誰もが今すぐトレーニングを始めるべき根本理由をパーソナル・トレーナー大道匡彦が解説

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氏名 大道匡彦
肩書 株式会社D.D.D. 代表取締役 兼 フィットネス・コーチ
出生 1993年
東京大学卒業後、パーソナルトレーナーとして活動を開始。年間100名以上の女性の指導を行う。女性の下半身の悩みを解決するため、2020年10月に美脚専門パーソナルジムDesty(ディスティ)1号店をオープン

仕事の生産性を高め、アクティブな生活を維持するために心身のコンディションを整えることは必須です。なにも、ムキムキのマッチョになる必要はありませんし、アスリートのような肉体をつくることが必須ではありませんが、適切な運動や食事をもとに「ベターな自分の肉体」を維持することが高いQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を維持するベースであることは間違いありません。

そこで、今回はパーソナル・フィットネス・コーチ、そして起業家としてチャレンジをしている大道氏に、その経歴とともにトレーニングの基本となる考え方などを聞きました。


※ 本インタビューは緊急事態宣言が発出される以前に、感染症対策を行なった上で実施しています。なお、取材後2週間が経過した時点で関係者に新型コロナウィルスに関する症状はありませんでした。


いまフィットネス業界はどうなっている?

—【聞き手:楯雅平、以下:楯】本日はよろしくお願いいたします。さて、さっそくですが、今回のインタビューでは30〜40代のビジネスパーソン(男女)に向けてフィットネスビジネスやトレーニング基礎知識などをお話しいただければと思います。

【話し手:大道匡彦(敬称略)】わかりました。よろしくお願いします。

—【楯】大道さんが起業する領域として選ばれた「ジム」や「フィットネス」の業界について教えてください。どれくらいの市場規模で、どのような業態が存在するのでしょうか?

市場規模は、いまちょっとわからないのですが、企業で言うと年間売り上げが100億円を超えるところが10社前後あります。最近は、パーソナルトレーニングのカテゴリーが伸びていまして、TVコマーシャルをたくさん打っていたライザップさんなどが有名です。出店数も120店くらいあるはずなので、街中で目にすることもありますよね。ちなみに、2番手は100店舗くらいなのでこの領域はまだまだ伸びると思います。

興味深いのは、個人のトレーナーは数万人単位で存在していて、同時に大手から独立しやすい職種ではあるということです。業界の流れとしては大手の出店ラッシュが落ち着いて、独立する人も増えています。とはいえ「4ヶ月で20kg痩せる」という感じのコンセプトのジムは割と市場が飽和してきているかな、という印象もあります。そこで、うちのジムは女性限定・美脚専門というコンセプトを打ち出しています。そういう特化型のジムはあまりないので、興味を持っていただけることも増えてきていますね。

—【楯】グローバル、もしくは米国の市場などと日本を比べて、何か思うことはありますか?

フィットネス業界だけに限ったことではないと思いますが、海外はSNSでの情報発信のレベルが高いです。玉石混交でもありますが、情報量も多いし、ちゃんとやっている人はとてつもなく質の高い情報を高頻度で発信しています。それに対して、日本のトレーナーは、現場レベルだと情報発信がまだまだ弱いと思っていますし、そこは私自身が変えていきたいと思っているところでもあります。

トレーニングって、しなきゃダメですか?

—【楯】基礎的なところからで恐縮ですが、まず、ビジネス・パーソンがトレーニングをするメリットをわかりやすく教えてください。「スポーツをプレイしないから筋トレは関係ない」と思いがちな方も少なくないと思いますが……?

そうですね、メリットはいろいろありますよ(笑)。まず、体を動かさないことで出てくる弊害をなくせます。具体的には四十肩や五十肩、猫背、腰痛の一部などの予防になります。これは厳然たる事実ですが、体は動かさないと必ず衰えます。それを止める方法はたったひとつ、運動しかありません。加齢による衰えは避けようがありませんが、それを遅らせるためには運動が有効です。

—【楯】なるほど。それを聞くともっと運動しなければと思えてきました(笑)。さて、トレーニングとひと口に言ってもそのジャンルやメソッドはいろいろとあると思いますが、わかりやすく整理するとどうなるのでしょう?

本当にいろいろなカテゴリーがあるので難しいですが、試合に勝つという目的やリハビリなどを除けば、トレーニングの目的はダイエットになることが多いでしょう。ダイエット、つまりウェイトロスを目的とする場合、運動の目的は2パターンで、1つ目は体組成の改善です。これにはウェイトトレーニングが該当し、いわゆる筋肉をつけて代謝をアップする、太りにくい体質になるということです。二つ目はカロリーを消費させることで、これにはエアロビクス、有酸素運動が該当します。

トレーニングのゴールとKPIの設定

—【楯】ボディメイク、トレーニングの目的となる「良い体、鍛えられた身体」を大道さんはどう定義されますか?

私の場合は美脚専門のフィットネス・コーチなので、その観点でお答えすると、まっすぐでひきしまった状態が良い体、脚です。そして、もちろん痛みなどの不調がないことも重要です。あとは主観もとても大切で“自分で自分の体を良いと信じられるか”という基準も忘れてはいけませんね。

—【楯】30〜40代のビジネスパーソンを想定した場合、働き盛りで時間がなかったり(コロナ以前のことですが)、会食や飲み会で食生活が乱れたり、という方も少なくないでしょう。そういった中で「実際、トレーニングに時間が取れない」と思う人も多いはずです。そういった人に向けて「自宅でできる最低限の量・時間トレーニング」を紹介してください。

YouTubeの無料コンテンツがおすすめです。1回5分のストレッチとかセルフ・マッサージから始めるといいですよ。いきなり重いウェイトをあげられなくても大丈夫です。そうして、1日5分でも良いので毎日やる、体を動かす、という習慣化することが大事なんです。自分で自分をコントロールしやすい目標設定をするようにしましょう。

—【楯】そもそものゴール設定、目的設定はどうすればよいのでしょう? トレーニングにおけるカギとなる数値、指標の選択などにコツはありますか?

極論すれば、なんでもいいですよ。ウエスト・サイズでも体重でも問題ありません。どの数字を追うかということも大事ですが、まずは数字なんてどれでもよくて、ゴールを決めてそこに近づいているかを確認できればOKです。それで、毎週でも、1ヶ月ごとでもいいので、自分の体が良い方向に変わっているということがわかれば、それで良いのです。

—【楯】トレーニングをする時間帯におすすめはありますか?

人間には朝方と夜型、あるいはその中間とか、いろいろなタイプの人がいるようです。なので、トレーニングをするのは朝でも夜でもどちらでも構いません。より重要なのは「トレーニングする時間」を固定することです。「このエクササイズをしてから寝るとか」「朝起きたら必ずこの運動をやる」という習慣化ですね。ダメなのは「やる気があるときにやる」というパターンで、これは運動が続かない原因の一つです。継続していければ、時間はいつでも良いですが、スケジュールにはめることが大事です。ちなみに、アスリート並みのハードな筋トレの場合は夜遅くにやりすぎると睡眠の効率を下げたり、朝早すぎると全力が出せなかったりする、という問題がありますが、運動を始めたばかりであれば気にしなくて良いでしょう。

コーチ大道が生まれるまで

—【楯】さて、ここでフィットネスに関する質問は一休みして、大道さんの生い立ちや経歴について簡単に教えてください。

生まれは福岡県ですが、父親が転勤族だったのでたくさん引っ越しをした記憶があります。私が幼稚園に入る直前に1度引っ越し、小学校生のころに2回転校して、横浜に落ち着きました。小学校の時に塾に入って、中学受験をして、中高一貫の男子校に入りたくさん勉強をしていました。大学は東京大学で、農学部で化学系の研究をしていました。木材を紙にする過程でパルプをナノファイバーにして新しい用途を探すという内容です。

理系で、同級生の9割は大学院に行くという環境だったので、私もなんとなく就職活動をしないまま過ごしていて……いざ就活をしようと思ったら、もう募集期間が終わっていた、という状況でした。それで、1年休学や留年をしようと思ったんですが、親から「だめだよ」と言われました。そんな状況だったので、不安過ぎて卒業式には出席できませんでしたね(苦笑)。

大学を出てしまったら働かなければならないので、学生時代から興味のあったトレーニング関係の仕事をしようと思い、フィットネスクラブのアルバイトをしました。入りたてのころは現実の厳しさを痛感しましたね。当時の自分には変にプライドが高かったり、頭でっかちだったりしたところがあって、仕事できない自分から目をそむけていたということがありました。例えば、はじめのころは本当に接客は苦手でした。でも、それをアルバイトを通して克服できたと思います。ここでのアルバイトは1年で辞め、その後は私の師匠が立ち上げたジムでトレーナーのアシスタントを3年経験して、2020年の10月に念願の自分のジムをオープンしました。

トレーニングはどこから、どうやって始めればいい?

—【楯】では、また、フィットネス、コンディションニングについての質問にもどります。言うまでもなくコンディショニングやダイエットには運動に加えて食事も重要です。とはいえ、これに関しても巷にはメソッドが溢れていて、結局なにをすればよいの? と悩む状況です。何か、食事について本質的なアドバイスはありますか?

食事にはコントロールできる部分と、コントロールが難しい部分があります。なので、変えられるところをよくするのが基本です。いきなり「毎食スーパーフードにして加工食品をゼロにする」とかはハードルが高過ぎます。なので、最初は成分表をみる習慣をつくるだけで十分です。「これはタンパク質がしっかり入っている食べ物だな」とか「これは脂質が多すぎるからやめておこう」という見かたができれば、スタートの一歩としては上出来です。

あと、もうひとつ。とても基礎的なことですが“食事中は食べることに集中する」というのが大切です。テレビやスマホを見ながらの食事はすぐにやめてください。食べ過ぎて太らないためには、適切な食事の量で満足できるようになる必要があります。そのためには食べるものと向き合わなければなりません。これなら誰でもできると思いますから、ぜひ、やってくださいね。

—【楯】食べものと向き合うのが第一歩というのは興味深いですね。他にもボディメイク、トレーニングに関して「これはゼッタイやめたほうがいい」ということを教えてください。

ダイエットでもトレーニングでも、ネガティブ思考に陥ったり言い訳をしたりしてはだめです。「私って、これだからダメ」「俺は意思が弱いからなぁ」といったようなフレーズは言わないでください。トレーニングはやれば、やるだけ前に進みます。成果の大小はあれど、成果がゼロということはありません。だから、マイナスの側面ばかり気にしたり、アドバイスを聞けなくなるとまずいですね。やればいいんです。あなた自身が、あなたの体を動かさないと何も始まりません。これはどんなトレーナーについても、どんなメソッドでも同じです。

—【楯】個人トレーニングに役立つアイテムがあれば教えてください。

ビギナーの場合、トレーニング器具よりケアグッズから始めるといいですね。筋肉のはりをほぐす「マッサージ・ガン」という製品は狙った筋肉に刺激を与えられるのでおすすめです。リカバリーにも役立ちますし、ピンポイントで筋肉をほぐすことで、自分の筋肉を細かく意識できるようになるのでトレーニングの効率アップにつながります。

—【楯】そこからステップアップして「もっとトレーニングをしたい」という場合、パーソナルトレーニングのコーチングを受けると、どのようなメリットがありますか? 一般的なジムの会員になるのと比べて、どこが優れているのでしょうか?

自分にあわせたトレーニングをオーダーメイドでやってもらえるのがパーソナルトレーニングです。もし、パーソナル・トレーニングのコーチが一般的なマニュアルを流してやるだけであれば、それは形だけであまり意味がありません。オーダーメイドのスーツと同じで、あなたの体や目的にあわせてメニューをつくるというのが本来のパーソナル・トレーニングなのです。あとは、自分で気づけないクセに気づいて適切なアドバイスができるトレーナーなら、なお優秀です。ただ、横でダンベルをもちあげる回数を数えてくれるだけのトレーナーなら要りません(笑)。

—【楯】「パーソナルトレーナーに指導を頼む」ということは、初めての人にとってはハードルが高く感じられます。実際はどうなのでしょう?トレーナーからの目線で「ここまでは準備しておいてほしい」ということがあれば知りたいです。逆に「これは全部おまかせで大丈夫です」ということがあれば教えてください。

全部お任せで大丈夫です。散髪とか、歯の矯正と同じ感覚できて欲しいですね。通う前は何もしなくていいです。素直さだけを持ってきてください(笑)。

—【楯】私たち「ザ・キーパーソン」は「社会や会社にポジティブなインパクトを与える」キーパーソンを目指す人の活躍を後押しするメディアです。そのような人々に向けたアドバイスやメッセージがあればお願いします。

トレーナーという職業柄、人の体に向き合うことが多いので、そこから学んだことをひとつお伝えします。人間、自分の体はたったひとつしかありません。また、骨格などの生まれ持った特徴は変えられません。だから、自分の体と向き合って、気づいて、大事にしてあげる。それをすれば絶対に日常生活が豊かにになります。朝起きて体が軽いとか、気分がすっきりすることにもつながります。なので、メンテナンスという意味も含めて体を動かしてあげるということがあらゆる成功の基礎になり、前向きに行動することにつながりますよ。

—【楯】本日は大変役に立つお話しをしていただき、ありがとうございました。

ありがとうございました。読んでいただいた方のお役に立てればうれしいです。



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