi株式会社の社名には、どのような想いが込められているのでしょうか?
—【坂梨】私を「愛でる」でmederiです。子供を授かることや女性の健康にフォーカスした事業で、医療機関と連携して本当に良いものをユーザーさんに届けたいという想いから、medicalの「med」も入っているところがいいなぁと思いました。最初はmederuにしようかと思ったんですが、「愛でる」というネーミングのサービスや企業が既に存在していたので、差別化の観点や音読みした時のニュアンスからmederiになりました。
—【松嶋】自分を「愛でる」からというと、ここまでお話しいただいた坂梨さんの原体験からも非常にしっくりきますね。mederiの現在の事業内容についても教えていただけますか?
—【坂梨】「Ubu」は膣内フローラのチェックキットと、葉酸とラクトフェリンが含まれるサプリメントをお届けしています。1年間突っ走って思ったことは、すでに子供を欲しいと思っている明確層に届けたい知識は「Ubu」でリーチ可能なんですが、私が本当に届けたいと思っている潜在層にはリーチしきれないんです。意識が高く、勉強している女性もいらっしゃいますが、広く届けるにはなかなか「Ubu」というブランドだけでは難しい。そう考えて、新事業「mederi Pill」をスタートしました。多くの女性が不安や悩みを抱えているPMSや生理トラブルを解決するひとつの選択肢「ピル」を、産婦人科医による丁寧なオンライン診療によって処方・お届けするサービスです。
身体のケアだけじゃない。不妊治療の周辺にある課題
—【松嶋】不妊には、どのような原因があるのでしょうか?
—【坂梨】様々な要因が男性側、女性側それぞれに考えられるといわれています。もちろん原因が特定できないものもあるようですが、少なくとも検査することで一定の原因については確認することができます。
—【松嶋】欲しいと思ったときにすぐ対処しても効果がでにくく、良い状態に持っていくまでにも時間がかかる。しかし、社会は晩婚化が進んでもいます。女性だけでなく、男性側も時間をかけてもいい問題なのかもしれないですね。
—【坂梨】そうですよね。よく男性の問題でもあるから男性側のプロダクトを開発しないのかと聞かれます。しかし、私は原体験からまず女性に伝えるのが私の使命だと思っています。女性と男性には圧倒的な違いがあります。精子は再生産されるのに対して、卵子は生まれた時から保有する数が決まっていて、成長とともに減少する一方なんですね。しかも卵子は再生産ができない。その事実を知らない女性が多いので、まずはその啓蒙をして行きたいんです。また、女性は特に卵子と子宮っていう重要なポイントが2つあるので、伝えることも多いです。
—【松嶋】卵子や子宮に対してできるアプローチは、医療でしか解決しないのでしょうか?
—【坂梨】生殖医療に関しては、病院やクリニックで最先端の医療が受けられます。産婦人科に行くのが「怖い」「恥ずかしい」と感じる女性も多いみたいですね。私は自社のプロダクトを通じて、産婦人科に行くのが普通だし大切だということを伝えていけたらいいなと思っています。自宅でできることは限られるので、本当は病院に行った方が良いんです。けど、行かない人が多すぎるので、まずは自宅でできるチェックキットをご用意しました。ぜひ出来る事から少しづつやってみて、予防医学をスタンダードにしたいですね。
またクリニックの方も、もうちょっとDXできるところがあると思ってて。L I N Eで待ち時間が確認できるクリニックもありますが、ほんの一部です。ほとんどのクリニックが、まだまだアナログだったりします。不妊治療のクリニックで一番課題だと思ったのは、最低1時間病院で待たされること。なぜ待たされるかというと、その日の血液をクリニックで取って、検査の結果が出るのに時間がかかるからなんですよ。でも、それも病院にいく前に自宅で微量採血できる時代がくるんじゃないかと思っています。スマートクリニックのプロデュースもしたいなって思っています。
mederiが抱く今後のビジョン
—【松嶋】どうしたら、本当に必要としている人とプロダクトとの接点が縮まりそうですか?
—【坂梨】真摯にサービスやプロダクトを組み立て、ユーザーさんと向き合っていくことと、強力な人を巻き込むことだと考えています。そもそも私に影響力があったらもっと違うスピードで成長していたかもしれないと考えた1年でした。タイミングよく、前澤友作氏が設立した“前澤ファンド”からの出資が決まり、いろんな人に知ってもらえるきっかけとなり、すごく嬉しかったですね。
—【松嶋】インフルエンス力以外にもなにか考えられていることはありますか?
—【坂梨】教育です。日本には圧倒的に生殖医療・生殖能力における知識が足りていません。先日セミナーを開催した時に、医師への質問の中で、「卵子同士でも子どもができるか」という質問がありました。その質問を20代前半の女性が真顔で聞かれているのを見て、びっくりしちゃって。もしかしたら、そういった技術開発や研究が世界ではされているのかもしれませんが、一般的には精子と卵子で子供が生まれると義務教育の中で、学んでいることではあると思いますが、忘れてしまうんだと思います。
子供を持つことを望まれる方は、今後お金と時間を割かれます。性教育を手厚く、何度も教えてあげることが大切で、今後、事業会社の垣根を超えて一丸となって取り組んでいきたいと考えています。
—【松嶋】今後はプロダクトから啓蒙活動をして、直接的な効果も得られるようにしていくんですよね。
—【坂梨】プロダクトをお届けする際の同梱物だったり、ユーザーさんとのコミュニケーションツールで知識情報を伝えていきたいです。
mederi公式のLINEアカウントでもユーザーさんとコミュニケーションをしています。例えば「卵子は減ってく一方ですよ」と情報を配信して、「関係ない」と思う人もいるかもしれないけど、その一文を見て知っているのと知らないのとでは違うと思います。ひとりでも多くの人に、知っておきたい知識と真実を伝えられたらなって思います。
—【松嶋】ご自身の未来ももちろん重ね合わせて、今後、社会がどうなっているといいなってイメージされていますか?
—【坂梨】結婚する・しない、子供を産む・産まないは自由だと思っていて、どんな価値観も私は認めたいし、社会がそうあるべきと思っています。私は産みたい人が産みたいと思ったタイミングで産める社会にしたいんですよね。そしてそこに必要以上にお金をかけない社会にしたい。そのために、もっと早くから知っておけばよかったって後悔する人を1人でも多く減らしたいです。
—【松嶋】これからどんな人たちに興味持ってほしいとか、どういう人たちの力を借りたいとかありますか?
—【坂梨】引き続き、生理トラブルやPMSに悩む女性、妊娠を希望する女性に向けたサービスやプロダクトを誠実に提供することで、多くの女性が納得できる人生を歩むためのサポートをしていきたいです。女性の人生に点ではなく線で寄り添いたいので、更年期症状に悩む女性に向けたサービスも展開したいですし、性差関係なく毎日のQOLを上げるようなプロダクトを作りたい。頭の中には、やりたいことがいっぱいあるんです。しかしながら、まずは既存の事業をより良くするために精一杯尽力します。
企業 | mederi株式会社(mederi Inc.) |
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所在 | 東京都渋谷区渋谷2-10-15 |
URL | https://mederi.jp/ |
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